習慣を作るには「負の感情」に注目せよ――予防医学研究者・石川善樹さん<後編>(3/4 ページ)
話を聞いてみたいあの人に、生活習慣や健康のコツを聞く本連載。前回に引き続き、予防医学研究者の石川善樹さんにインタビューしました。
料理の世界にはイノベーションの余地がごまんとある
――お酒は飲まれますか?
好きですが、あまり飲みません。飲むよりも、勉強したいって欲望が強いんです(笑)。私は自分の感情と自覚的に向き合う習性があって、意思決定の際、30年後の(64歳になった)自分に問いかけさせるんです。「お前は今夜飲み会に行くべきなのか? それとも研究にまい進すべきなのか?」って具合に。で、たいてい研究をとってしまいますね。
――料理を最近始められたと聞きましたが、どんな料理を?
子供が生まれてから、積極的に作るようになりましたね。研究者なので理屈から入るクセがあるんですが、いまハマっているのはレシピサイトのデータ分析。どんな食材の組み合わせをしたら、おいしい料理ができるのかを解析しているところです。料理って、無数に存在する素材と調味料の組み合わせでできていますが、調べたところ、世界中のたいていの料理で使われている材料は10種類前後に落ち着くんです。
(スマホの画面を見せつつ)世界中の料理を1枚のマップに落とし込もうとしている最中でして、「新しい和食を作る人工知能」を作成中です。どの食材とどの食材がマッチしやすいかの可能性をつなぎ合わせています。料理センスがある人は、「何と何を混ぜればうまい」が感覚的に分かるのでしょうけど、素人の私は分からないので、こうして研究しているんです。
――近い将来、全く新しい料理が生まれるかも?
現実的に目指していますよ。例えば、ペペロンチーノにパルメザンチーズを掛けて食べるとおいしい、というよく知られた組み合わせがあるのですが、パルメザンチーズの風味化合物を調べたら、「茶葉」と似ていることを突き止めたんです。だから理論上は、ペペロンチーノに茶葉をかけてもおいしいはず。
――パスタに茶葉を振りかけるってそんなムチャな……。
それが……調べてみたら既に存在したんです! 茶葉入りのペペロンチーノを考えついた人、すげーなって思いました(笑)。これまでに料理の世界ではそれほどイノベーションが起きていなくて、ポテンシャルをまだまだ秘めた世界なんです。世界中の食材が流通するようになったのってここ数十年の話でしょう? 食材の組み合わせはほぼ無限にあるので、研究しがいがあるジャンルなんですよ。僕は非常にめんどうくさい人間で、なんでも知ってしまわないと気がすまない性格なんです(笑)。
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