カプセルトイ「ガチャ」開発の秘密を聞いてきた!(※ボツネタ含む):「ガチャ」はこうして作られる(2/3 ページ)
ユージンの時代から数えると、なんとカプセルトイを開発して25年というタカラトミーアーツ。その開発の手法をうかがいつつ、ボツネタや発売中止となってしまったネタまで公開してもらいました!
「ガチャ」ができるまで
―― なるほど。キャラクター製品だけでなく、オリジナル製品でロングセラーシリーズを持っているというのは強いですよね。ところで、普段見られないボツ企画も見せていただけると聞いて楽しみにしてきたのですが。
羽場氏 ちゃんと用意していますよ! ただ、ボツ企画をお目にかける前に、「ガチャ」の企画がどのように製品になるのか、というのを説明したほうが分かりやすいと思います。ボツにもいろいろありますので。
まず最初に、各担当者がテレビ、雑誌、Web媒体、スマートフォンのアプリ、もうあらゆるものにアンテナを張り巡らして企画を考えます。ちなみに私は、新婚旅行中に企画を思いついたことがあります。
そして、各担当者が考えた企画は月1回、2日間かけて行われる、「企画会議」に提出されます。参加するのは、企画開発者と営業担当者がメインなのですが、企画が出したものに営業がダメ出しをするようなことは少なくて、「もっとおもしろくするにはどうするんだ?」という議論がかわされることが多いですね。「これはストラップじゃなくて、フィギュアのほうがウケルだろう」とか。
羽場氏 そこで「おもしろい」「イケル!」となった企画が「商品決定会議」にかけられます。これは「企画会議」よりも、もっとシビアに、実際にかかるコストや採算の取れる受注数量があるのかなどが考慮され、本当に製品化するかどうかが決定されます。「商品決定会議」で製品化が決定すると、そこで製品化がスタートするわけです。
製品化がスタートすると、フィギュア製品であれば、型を作るための原型制作に入ります。だいたい1つの企画が製品になるまで、半年ぐらいかかりますので、常時、担当者1人当たり、10から18ぐらいの企画が同時進行していることになります。
この原型が仕上がったときというのが、かなりテンションが上がる瞬間です。まだ彩色はされていないのですが、今まで二次元のイラストだった自分の好きなキャラクターが立体化するというのは、何度、経験しても嬉しいものなんですね。
羽場氏 それで原型をチェックして、版権元がある場合にはそれをチェックに出します。海外の映画関係などが大変なのですが、画像でよければ画像を送り、実物が見たいということであればサンプルを送ります。
原型のチェックが終わってOKだということになって、サンプルや製品ポップなどを作成し、「ガチャ インフォメーション」、我々は「受注書」と呼んでいますが、最後のページが注文書になっている問屋さん向けの冊子ですね、その図案の用意をします。
実は原型制作と同じぐらい、「受注書」の図案制作も大事なんです。どんなによい製品でも、受注書でよく見えないと発注が来ないわけですから。それでまた、普通の玩具広告と違って「受注書」は一般のお客様が見るのではなく、ご年配の方もいらっしゃる問屋のご担当者向けなので、字を大きく分かりやすくしたり、売れているシリーズの第何弾であるとか、過去の売上げはこれだけあったとか、「おもしろさのアピール」だけでなく「データで攻める」という独特な作り方をしています。
ボツ企画になる理由
―― ありがとうございました。「ガチャ」制作の裏側がよく分かりました。タカラトミーアーツの皆さんは、ノリのよい方ばかりという印象だったのですが、決してノリだけで仕事しているわけでないんですね(笑)。
羽場氏 ノリがよいのは認めますが、ノリだけでないのが分かってもらえてよかったです(笑)。それでは、制作過程を理解していただいたところで、ボツ企画を紹介します。まずは、もうこれは明らかにボツだろうと、自分でもそう思ってやっていたという「ゾンビ」シリーズですね。
―― あれ、これは通常の企画書という感じではないですね?
羽場氏 この企画は「絶対通らないだろうな」と確信があったんですが、夜中に作業していたら異様に楽しくなってここまで仕上げてしまいました。これは「ガチャ」の機械に入れるPOP(ポップ)なのですが、本来、POP案を作るのは製品化が決まった後です。
東氏 えっ!? ずいぶん熱心だったし、POPも「よくできているな」と思って見ていたので、「ダメだ」と思ってやっていたとは思いませんでしたよ(笑)。
羽場氏 そこはほら、ウチはとりあえず、いろんな企画、数を出してナンボというところがあるじゃない。何作も何作も続いているシリーズもののロボットアニメとか、マンガ原作の某人気アニメとか、ロングセラー絵本原作のアニメキャラみたいな、強力な定番版権もののシリーズがいっぱいあるわけじゃないから(笑)。
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