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最大限の“痛さ”で札幌の新名物に 長栄交通の「痛タク」がつくるフリー経済すごいぜ痛タクシー(3/3 ページ)

エヴァやバイオハザードとのコラボでも注目を浴びた長栄交通の痛タク。広告料や版権などのお金のやり取りをせずに実施することで最大限の“痛さ”を実現している。

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 その頃、もう1つ、頑張ってもなかなか振り向いてもらえない企画と出会った。

 「洞爺湖でアニメーションフェスティバルをしようという取り組みが、有志の手であったのです。しかし、同じく手作りの試みで、なかなか認知が広がらなかった。そうこうしているうちに、では『痛車』ならぬ『痛タク』を作って応援するよ、というアイデアになったのです」

 そこで昨春、竹内さんの自腹で始めたのが、第1号となる洞爺湖マンガ・アニメフェスタのラッピングタクシーだった。この「痛タク」、昨年のアニメフェスタの代表的な痛車として、会場を大いに沸かせ、道内のメディアなどでも注目を集めた。それ以来、広告ラッピングではない、痛車としてのタクシーを貫いている。

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昨年の「洞爺湖マンガ・アニメフェスタ」での「痛タク」デビューの模様

 今年で4年目を迎える、洞爺湖マンガ・アニメフェスタ。6月22日・23日に開催される今回は、痛車のギャザリングが目玉イベントになっている。参加希望の痛車の数が多く、募集開始早々エントリー制限をしないといけない程の大盛況になっている。

 竹内さんの思いきりで始めた「痛タク」はデカールの印刷こそ職人さんに外注するが、それ以外のデザインや貼りなどは竹内さん1人で担当している。「自分の責任でしていることだから」とデザイン案を片手に楽しそうに語る。

 「痛タク」にしたいコンテンツを求めて、竹内さんは札幌にこだわらず、全国でチャンスをうかがっている。バイオハザードのタクシーは、その努力の甲斐によるもの。広告ラッピングではないので、タクシー全体を世界観で包むことが出来る。東京や大阪ではなくて、札幌であったとしても、うちにしか出来なことだからと、たくさんのデカール案を携えて、交渉を重ね実現した。


「バイオハザード6」の発売にあわせて走行したラッピングタクシー

 しかし、その思い入れが通じないこともあるという。エヴァンゲリオン展のラッピングタクシーでは、竹内さんの趣味も高じて、大胆にキャラクターで包んだり、第三新東京都市の世界観をイメージしたデザインなどを提案したが、同コンテンツの制作側から「それはやり過ぎだ」と、何度も改変を求められた上で落ち着いたデザインであったとのこと。「くやしかった」と無念さをこの場でものぞかせていた。

「コンテンツ」と「IT」、「観光」を結んで札幌を盛り上げる


竹内さん

 竹内さんは、「痛タク」にこれからのタクシーへの希望を寄せている。

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 「痛タク」が札幌の街に浸透するにつれて「リトルベリーズ」の例のように、様々なところから声がかかるようになり、話を聞いてくれるところも増えた。同じ乗るなら楽しそうなタクシー会社を――と、若い乗務員希望者が来るようにもなってきた。

 「痛タクが、北海道名物になってもいいと思うんですよ。外国からのお客さんが、痛タクを見ると必ずと言っていいくらい、喜んで写真を撮ってくれる。外国の方々にとって、コンテンツの有名無名は関係ないのです。楽しい車だと。もっともっと、様々な種類の痛タクを走らせたいです」

 今回、筆者に竹内さんを引き合わせてくれたのは、札幌市役所の観光課で新たなコンテンツ発掘と振興に取り組んでいる北川憲司課長。北川さんは、札幌市の観光サイトで、新たに「痛タク」やクリプトン社の活動、日本有数の同人系プロダクションである「IOSYS」などを目玉にした「札幌のサブカルチャーの楽しみ方」のページを開設した。

 タクシーをフリーなメディアにすることで、新しいビジネスチャンスを広げた「痛タク」。近年独自の盛り上がりを、スマホ分野と初音ミクを中心にみせる札幌のコンテンツ・コミュニティーとともに、新たな都市の魅力をも生み出している。

著者紹介

岡田智博(@OKADATOMOHIRO)は、新しいクリエイティブを社会やビジネス、地域に生かすためのプロデューサーであり、メディアアートとデザインのキュレーター。一方で、ネットやクリエイティブから生まれる世界中の新たな動きを現場から硬軟あわせて紹介する記事を様々なメディアや政府等のリポートにあげている。自身が代表を務めるクリエイティブクラスターほか全国各地の機関やNPOの理事等を兼務、様々な人が新しく始められる「こと」づくりに跳び回っている。

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