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「辛くない時期はなかった」 月間1億2000万PVで得たもの/失ったもの 清水鉄平「はちま起稿」に狂わされた人生(3/3 ページ)

月間1億2000万ページビューを稼ぐ怪物サイト「はちま起稿」。その元管理人・清水鉄平とはどういう人物なのか。書籍発売を記念して、清水氏にインタビューを行った。

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自分で記事書かずとも「今のはちま一番好き」

 しばしば指摘される「自分で記事を書かず、他人のふんどしで相撲を取っている」という批判についても答えた。

「これはよく言われます。自分としては情報があふれている今の時代、読者の趣味嗜好に合わせたキュレーションは多くの人から求められていると思っています」

 開設当初のはちま起稿は、清水氏自身が、自分の文章で自分の考えを発信していく普通のブログだった。本の中でも「昔から自分の考えを発信したいという欲求が強いタイプ」「(はちま起稿は)日記の代わりに自分の考えを発信する基地だった」(24~25ページ)と当時を振り返っている。

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 現在のはちま起稿に清水氏の文章が載るスペースはほとんどないが、これも「より読まれる」形を模索していった結果だという。では、今は「自分の考えを発信する」欲求はなくなってしまったのだろうか。


いつの「はちま起稿」が一番好き? と聞くと、迷わず「今じゃないですか」

「まだ僕は記事を書けると思っているけど、ただ、書けば書くほど言葉尻を捕まれて叩かれるし、記事を書くことに対する情熱は炎上でそがれてしまった」

 だが、それでもはちま起稿のポリシーとして、記事の最後に「管理人のコメントを入れる」ことはやめなかった。まとめサイトにとって「管理人の主張が見える」ことはデメリットも大きいが(だから“やる夫”にコメントを代弁させているサイトが多い)、これだけはこだわりとして貫き続けた。

 いつのはちま起稿が一番好きか聞くと、迷わずこう答えた。

「今じゃないですか。以前は僕1人だったので情報も偏っていましたが、記者も増えて扱う情報も増えて多くの人に楽しんでもらえると思うので。アクセスも増えてますし」

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1億2000万PVでも「満たされたない」矛盾

 インタビューはここまでで、ここから先は筆者の個人的な感想として読んでほしい。「はちま起稿」なんて見るのもイヤで、いい機会だから徹底的に叩いて叩いて叩きつぶすべきだ! ――という人にとってはすっきりしないインタビューだったかもしれない。「なんでねとらぼは著作権侵害で訴えないんだ」という声があるのも重々承知している(一応、明らかに引用の範囲を超えていると判断した場合など、随時削除要請はしている)。

 ただ、昨今乱立する「明らかにカネ目的でやっているまとめサイト」に比べれば、純粋に「多くの人に読んでもらいたい」というモチベーションから出発しているはちま起稿はまだいい方だ。


思っていたよりずっと「天然な人」だった清水氏。インタビュー中、本の印税の使い道に話が及ぶと「聞いてくださいよ!」と急に乗り気に。どこかに寄付でもするのかと思って聞くと、得意満面で「実家の軽自動車がぶっ壊れそうなのでそれに充てたい」と答え、その場にいた全員から突っ込まれていた

 何より、自分の身に置き換えて考えてみてほしい。右肩上がりで成長を続けるPVと、「読者が自分のサイトを読んでくれている」という巨大な充足感に、一体どれだけの人があらがえるだろう。まとめサイトという構造や、それを求めてしまう読者の側にも問題はある。現在のはちま起稿には「望んでそうなった」側面と「望まずしてそうなった」側面が混在している。

 「今のはちま起稿が一番いい」と清水氏は言う。同時に「辛くない時期はなかった」「自分は幸せになってはいけない」とも言う。1億2000万PVを突破した今でも「満たされたと思ったことはない」とうつむいてしまう。この矛盾は一体どこから来ているのだろう。

 高校2年の1学期。新しいクラスになじめず、友だちとの付き合いや受験勉強から逃げるように立ち上げた「鉢巻起稿\(^o^)/」(はちま起稿の前身になったブログ)が、その後の人生を大きく変えた。7年後、サイトは信じられないほど大きくなったが、代わりに大学進学という道を捨て、その後の炎上によって父子の関係は崩壊状態に陥った。本名はおろか顔写真や学生時代の卒業アルバム、実家の住所までさらされ、ネットの世界では「悪者」のレッテルを貼られた。

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 それを選択したのはもちろん清水氏だが、齢わずか23のこの若者が、すべて承知でこの道を選んだということはあり得ないだろう。まとめサイトの構造、読者の声、ネットの空気、PV、巨大な承認欲求……。いくつもの巨大なうねりに流され、気付かないうちに自分でも想像していなかったところまで来てしまっていた――そんな風に見えた。

 本の帯にはこう書かれている。「ブログに人生を狂わされた男!」

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