インタビュー

アニメーション監督・新海誠が語る――映像を文字にするということ『小説 言の葉の庭』発売記念(4/5 ページ)

4月11日、映画「言の葉の庭」を新海監督自らノベライズした『小説 言の葉の庭』が発売。映画と小説という異なる媒体で作品を作るとはどういうことか、新海誠監督にインタビューを敢行した。

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映画があったから生まれた、小説のラストシーン

―― 映画を作られていた時に、どれくらい小説のストーリーを考えられていたのでしょうか。

新海 いやー、もう全然考えてなかったです(笑)。それこそ相澤さんの、前は雪野のことが好きだったんじゃないかなぐらいで、お兄さんの話も別に考えていなかったし、お母さんも離婚のときは何かいろいろあったんだろうなぐらいしか考えていなかったです。ただ、小説を書かなきゃいけないとなった時点で、一晩か二晩ぐらいで、ばーっとそれぞれの登場人物についての話を考えついた記憶があります。

 当初は劇場公開ぐらいのタイミングでダ・ヴィンチの連載が開始できればというお話を関口さん(ダ・ヴィンチ編集長)としていたんですけれども、各地への舞台挨拶などでどうしても時間が確保できなくて、連載開始を少し遅らせていただいたんです。でもそのおかげで映画を見てくれたお客さんの声も聞けましたし、映画を自分でも見返しているうちにいろいろな設定が浮かびましたから、きっと遅れたのは必要なことだったんだと思います(笑)。

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―― 小説では、10話とエピローグを書き下ろしで追加しましたが、10話を孝雄の母親の視点にしたのはどういった意図だったんでしょうか。

新海 年長者の視点をとにかく入れたいと思ったんです。登場人物の中で最年少が孝雄ですが、孝雄の中学時代や、雪野の中学時代辺りから語っているので、結構下の年代の登場人物が出てくるんです。でも上の年齢を考えたら、せいぜい伊藤先生ぐらいになる。

 伊藤先生は30代前半くらいなんですが、それでも自分よりはずいぶん年下なわけですよね。どこがでまだ書き手である自分自身よりも、上の年齢の人にその物語を総括してほしいみたいな気持ちがあったんです。お母さんであれば、劇中でちょうど50歳になるので、その役にふさわしいかなと思って、最後お母さんに登場してもらうことにしました。


孝雄の母・怜美と兄・翔太 (c)Makoto Shinkai / CoMix Wave Films

 先ほど少し“相対化”ということをお話しましたが、同じ人でも年齢が上がっていくと、自分の中の出来事って相対化して、別の視点で見ることができるようになっていくと思うんです。そういう役割もお母さんに担ってほしかったんだと思います。

―― 小説ではエピローグという形で映画よりも先の話が書かれていますね。

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新海 映画の言の葉の庭と小説の『言の葉の庭』は見終わったあと、読み終わったあとの感触はわりと違う部分があると思うんです。ただ別の作品かといわれると僕は“同じ作品の別の表現”だと思うんですよね。

 すごく細かく見ていくと、映画と小説の出来事やセリフが微妙に違っていたり、計算していくと時期もちょっと違うようなところが出てきますが、どちらも同じ物語を別の描き方をしているだけで、小説と映画が違うものだという感覚はないです。

 でも、映画はその意味で小説より手前で終わっているからと、未完成みたいな感覚はあるか、というとそんなことはないですね。映画はあそこで終わるのが一番美しい形だったと思います。

 仮に映画がなくて、まず小説から書き始めたのだとしたら、映画と同じ所で終わらせたと思います。映画を踏まえた上での小説だったので、もう少し先まで書こうかなという気持ちになったんじゃないかと。

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