若者に広がる“リア充”動画アプリ「MixChannel」はなぜ成功したのか(3/4 ページ)
なんですかこのリア充空間は……!
「日本人にVineは向いてないと思った」
開発者の福山さんは、学生時代にはDeNAやグリーでインターンをして、大学院修了後には新卒でGoogle日本法人に入社した経歴を持つ人物だ。Donutsに参画した経緯は、Googleをやめて開発した、ランチ時間を使って社会人同士が会えるサービス「ソーシャルランチ」を売却したことからだったという。
「過去に開発したソーシャルランチが社会人同士のマッチングサービスだったので、僕自身がいわゆる“意識高い系”なんじゃないかと思われることもあるのですが、全然そんな崇高な人間ではないんですね。ただ、コミュニティや人間が好きなんですよ(笑)。ソーシャルランチの場合も、都心で働く人を観察しながら作りました」(福山さん)
そんなふうに「コミュニティ好き」を自称する福山さんは、日本にVineスタイルの動画サービスを持ち込もうとしたとき、「これでは、日本人のコミュニティが使うものにはならない」と考えた。
「Vineって、基本は一発撮りで、コミュニティ的にもTwitterと同じく仲の良い友人や好きなユーザーの動画を見るという設計なんですね。日本人向けにVine的な設計の動画サービスを作ったとしても、そもそも動画投稿の敷居の高さなどがあるので、ゼロからユーザーを増やしてコミュニティとして成立させることは非常に難しいだろうなと感じていました。だから、日本人に合うような、まったく違う方向性を目指しました」(福山さん)
そこで福山さんは、即興で動画を撮影させるよりは、画像をインポートさせる方向でユーザーを支援した。最近の若い子は、暇な時間によく画像加工をしている。アプリの中に編集機能を入れて、そういう画像をインポートしてスライドショーを作れるようにしたのだ。
すると、今度はユーザーたちが意外な行動をとりはじめたのである。なんと、画像をセル画のように使って、パラパラ漫画を作り始めたのだ。さらには高速でスライドショーを切り替えてアニメーション動画を投稿するような人まで登場してきたのだ。
「正直なところ、写真を一枚一枚見せて、最後にフェードアウトしていくような普通のスライドショーを考えていたので、これは想定外でした(笑)。最近では、何百枚もの画像を使って、アニメを作る高校生もいますね」(福山さん)
さらに、Vineのようにフォローしてタイムラインを作っていくソーシャルな設計は取り入れるのをやめた。その代わりに、トップにランキングを置いて、人気動画を徹底的に目立たせる仕組みにした。この割り切りは、明らかに現在のにぎわいをつくりだす要因になっている。
実際、サービス開始当初に存在していたVine風の動画サービスは、米国のVineと同じようなコミュニティづくりを目指した結果、そのどれもが低迷を続けている。
「MixChannelにめちゃくちゃハマっている層って、地方の子たちが比較的多いんです。都市部の女子高生って、ファッション誌だって何誌も読んでいて、とても多様な価値観のカルチャーを持っている印象です。そういう子たちは、VineやInstagramなどで好きなアーティストモデルや、わりとおしゃれな友達の投稿なんかを楽しめるのかもしれない。でも、地方の子たちはまだそこまで多様化してない印象があります」(福山さん)
実際、広報資料を見ると、ユーザーが都市部に偏っておらず、まんべんなくさまざまな地方に散らばっているのが分かる。
「だから、MixChannelはランキングを大事にしたんです。ここは、実はまるでテレビのように単方向で激しくプッシュしてくる文化です。でも、だからこそ、そういう日本的なマスの世界にいる地方の子たちも楽しめるんですよ」(福山さん)
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.