村上春樹の図書貸出記録を報道した問題 神戸新聞「公益性がある」 日本図書館協会「プライバシー侵害」
村上さんの高校時代の図書カードを報じた神戸新聞に、ネットから疑問の声が。
神戸新聞社が小説家・村上春樹さんの高校時代の図書貸出記録を紙面に掲載したことについて、図書館利用者のプライバシーに抵触するのではないか疑問が寄せられていた問題。日本図書館協会は11月30日、神戸新聞社と村上さんの母校・兵庫県立神戸高校を調査し、協会側も含めた3者の見解を公開しました。神戸新聞社は村上さんの貸出記録に公益性があるとし、協会はプライバシーの侵害を主張。意見が分かれています。
同社は10月5日夕刊で「村上春樹さん 早熟な読書家 仏作家ケッセルの長編 高1で愛読」という記事を掲載。神戸高校で元教諭が廃棄予定の蔵書を整理していたところ、村上さんが在校中に仏作家ジョゼフ・ケッセルを読んでいたことを示す図書カード3枚が見つかった、と報じる内容です。図書カード1枚と、村上さん本人、カードを見つけた元教諭の写真3点を掲載。さらに電子版「神戸新聞NEXT」では図書カード3枚を収めた写真1点も追加しました。写真の図書カードにはほかの生徒の名前もはっきり見て取れたそうです。
ネットでは図書カードの掲載に疑問の声が相次ぎ、「神戸新聞NEXT」では翌日に図書カード3枚の写真を、さらにその後図書カード1枚の写真も削除しました。記事データベースでも紙面イメージ掲載を止め、テキストしか読めないようになっています。
神戸新聞社は報道について、「村上春樹氏は単なる私人にとどまる存在ではなく、その動静が社会的に注目を集めている上、村上春樹氏が若い時にどういう本を読んでいたかを、ノーベル文学賞発表前に伝えることは公益性が高いと考え報道した」と説明。図書カードの写真は本人直筆であるなど資料価値の高さからありのまま掲載しましたが、ほかの生徒の名前を隠さなかったたことについては「配慮を欠いた」と省みました。
神戸高校は、図書カードを見つけた旧教諭はボランティアで校史編さんをしていたことを説明しつつ、カードの入った旧蔵書を旧教諭といえども外部者に見せてしまったことに反省。個人情報に関しては成績情報の管理などは厳しく言ってきましたが読書履歴について言及してこなかったため、今後情報管理の徹底を図るとしています。
日本図書館協会の「図書館の自由委員会」は、日本国憲法21条の「表現の自由」を引き合いに、図書館利用者が何を読んだかは「内面の自由」として尊重されることが民主主義の基本原則と主張。図書カードを村上さん本人の同意なしに報道することは利用者のプライバシーの侵害であり是認できず、「新聞社にあっても、図書館と同じく文化の発展に寄与することをめざし、基本的人権をまもり育てるものとして、ともに図書館の自由の理念への理解を深め広げていただきたい」と訴えています。
また神戸高校についても、旧蔵書を廃棄する際に図書カードを適切に処分すべきだったと説明。「今回の事案を契機に、生徒と教職員など関係者に図書館の自由の理念への理解を深めていただきたい」と見解を示しました。
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