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若者の間で落語ブーム!? 立川志ら乃がアニメ「落語心中」とコラボした「渋谷らくご」に行ってみた

初心者でも楽しめる「渋谷らくご」リポート。

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 「落語」といって思い浮かべるのは、「演芸場」や「浅草」なんてところが相場だろう。「年寄りの娯楽」なんて思う人もいるかもしれない。しかしここは「渋谷」。しかも落語が開催される会場にしては違和感抜群のオシャレ空間「ユーロライブ」だ。ここにどんどん若い男女が吸い込まれていく。昨今、落語に対するイメージの常識を見事にぶっ壊し、大盛況を博しているのが、この「渋谷らくご」なのだ。

ユーロスペースは、渋谷駅より徒歩5~6分。寄席感のないコンクリート打ちっ放しの建物

 「渋谷らくご」は、「定席寄席に行くにはちょっとまだハードルが高い……」という落語初心者でも安心して見られるようにと企画され、毎月第2金曜日から5日間連続で開催。渋谷らくご・ひとりらくご・ふたりらくご・創作らくご・しゃべっちゃいなよ・まくら王という6つのプログラムがラインアップされている。キュレーターはお笑いコンビ「米粒写経」のサンキュータツオ氏だ。

2016年は1月8日~12日の5日間の開催だった。連日大盛況だ

 2016年1月10日、この日は大注目の高座があると聞いて急ぎ駆けつけた。筆者は昨年秋頃から落語をかじり、今いちばん夢中になっている時期。これは行かなければ! 実は前日の晩に、あの人気漫画「昭和元禄落語心中」(雲田はるこ著)がアニメ化され、第1話が放送された。その中で主人公・与太郎が高座にかけた演目「出来心」を、この日の「シブラク」で聞けるという。

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 アニメ効果も手伝ってか、178席はほぼ満員御礼。40代以上の男性が多いと思いきや、席を埋め尽くしているのは20代、30代の男女(あれ!? 筆者がよく行く演芸場では見かけない光景だぞ)! あまりのギャップに、思わず若い女性二人組に声をかけてみた。「落語がお好きなんですか?」と。すると回答は「最近けっこうハマッてます。でも今日は、志ら乃さんが「出来心」をやるというので来ました」という。やっぱり出来心効果か!

アニメ「昭和元禄落語心中」の制作スタッフからも花が届けられていた!
立川志ら乃師匠は、会場中が注目する演目「出来心」を

 それにしても、落語でこんなに若い人たちがワラワラいるなんて……。目の前を歩いていた手つなぎカップルにも声をかけてみる。「もしかして、落語でデートですか?」。大きなお世話だと言われてもおかしくないデリカシーに欠ける質問に、ほほえみながらうなづいてくれた彼女。そして席につくと、お隣はどうやら女性おひとりで来ている様子。「おひとりで落語ですか?」と勢いづいた筆者は隣の方にも声をかけた。「はい」と答えてくれた女性はものすごい美人! 「シブラク」はうら若き女性がひとりでも観に来られるような場所なのだ。

会場内は6:4ぐらいの割合で女性客。全体の年齢層は20代・30代が多く見受けられる

 さぁ、はじまった! トップバッターはこの会場の多くの人が注目する「出来心」。真打・立川志ら乃が登場すると場内は大きな拍手に包まれた。まずは演目「出来心」にかけた“まくら”を披露。ここで会場がドッと沸き、一気に場があたたまる。ちなみにまくらとは、本題に入る前に最近あった出来事などについての軽い小咄だ。「やっべぇーサイコーッ!!」と筆者の後ろにいた男性がヒーヒー言いながら大絶賛。その言葉遣いからも若そうだ。このお方もアニメファンなのだろうか。とにかくこの空間は現在、アニメと落語がコラボしているのだということがびんびん伝わってくる。

立川志ら乃が壇上にあがると、会場内は大きな笑いに包まれる。アニメファンに絶大なる支持を得ているようだ

 若者たちを大爆笑の渦に包む立川志ら乃師匠。実は、アニメ「昭和元禄落語心中」で主人公を演じている人気声優・関智一氏は自身の二番弟子だという。そんな立川志ら乃師匠とはいったいどんな人物なのか!? 公演後にインタビューしてみた。

―― アニメの影響もあり、みなさん「出来心」を楽しみにしていたみたいです!

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志ら乃 えぇ、その期待はものすごい伝わってきていましたよ。しかし……「出来心」、実は今日がネタ下ろしだったんです、緊張したなぁ~。

―― え、緊張したんですか? 師匠の弟子・関智一さんが昨晩の放送の中で、ものすごい上手に演じていらっしゃいましたけど、師匠として何かアドバイスしたとかあるのでしょうか?

志ら乃 アドバイスですか……ないですねぇ(笑)

―― ないんですか!? でも普通、弟子は師匠の高座を何度も何度も見て覚えるものじゃないのでしょうか? 師匠だって、志らく師匠や家元の高座を何度も見たっておっしゃってましたし。

志ら乃 普通はね。でも今回は逆でしたよ。

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―― 逆……とは?

志ら乃 昨日のアニメ落語心中の「出来心」の部分、めちゃくちゃ繰り返し見てきたんですよ。つまりは弟子の落語で勉強したってことです。……これ、あんまり言っちゃいけないやつかもしれませんが(笑)。

―― ぷっ!!(心の中で大爆笑)

昨年12月に行われた渋谷らくごでは「第1回創作大賞」を受賞し、ますます若い女性を虜にしている立川志ら乃師匠

 そんなお茶目な志ら乃師匠は、今やアニメファン&ハロプロファンにも大人気! 公演後、入口付近に設置されたグッズ販売ブースでは、志ら乃師匠のオリジナル手ぬぐいが飛ぶように売れていく!

志ら乃手ぬぐいは全5種類。真打昇進後、初めて作ったという紺色(左手前)のものは男性ファンに人気。ピンクの可愛らしいものは女性ファンに人気

 手ぬぐいを購入し、握手を求めていた女性に声をかけてみた。「今日はおひとりでいらっしゃったんですか?」 声をかけてみてびっくり。顔立ちがどこかあどけない。「失礼ですがおいくつですか?」と聞くと、なんと彼女は17歳の高校生だという。まさか、女子高生がひとりで落語に来るとは!

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シブラクは学割で安く入れるからうれしいと話す

 しかも手帳を見せてもらうと、都内各地で開催される寄席のスケジュールでいっぱい。“春ちゃん”とおっしゃる彼女は、去年の夏頃から落語ファンになったという。が、感想を求めると「志ら乃さんの落語は“くすぐり”が巧いし、顔芸ともいえる表情豊かな演じ方が最高です。しかも漫画「キン肉マン」などを創作でやったり、お笑いコンビ・ラバーガールの大水さんとタッグを組むなどかなりチャレンジャー。そんなところが魅力だと思います。あ、私が今まで見た『時そば』(古典の演目)の中で、志ら乃師匠のがいっちばん好きです!」と、決してにわかファンでは答えられないような回答。やはり、若者の間で落語はブームになっているのではないだろうか。

手帳には大好きな落語の予定でびっしり!!

 それにしても、そんなに連日落語に入れ込み、おこづかいは大丈夫なのかと心配すると「この“シブラク”は、学割が利いて安いんです。だから学校の友達も誘いやすいです」という。なるほど、勝因は良心的な料金設定にもあったようだ。さらに落研に所属している人も割引が受けられるという。

 なにはともあれ、落語はカッコイイ!! かく言う筆者も昨年頃から落語好きを自称するようになった。それにこんなに気軽な形で足を運べる場所があるのだから、ひと笑いしに行かない手はない。日常の生活にストレスを感じたらぜひ「渋谷らくご」へいこう。

 昨年末には、立川談志とその弟子である談春を描いたドラマ「赤めだか」(TBS)が放送されたほか、今年1月にはアニメ「昭和元禄落語心中」(TBS)が放送スタート、そして映画「の・ようなもの のようなもの」(松竹)も現在上映中だ。さらには現在発売中の雑誌「ダ・ヴィンチ」(KADOKAWA)でも30ページにわたり落語を特集している。

 今年、まちがいなく落語は、来る!! 

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(浅井由起子/LOCOMO&COMO)

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