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日本アニメの創成期を知る大ベテラン 「カールおじさん」の生みの親・ひこねのりおさんに聞くアニメ業界秘話【PR】(1/3 ページ)

31年ぶりに公開された「たけのこの里」の新作CM。ベテランアニメーターのひこねのりおさんに貴重なお話を聞きました。

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 「チョコだけのこの里」「クッキーだけのこの里」(関連記事)のプレゼントキャンペーンを展開する明治が、31年ぶりとなる「たけのこの里」の新作アニメCMを公開。1985年のCMにはお蔵入りになっていた続きがあった、という設定のエイプリルフールネタとして公開されたもので、そのユニークな内容からネット上でも話題になっていました。

エイプリルフールに公開された特設ページ

 新作では31年前の制作メンバーが再集結。アニメーションを担当したのは、あの「カールおじさん」のキャラクターデザインを務めたことでも知られるひこねのりおさん。東映動画時代には宮崎駿さんの先輩でもあった超ベテランアニメーターです。そんなひこねさんに、長年にわたるアニメ業界での経験や仕事術など貴重なお話を聞いてきました。

新作パートは「カメラ目線」を意識

ひこねのりおさん

―― 今回「たけのこの里」のCMには続きがあった! ということで、31年ぶりに新作アニメを作られたわけですが、最初のCMはどういう企画から始まったんでしょう?

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ひこね 僕はコンテを作る段階から入っていて、その前の経緯が分からないの。当時の「たけのこの里」や「カール」のCMは高杉治朗監督と2人でお話を作って、僕がそれをコンテにするという作り方だったんですね。僕は作画のほうをやっていて、演出じゃないから、企画のことは部分的にしか分からないんですよ。どうしてタヌキとブタが主役なのかってことも含めて、昔のことは結構忘れちゃってます。

―― 31年前のCMはたけのこを抜いたタヌキが勢い余って転んでしまうところでお話は完結していました。その続きを作るにあたって、どんな思いを抱かれていました?

ひこね 既に終わっちゃった話の続きだから、全く新しい作品とも違うし、何がなんだか分からないで作っちゃいましたね。今回は僕はお話には全然タッチしてなくて、言われる通りにやっただけです。ただ、今は何がウケるか分からないから、奇跡が起こればいいなと。

31年前はタヌキが転んだところでCMは終了。新作ではこの「続き」が描かれています

―― 新しいCMもタヌキが転んでしまうところまでは以前と同じですが、そのあとにたけのこを引っ張り合って「チョコだけ」「クッキーだけ」に分かれてしまうという内容になっていますね。新作と31年前の作品を違和感なくつなげることに、ご苦労はありました?

ひこね 僕はあんまり進歩してないから、違和感なかったですけどね(笑)。不器用だからね、時代に対応できないんですよ。ジタバタしてもしょうがないですしね。

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―― 当時の古いフィルムと新しく描かれた部分が自然につながっているのが印象的でした。どうやって途中から描き足されたんでしょう?

ひこね 前に撮ったフィルムがたまたまあったので、それに描き加える形で作りました。高橋さんの方でいろいろ加工されて、苦労して昔のものを復元されたそうで。

31年前の制作メンバーが再集結。左から音楽プロデューサーの遠藤茂亀さん、ひこねさん、アニメーションプロデューサーの高橋渉さん

高橋 たまたまフィルムの原板があったんですよ、それも良い状態で。それでテレシネ(フィルムからテレビジョン信号に変換する作業)し直して、新作部分も画質を昔風にして合わせてみたり、ちょっとデジタルっぽくやっています。

―― 新作部分は昔ながらの手描きですが、自然につなぐためにデジタル技術を使っているんですね。

高橋 明治さんのほうから「31年前にお蔵入りになったフィルムが見つかった」という風にしたいと頼まれまして。本当に昔作っていたように描かないと成立しないので、ひこね先生も頭を抱えられてましたね。結局、旧作の背景を後半まで持ってくるように加工したんです。その上に新作のキャラクターだけ合成するという裏ワザを使っています。

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ひこねさん宅に保存されていたフィルム

―― 背景は昔のままなんですね。

高橋 これがもしもカメラをPAN(横に移動する)されるとちょっと困りますが、ある程度、舞台が固定されていましたからね。

―― 作業的には、どのパートが一番大変でしたか?

ひこね 僕のほうは苦労したことはないんですよ。31年分の穴を埋めるのは高橋さんなので。

高橋 私どもは、ひこね先生が今度は何をやってくれるかなと。それだけを期待していましたね。これはプロデューサーの期待でもあったんですが、今回もなにかやってくれるよねという。

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―― 「お遊び」的なものを入れられたんですか?

ひこね 最後のところの秒数が余ったので、タヌキとブタに格好をつけたポーズをさせたかな。31年前のやつでは、そういうことはしなかったですね。今は明らかに演出が変わってきてるので、サービスしなきゃいけないかなと。今回は、かなりカメラを意識する風にしてますね。

ひこねさんが最後につけ加えた「格好をつけたポーズ」

ネットで60万回再生の感動

―― 31年ぶりの新作CMがネットに動画公開されたわけですが、60万回以上も再生されていてすごく好評です。現在の反響にどういう感想を抱かれますか。

ひこね 60万回というのは、想像を絶する数ですね。今までのテレビCMもどれだけの人が見てるのか分からなくて、それと比べて多いのか少ないのかも分からないですが……そんなに見てもらえるのはすごいなと思いますし、驚いてますね。どういうことかよく分からないんですけど、もちろんうれしいです。

―― ひこね先生は数々のCMを手がけられてきていますが、現在のCMは見られてますか?

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ひこね あんまり見ないですね。特に最近はCMでアニメを使ったものってあんまりないからね。あってもCGだったりして、僕がやってるような手描きのものはほとんどない。最近ので言えば古川タクさんの手がけた龍角散CMは好きですね。友達なんだけど。

―― 今回の動画が公開されたとき、ネットの反応を確認されましたか?

ひこね 全然してないです。というかできないんですね。気になったりはしますけど、僕はネットを見ないし、ネットをやる友達もいないのでやり方が分からないんです。

―― ネットでは「最後のタヌキとブタの動きが速すぎるだろう」と面白がられてましたね。

ひこね ああ、僕は困ったものだなと思って見ていたんだけど(笑)。だから何がウケるか分からないですね。あれがウケたんですか、それは意外ですよね。

たけのこを高速で抜き差しするブタとタヌキ。意味深な動きにビックリ

―― かわいらしい世界で、こんな動きをするの? と意表を突くものが出てきてビックリという。

ひこね じゃあディレクターのイメージ通りに行ったんだ。そういう見てる人を裏切るようなものがウケるんでしょうね。今までやってないことだから。

同シーンの原画も
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