スポーツの秋だけど運動はちょっと…… だったら「ロボットプロレス」を観戦すればいいじゃない!:司書メイドの同人誌レビューノート
今週は、観戦側である著者さんが作られた「ロボットプロレスがよくわかる本」をご紹介。
読書の秋、芸術の秋、スポーツの秋、と言っても、スポーツは……うーん、我が身を振り返ると、ちょっと縁遠くなっています。スポーツに親しむって健康的な感じがするんですが、いかんせんなかなか自分で体を動かす機会はありません……。でもせっかくいいお天気が続く季節ですし、スポーツ観戦ならいいかも。そんな気分でこの同人誌を手にしたのですが、ロボットががんばるプロレスとは……?
今回紹介する同人誌
「ロボットプロレスがよくわかる本」 A5 32ページ 表紙・本文カラー
著者:散財
意外と有名? ロボットプロレスとは
私は同人誌即売会でこちらの本を手にし、そこで初めて“ロボットプロレス”を知ったのですが、なんと2008年から活動を続けていらっしゃるんですね。個人の方が制作されたマイロボットを、専用のリング上で無線操縦して戦うのだとか。見ての通り、小さなロボットが組みあう姿はインパクト十分で、テレビなどで取り上げられることも多数。ねとらぼでも2011年に取材していました(関連記事)。
動画を見ると、ロボットプロレスという言葉からイメージする世界そのまんまの見た目で、驚きです。でも動きはキビキビ、くるくるしていてなんだかかわいいですねえ。プロレスらしからぬ、ほのぼの感も漂いますよー。
「プラレス3四郎」神矢みのる先生もハマる! 自作ロボットの奥深さ
しかし動画で拝見していてあまりにもさりげなく、当たり前にどのロボットレスラーもこなしていて驚いたのは、倒れたロボットが即座にすくっと立ち上がること。小さな体ながらも、きちんと操縦者の意志に添って腕を振ったり、プロレス技も掛けたりと大活躍。
「すごい、こういうロボットって自分で作れる物なんですか!?」という私の驚きに、「週刊少年チャンピオン」で連載され、アニメ化もされた人気まんが「プラレス3四郎」の神矢みのる先生によるゲストまんが「ロボットプロレスはじめちゃいました」が応えてくれます。実は神矢先生はロボットの仕組みについては、いまだに「ゼンゼン理解しとらん」状態だったとか。しかし近年ロボットプロレスをきっかけについに自作に挑戦! 最初は足をさかさまにつけちゃったり、調子に乗って高級モーターを買って次の日に燃やしちゃったりと、苦戦されながらも、ついにマイロボットを完成させるまでの流れがまんがになっており、「ちゃんとみんな、ロボットを自作してるんだ」というのが、実感できます。
どう楽しむ? ちっちゃなロボットたちの熱戦鑑賞
この本を作られた著者さんはロボットプロレス出演者ではなく、観戦する側だそう。「ともかく一度でもいい、生でロボットプロレスを見てほしい」という思いでこの本を制作されたそうです。愛するロボットプロレスを広めるために、「ロボットプロレスとはなにか」「どういうところで見ることができるか」と言った基礎情報から、ロボットレスラー紹介、大会観戦レポートに至るまで、「ロボットプロレスがよくわかる本」の名の通り、これを読めば「なるほど!」とよく理解できます。
中でも印象的な一言が「素朴な疑問」コーナーにありました。
Q.きちんとプロレスになっているの?
A.思いのほかプロレスです。
思いのほかプロレス……! なんと率直な感想でしょうか。小さな体でしっかり動くロボットレスラーたちは、精密機械ゆえ、リング上で故障してしまうこともあるんですって。それでも試合を成立させるのが操縦者の腕の見せ所だとか。日進月歩の技術革新の中で、楽しみながらロボットプロレスを行なう方々がおり、それを観客がまるごと受け止める奥深さを感じました。
この同人誌レビューでもさまざまな本を紹介してきましたが、同人誌は
1.好きなものを絵や文章、写真などの創作物で見せる「表現派」
2.対象をリサーチ、集計、分析する「データ派」
3.情報を集めて明らかにし、隙あらばこちらの沼に招きたい「啓蒙派」
の要素が絡み合っている気がします(※沼:大好きな対象に首までどっぷり浸かっている状態のこと)。この本はまさに啓蒙派!
プロレスは観客に「魅せる」要素が大きいスポーツで、エンターテインメント性も高いですね。それだけに「観客がどこに注目しているか」の疑問をカバーし、「どう楽しんでいるか」という視点を持ったこちらの本は、ジャンルとコンセプトがぴったり合った啓蒙派同人誌の良作です。ロボットプロレス、直近では11月3日に大会が行われるようです。
今週のシャッツキステ
著者紹介
司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る
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