先日、詩にまつわる同人誌に触れてみたいと思い立ち、「ポエケット」というイベントに行ってみました。ポエケットは、詩人さんが自著を販売したり朗読を聞くこともできる、“書く人も、書かない人も、読む人も、読まない人も、まとめて一緒に「詩を遊ぼう」という場”とのことです。
どんな感じかしらと、そーっとのぞいてみると……あら、思っていたよりもにぎやかで入りやすい。文字に思いを込める研ぎ澄まされた感性をお持ちの方々だから、会場はきっと息をひそめるような静けさなのだろうと思っていたのですが、サークルさんや一般参加の方でにぎわい、和気あいあいとした雰囲気。ほっとして、普段はほとんど詩に触れない生活をしている私も、肩の力を抜いてサークルさんを見て回ることができました。
詩の同人誌も、写真集のようだったり、カード型になっていたりと多種多様。あらためて会場を見渡せば、こんなにたくさんの人たちが詩をテーマに集っていることに驚きます。奥深いんだなあ……としみじみしていた私に、この1冊がさらなる新しい扉を開いてくれました。
今回紹介する同人誌
「スポークンワーズ・マガジンどんと、こい!Vol.4」 70ページ 表紙カラー・本文モノクロ
ポエトリーリーディングってなに?
こちらの同人誌は、詩のなかでも特に「ポエトリーリーディング」を取り上げてらっしゃいます。ポエトリーリーディングとはざっくりというと、詩の朗読のこと。でも、ただの朗読ではなく、リズムなどの音楽的要素や、演劇のような表現が入ることもあるそう。調べてみたところ、雑誌「週刊東洋経済」では7年前の2009年3月28号で、「カフェで読みあげろ!ポエトリーリーディング」として、カフェに集まって詩を読み合う人々の様子が記事になっていて、昨日今日のぽっと出のブームではないことがうかがえます。
また、アイドルグループ欅坂46さんが2016年8月に出す新曲「世界には愛しかない」には、「ポエトリーリーディングに挑戦」との説明も。おお! もしや、いまポエトリーリーディングが盛り上がってる!? とわくわくしていたら、知らぬは自分ばかりで、実はとっくに世界大会が開かれるくらいにメジャーなジャンルだったのです。
世界が舞台! 出場者のリアル体験談
巻頭特集は、2015年にベルギーで行われた国際ポエトリーリーディングの大会の参加者3人による座談会。大会は3人一組で行われたこと、日本語の詩をフランス語に訳すのが大変だったこと、それぞれ自作の詩を読む3人ですが、ステージで個性を生かすのが難しいことなど、大会の様子が生生しい言葉で伝わってきます。参加会場はカフェで、審査員は現場のお客さんの中から募るというスタイルなのだそう。いまいちだとブーイングされることも。うう……異国で詩を読むってだけでもプレッシャーがかかることが想像できるのに、観客が審査員って容赦なさすぎでは……!
さらに、フランスで行われた別の大会の参加者へのインタビューも掲載されています。こんなにいろんな大会があるんですねえ、国際的です。異国で詩を披露する事から、過去に「詩のボクシング」で戦った時のことなど、ボリュームたっぷりに語られる一言ひとことから、リアルタイムな感情が読みとれ、「詩人は教科書に載っている過去の職業ではないんだ! この人たちはいまを生きる詩人さんなんだ!」と引き込まれます。行ったことも聞いたこともないポエトリーリーディングの世界大会なのに、なんだかいつの間にか「すごい!」と褒めたたえる気持ちでいっぱいになっていました。
同人誌から詩が拡張していく
さらに世界大会に参加した人の作品も載っているので、「あ、これがインタビューで話題になっていた『イカ百選』ですかー」と、気になる作品をすぐに読むことができます。その他、ポエトリーリーディングに取り組む方々のコラムなども掲載されています。
考えてみれば、人の心から生まれた詩を紙に書きつけ、誰かが声に出して読み、それをまたいま私が読んでいるというのは不思議な構造ですね。どんどん入れ子になるマトリョーシカみたい? いえ、きっと逆ですね。大事な詩を核に内包して、声に出したりさまざまな方法で、作品を伝えようと広がっていく、拡張するマトリョーシカみたいな同人誌です。
サークル情報
サークル名:日本スポークンワーズ協会
参加予定イベント:TOKYOポエケット(例年7月予定)、渋谷RUBY ROOMで開催される「ポエトリーリーディングオープンマイクSPIRIT」(毎月第1水曜日開催)
取り扱い:http://d.hatena.ne.jp/uraocb/touch/20150705/1436277601
vol.5も発売中!
今週のシャッツキステ
ただいまシャッツキステでは、スマホゲーム「けものフレンズ」さまのイラスト展示などを行う「JAPARI CAFE」を開催中です。メイドの皆にもケモノ耳が!? ノバラちゃんの朗読が、ますます良く聞こえるかしら?
著者紹介
司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る
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