ソメイヨシノが散り、そろそろ八重桜が見ごろでしょうか。お花見にはおいしい食べ物とお酒が合うもの。ほろ酔いで見上げる桜はまた格別なのでしょうねー。そんな時に選ぶのは、ピンク色のロゼワイン? 春風のようにすっきりした日本酒? それとも、ふんわりあまーいみりん? そう、こちらの同人誌は、おいしいみりんを求めて17種類を飲み比べた“みりんを飲むためのレビュー本”なのです(なお、ここで語られるみりんは「みりん風調味料」ではなく、アルコールを含む「本みりん」です)。
今回紹介する同人誌
「みりんの飲み方」 A5 36ページ 表紙二色刷り・本文モノクロ
著者:ささつゆ
けっこう長い“飲む”みりんの歴史
シャッツキステで「みりんって飲めるそうですよ」とお話ししたら、聞いてらした方がちょっと微妙なお顔に。いわく「みりんを飲むってアレでしょ? あの……お酒が飲みたいけど、どーしても入手できなかった時に手を出すってパターンでしょ?」と。いえいえいえ! この本は作者さんの「みりんは飲んでおいしいものだ」という気持ちから作られています。あえて、みりんなのです。
冒頭のページには「みりんを飲むと言うと、多くの人が思い浮かべるのがお屠蘇(とそ)でしょう」と書かれています。ああ、そういえばお屠蘇はお酒とみりんを使うんですよね。なるほど、飲み物としてのイメージが沸いてきました。ほかにも、中国清明の時代に「密淋(ミイリン)」と呼ばれる甘いお酒があった事や、日本でもみりんの製法に「蜜のように甘いお酒で珍しい」との記述があるなど、実は長く愛されてきた歴史があることがまとめられています。
おいしいみりん+牛乳=キャラメルプリンの味わい?
そして、みりん17種類の飲み比べへ。スーパーでよく見かけるタイプのみりんから、酒造がつくるこだわりのみりんまで、色、香、味と香りのふくらみなどで評価されているのですが、「口当たり」なんていう単語がでてくるのが、いかにもお酒のレビューらしいですね。そう、みりんはお酒なんです。しかもアルコール度数もけっこう高い。それを踏まえて、気になる作者さんの評価は、あくまでみりんを「飲料として適しているかどうか」に主眼を置いているため、きっぱりはっきりと、中には「とても飲めたものではありません」と書かれたものも……。街中でお手軽に買えるタイプのみりんは、やはりお料理に使うのがいいみたいですよ。
では、おいしいみりんとは一体どんなみりんなのでしょうか。ページをめくると、まず、添えられたパッケージのイラストが目に入ります。おお、なんだかビンがもうおしゃれっぽい! 続いて、それぞれのみりんを水割り、お湯割り、炭酸割り、牛乳割りなどでチェックした、実飲レビュー。みりんに牛乳? とのけぞってしまったのですが、レビューによると、なんとキャラメルプリンのような味わいになる場合もあるとか。炭酸水で割ったときは上品なコーラの味わいを感じると……うん、これは飲んでみないと分からないですね。
なんとなーく想像はできるものの、みりんを飲むと言うあまりにも未知の世界に、想像が広がるばかり。なんだか紙面から甘い匂いがしてきそうな、ほんわりと笑顔になれそうな……、掲載されているレビューの数々に好奇心がそそられます。
大人のレアスイーツ発見? みりん粕って?
酒に酒粕があるように、みりんにもみりん粕があるのだとか。初めて知りました。この本では、みりん粕5品についても食べ比べをされています。そのお味はと言うと、「熟成した甘いバナナのような香り」「青リンゴのようなさわやかな酸味」など、これまた「そんな食べ物あるんですか!?」と身を乗り出してしまいそうに。でも、どうやらオンラインショップでも期間限定の商品となる場合が多いようで、なかなか入手困難な食べ物みたいです。ほんのりお酒の気配もする、幻の甘味だなんて、大人のスイーツにぴったりではないでしょうか。
みりんも、みりん粕もそれぞれの紹介だけでなく、製造元や通販の可・不可、検索用ワードまで載っている親切ぶり。行き届いた心配りに、作者さんの「おいしいみりんに出会ってみてほしい」という気持ちをひしひしと感じます。あとがきには「みりんをもっと楽しんでくださいね」の一言。この同人誌で、新しい楽しみと出会えそうな気がします。
サークル情報
サークル名:ささのしずく
Twitter:@sasatsuyu
参加予定イベント:コミティア116は「さ13b」、グルメコミックコンベンション、コミックマーケットなどに参加予定(随時ツイッターなどで告知)
今週のシャッツキステ
著者紹介
司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る
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