「えっ、名前って誰でも変えられるの?」 改名を経験した著者による同人誌が読み物としても傑作だった司書メイドの同人誌レビューノート

現在、Amazonプライム会員向けに無料配信中。

» 2016年02月07日 11時00分 公開
[シャッツキステねとらぼ]
シャッツキステ

 小さいころ、すてきなマンガを描く少女マンガ家の先生の、かわいいペンネームに憧れていました。「もしも私が漫画家になったら、どんなペンネームにしようかなぁ」なんて考えた揚げ句、サインの練習までしてしまったり……。わーわー! 覚えてない! そのころのことなんて覚えていません!

advertisement

 ……ふぅ、うっかり恥ずかしい思い出の蓋を開けてしまうところでした。ともあれ、なにかを表現する人や芸事をする人に限らず、現代はSNSのニックネームや、ゲームのプレイヤー名など、「どんな名前にしようかな」と考える場面って意外と多いんですよね。本名とは違う仮の名前を考えるのはちょっとウキウキします。けれど、「自分で付けたニックネームが本名だったらどんなにいいだろう……」と切に願っている人も、この世の中にはいらっしゃるのではないでしょうか。

今回紹介する同人誌

「デキル!!改名手順のイロハ」 A5 28ページ 表紙カラー・本文モノクロ

著者:ゆーまる

デキル!!改名手順のイロハ 明るくも落ち着いた色づかい、そして表紙にコートされたマットPPのさらりとした手触り……手に取りやすい!

経験者が語る、改名までの道筋

 「名前を変えたいなら、変えられるんです。変える自由はあるんです」。最初のページを開いたところ、こんな言葉が目に飛び込んできました。著者さんは、実際に裁判所で改名手続きをされた経験があり、改名手続きの準備やポイントを、実際に行った経験に基づいて、細かに記されています。改名する前の心構えから、必要な実績をどう積むか、家庭裁判所に変更を申し立てる時は……と順を追って解説されています。

デキル!!改名手順のイロハ 「改名は生きる上での選択肢のひとつ」という言葉が胸に響きます

 この本を開くまで、「改名ってなんだかドラマチック……。改名するまでに、どんなストーリーがあったのかしら」と、実にやじ馬根性丸出しな部分があったのですが、著者の方の改名理由は本では全く触れられていません。それにも関わらず、読んでいくと「ほうほう、それでそれで?」と続きが気になってしまいます。淡々とつづられる、改名に向かう道筋……。全く知らなかった事柄を順を追って丁寧に解説されることによって、「知る楽しさ」を感じることができます。

advertisement

 そして、「名前」という、常に自分とともにあるなじみ深いのものが題材となっているだけに沸き上がる親しみやすさ! 改名をしようとは考えていなかったのに、するすると読み進めてしまいます。改名ってできるんですねぇ……。なんだか途方もなく遠い世界のように思っていました。

改名する前とした後に

 個人的なことは語られてはいないのですが、時々「問:同人誌イベントは通称で申し込んでもいいの? 答え:本名で申し込みましょう」というような、リアルな体験を元にされたとおぼしき文章が出てきます。その中でも「改名した後の方がむしろ大変」という話を、インターネットのプロバイダー手続きや、運転免許証の変更など、具体例をあげて解説されているのには、うんうんとうなずく気持ちに。また、改名する前に予想される周囲との意見の違いにどう心構えをするか、といった精神面にも言及してあるのが心強いです。

デキル!!改名手順のイロハデキル!!改名手順のイロハ なるほど、改名する前でも周囲からこんな反応があるかもしれないんですね……

この情報を必要とする人にとって一つの選択肢になるのなら

 この同人誌を読むことで、きちんとした手順を踏めば誰でも「改名ができる」ことがよく分かりました。でも実際の所、やっぱり改名は、その人の人生にとって重大な出来事。そしていろんな事情から名前が変わることを心配する人がいらっしゃるだろうことも、この本では折々触れられています。けれど私は、「この本が広まるといいな」と思うのです。改名を考えている人はもちろん、考えていない人も、「名前を変えることができる」という情報を知っているだけで、心に大きな余裕が生まれるのではないでしょうか。

 実際にこの本に載っているような手段を取るかどうかはその人次第ですが、こんなにも身近な話題なのに、あまりスポットが当たってこなかった改名という方法を同人誌にしている。それを知らないで過ごすのはもったいないと思うのです。ちなみにKindle版は、Amazonプライムに入会していると無料で読めるので、ぜひ手にしてみてください。

advertisement
デキル!!改名手順のイロハデキル!!改名手順のイロハ 文章が中心ですが、簡潔に書かれているので読みやすいです

サークル情報

サークル名:ジップデークレ

Twitter:@YU_maru

入手場所:メロンブックス、Amazon(Kindle版

今週のシャッツキステ

シャッツキステ 卓上の猫の置物は、しっぽに糸巻きを設置できるすぐれもの。ぴんと立てたしっぽに巻かれた糸は、メイドがレース編みをする時に使います。名前は「ナツメ」。「どうしてナツメさんになったのか、今度聞いてみます」と、お給仕のあと、メイドのツカサがナツメの顔をまじまじとのぞき込んでいました

著者紹介

司書メイド ミソノ 司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

昨日の総合アクセスTOP10
  1. /nl/articles/2502/18/news053.jpg “きれいな少年”が大人になったら→「なんでそうなったw」姿に驚がく 「イケメンの無駄遣い」「どっちも好きです!笑」
  2. /nl/articles/2502/17/news061.jpg ママが反抗期の娘に作った“おふざけ弁当”がギミックてんこ盛りの怪作で爆笑 娘「教室全員が見に来た」
  3. /nl/articles/2502/18/news014.jpg 不要になったペットボトルに種をまき、3カ月育てたら…… 驚きの成果に「すごっ!」「素晴らしいアイディア」
  4. /nl/articles/2502/13/news049.jpg 「絶対犯人チップデールやん」 ディズニーのドアストッパーを買ったら→思わず“二度見”な形に「これほしいwww」と480万表示
  5. /nl/articles/2502/11/news012.jpg 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  6. /nl/articles/2502/18/news092.jpg 「悲しみに暮れてる」 サイゼリヤがメニュー改定→“定番商品”消滅にショック広がる 「大好きだったのに」
  7. /nl/articles/2502/18/news140.jpg 職場で21歳上の女性上司に“一目ぼれ”→猛アタックして交際&年齢差を乗り越え結婚 夫妻が波乱語る
  8. /nl/articles/2502/18/news005.jpg 咳き込んでいたら、愛犬が寄ってきて…… ぽとりと置いたぬいぐるみに「なんて優しい子」と大反響 1年後の現在、飼い主に話を聞いた
  9. /nl/articles/2502/19/news062.jpg 京大法学部の中庭で発見された“まさかの落とし物”が170万表示 京大生のユーモア全開で「めっちゃ笑った」
  10. /nl/articles/2502/19/news029.jpg “気性が荒いので飼うな“と言われたトカゲを、初心者がお迎えして3年後…… 信じられない現在の姿に「すごーい!」
先週の総合アクセスTOP10
  1. 最初に軽く結ぶだけで…… 2000万再生された“マフラーの巻き方”に反響「これは使える」「素晴らしいアイデア」【海外】
  2. コメダ珈琲店で朝、ミックスサンドとコーヒーを頼んだら…… “とんでもない事態”に爆笑「恐るべし」「コントみたい」
  3. 「14歳でレコ大受賞」 人気アイドルがセクシー女優に転身した理由明かす 家族、メンバー、ファンの“意外な反応”
  4. 雑草ボーボーの荒れ地に“牛3頭”を放牧→2週間後…… まさかの光景に「感動しました」「いい仕事してますねぇ~!!」
  5. “この子はきっと中型犬サイズ”と思っていたら……たった半年後とんでもない姿に 「笑わせてもらいました」
  6. 年の差21歳で「夫は娘の同級生」 “両親大激怒”で結婚は猛反発されるも……“まさかの行動”で説得
  7. 163センチ、63キロの女性が「武器はメイクしかない」と本気でメイクしたら…… 驚きの仕上がりに「やっば、、」「綺麗って声でた」
  8. サイゼリヤ、メニュー改定で“大人気商品”消える 「ショック」悲しみの声……“代わりの商品”は評価割れる
  9. ママが反抗期の娘に作った“おふざけ弁当”がギミックてんこ盛りの怪作で爆笑 娘「教室全員が見に来た」
  10. 「さすがに無神経な内容」 “暴言受けた”伊藤友里が降板発表→岡田紗佳の直後の投稿に批判の声 Mリーガーも反応
先月の総合アクセスTOP10
  1. ドブで捕獲したザリガニを“清らかな天然水”で2週間育てたら…… 「こりゃすごい」興味深い結末が195万再生「初めて見た」
  2. 「配慮が足りない」 映画の入場特典で「おみくじ」配布→“大凶”も…… 指摘受け配給元謝罪「深くお詫び」
  3. 母「昔は何十人もの男性の誘いを断った」→娘は疑っていたが…… 当時の“モテ必至の姿”が1170万再生「なんてこった!」【海外】
  4. 風呂に入ろうとしたら…… 子どもから“超高難易度ミッション”が課されていた父に笑いと同情 「父さんはどのようにしてこのお風呂に入るのか」
  5. 母親から届いた「もち」の仕送り方法が秀逸 まさかの梱包アイデアに「この発想は無かった」と称賛 投稿者にその後を聞いた
  6. 市役所で手続き中、急に笑い出した職員→何かと思って横を見たら…… 衝撃の光景が340万表示 飼い主にその後を聞いた
  7. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  8. DIYで室温が約10℃変わった「トイレの寒さ対策」が310万再生 コスパ最強のアイデアへ「天才!」「これすごくいい」
  9. 「こんなおばあちゃん憧れ」 80代女性が1週間分の晩ご飯を作り置き “まねしたくなるレシピ”に感嘆「同じものを繰り返していたので助かる」
  10. 岡田紗佳、生配信での発言を謝罪 「とても不快」「暴言だと思う」「残念すぎ」と物議