インタビュー

「原作を守りつつ頭悪いことを」 “アメイジング翻案家”架神恭介が語る、「こころ オブ・ザ・デッド」への義務感(2/3 ページ)

単行本第1巻発売を記念したインタビュー。

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就活という概念を知らなかった大学時代

―― 架神さんのこれまでについても掘り下げていこうと思います。早稲田大学を卒業してからは就職されたんですか?

架神: いえ、就活もしていなかったですね。早稲田大学の第一文学部は当時就職率が50%ぐらいで、周りは誰も就活していなかったんですよ。だから就活という概念を知らなくて。大学4年の6月ぐらいにその概念を知って、「まだ就活って間に合うの?」って友達に聞いたら「もう無理じゃない?」って言われて、「はー、そうか」って。

―― では、卒業してからは?

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架神: バイトやってました。日銭稼いでりゃ生きてけるんで、こんなもんでいいやと。なにも考えてなかったですね(笑)。

―― バイトをやりつつ執筆を?

架神: いえ、パンクバンドをやってました。バンドで食っていけるかなと一瞬思ったんですけど、ちょっと無理そうで。でも、あるとき開催したライブの内容をテキスト化して「完全パンクマニュアル」というサイトを作ったらウケまして。出版社に話を持って行ったら本になったので、じゃあ作家になろーって。

―― 跳ねたのってどこなんですか、これで作家としてやっていけると思ったのは。

架神: 跳ねたって感じはずっとなかったですね。

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―― 「放課後ウィザード倶楽部」の原作者でもあるし、「こころ オブ・ザ・デッド」もあるしで、普通の人はなかなかそこまでたどり着けないと思うんですよ。

架神: あー、それでいうとダンゲロスを横田(卓馬)先生が漫画化してくれたおかげで、僕に漫画を作る才能があるという誤解が広がって、オファーが来るようになったんですよ(笑)。実際はもっとオファー来ていたんです。

―― いま週刊と月刊で連載されてますけど、体力的にもスケジュール的にも相当大変なんじゃ……。

架神: 超しんどいです。樹林(伸)先生にだまされたんですよー。樹林先生に講談社漫画賞で会ったときに、当時ジャンプでの企画も進めてたので、ジャンプとチャンピオンで週刊を2本やるかもしれないんですけど、大丈夫でしょうかって聞いてみたんです。樹林先生はマガジンでいっぱい連載してるじゃないですか、笑いながら楽勝楽勝って言われて、楽勝なんだーと思ったんですけど、あの人が超人なだけなんですよ。業界には何人かそういう超人いますけど、俺には無理だった、俺は超人じゃなかった。

お金にならない、その場のノリで決まったようなことをやりたい

―― 大藤さんとはいつごろ出会ったんですか?

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架神: 僕の友人が「たたかえっ!憲法9条ちゃん」という小説を書いてて、それが出版されるはずだったのに色々あって出なくなりまして、それに関連したイベントを開いたんですよ(「『たたかえっ!憲法9条ちゃん』出版祈念トークショー」のこと。2014年4月に阿佐ヶ谷ロフトで開催された)。それに武富(健治)先生っていう、ドラマ化もした「鈴木先生」の作者ですね、その方が来ていて、大藤さんは武富先生の担当をしていた関係でイベントに来ていたんです。

 そのときは武富先生のことをなにも知らなったので、「鈴木先生」って人だと思ってたくらいなんですけど、イベント終わった後に著書の「惨殺半島赤目村」を読んだら超面白くて、一気にファンになりました。ダンゲロス1969の表紙も武富先生に描いてもらっています。

大藤編集: 他にも、オールナイトのよく分からないイベントをやってましたよね。

架神: たまねぎを切りながらこしょうをかけたらどっちが勝つかとか、アリとダンゴムシを戦わせたり、将棋VS麻雀をしたり。あと、そのイベントを中心でやってた人と作ったのが「コンドームごはん」です。そいつのイベントの一環でコンドームでごはんを作るっていうのがあって、イベントではできなかったので、じゃあ電子でやるかってなったのがコンドームごはんですね。バズりはしたけど、売れませんでした。


これが天才の発想か……

―― そのころは作家1本で生計を立てられていました?

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架神: そうですね、年100万とかのすごいレベルの低い印税生活でしたけど。食っていけるけどお金はないみたいな。当時はすごい時間があったので楽しかったです。いや、別に今が悪いわけじゃないですけど。

大藤編集: いやいや、あのころはあのころで、持て余すエネルギーをよく分からないオールナイトのイベントにぶつけたりしていたわけですから。

架神: やっぱりああいうのに気軽に出られるような状況がいいですね。ちょっと今年は忙しすぎた。少し余裕ができたはずなんで、これからは、その場のノリで決まったような、クソみたいなことをもっとやりたいですね。

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