レビュー

ンまぁ~い!! 全12種類の手作り「さけるチーズ」にチャレンジした夫婦の食レポ本司書メイドの同人誌レビューノート

イチゴジャムに漬けるのはギリギリアウトだと思います。

advertisement

 新年ですねー。今年のお正月休みはちょっと短かったかな? という方もいらっしゃるでしょうか。年末の冬コミを戦い抜き、年始はのんびりと、おせちをつつきながら一献傾ける……という、優雅な年初めに憧れます。

 そんな時に、おいしいチーズが傍らにあったらうれしいですねえ。こちらの同人誌は、さけるチーズの手作りレポート本です。独特の食感のさけるチーズ、それがバリエーション豊富に手作りできるとは驚きです。

今回紹介する同人誌

「裂いたよ ~さけるチーズ製作記~」 A5 32ページ 表紙・本文カラー、口絵モノクロ

著者:こむぎ子

裂けてる! 確かに裂けてます

さけるチーズって作れるんだ! 失敗談もご夫婦の掛け合いにくすっと笑っちゃう

 まず、さけるチーズを自分で作れる、というのが驚きでした。でも、過去にねとらぼさんでも作り方が紹介されていたりと(関連記事)、「さけるチーズ」を作れるというのは、割と皆さんご存じなんですね。

advertisement

 この本の登場人物、こむぎ子さんと、そのパートナーのペンギン姿の旦那さんは、事前に情報を調べ、モッツァレラチーズや、耐熱手袋などの準備を整えて、いざ作成へ! しかし準備万端で臨んださけるチーズ作りに、その装備力があだとなって襲い掛かります。練る度に、指にまとわりつくチーズに悪戦苦闘。チーズ作りを困難にしたのは、耐熱手袋の表面のささいなデコボコ。高温にも負けない、丈夫な高級手袋の仕様が、むしろネトネトと地味に、しかし確実にチーズを奪い去っていくとは、盲点でした……。

 うすうす、困難を予測しつつも、大胆に突き進むチーズ作りに、ペンギンさんの「失敗すると思ってた」というツッコミが。しかし、すかさず反論するこむぎ子さん「わかってたなら対案出してよね」。きっぱりさっくり、1コマで表現される二人の自然体の掛け合いに、失敗エピソードなのに「ふふっ」と笑ってしまいます。


せっかくの高級手袋なのに……

著者さんとペンギンさんの、ツッコミ同士の距離感が見事なひとコマ

塩味、しょうゆ味、イチゴジャム味!? 禁断の青色さけるチーズも登場

 そうそう、私もおうちのキッチンでお料理するときに、細かな温度は測ることなんて、めったにありません。だいたい勘で! だからこむぎ子さんの作り方が心強いです。大ざっぱな感覚でチャレンジしても大丈夫。さけるチーズが完成しています。完成した時のペンギンさんの喜びのお顔を見よ! なんておいしそうなのでしょう。

 そしてここからが手作りさけるチーズの本領発揮。素材のモッツァレラチーズは「シンプルな味→塩水に漬けたら塩味のついたおいしいチーズに→浸透圧で味が浸みる?」という実体験から得た着想を、しょうゆ、めんつゆ、液体だしなど、さまざまな味に付け込んで実証していきます。しょうゆ味のさけるチーズって、絶対においしい組み合わせではないですか!


驚きのおいしさ!? 「売ってる裂けるチーズよりミルキー」という情報にも魅かれます。おいしすぎて、スタンドをお持ちの方のような様相に

 さらにちょっとびっくりなチャレンジ精神あふれる味を楽しめるのも、手作りの良さですね。確実においしいものから、さらに未知の領域を目指して……。例えばイチゴジャム味。なぜイチゴジャムか? という問いの答えは「レアチーズケーキによくベリーソースがのっているから」。納得ですが、ですが……お味は「すっっごいうっっすいいちごのしぼり汁」とのこと。あまりおすすめはできなさそうな雰囲気です。

advertisement

 でも、もう1つチャレンジ精神豊富なレシピとして、青いさけるチーズはいかがでしようか。食用色素を使った青い液に付け込んだら、見事に着色されました。これぞブルーチーズですねえ。盛り付けると、どことなく近未来っぽい気がします。これ、キャラ弁などのアイテムにもいいのでは?


「青いやつ」を必死で止めるペンギンさん。しかしこのあと……

青い! 紫のまだら! こんなさけるチーズが誕生してしまったとは……

イチゴジャムに漬けこむチャレンジっぷり

全12種類、作って楽しい、さけるチーズは貴族の食べ物だった

 巻末には作り方の詳細と、全12種類の漬けこみレシピが掲載されています。「チーズを溶かすときは、器に添わせるようにお湯を注ぐと良い」「調味液の匂いはとてもよく染み込む」など、大胆に見えたチーズ作りが、細やかな観察眼に支えられているのが分かります。実際に作った人ならではのヒントがありがたいです。

 全編が漫画と写真を中心に構成されていて分かりやすいうえ、本文はモノクロコピーでありつつ、表紙やカラーページは印刷所さんに発注して、きれいな画像が再現されています。コピー+要所要所の印刷所さん利用の作りが、本をグレードアップさせていて、ぐぐっと引き込まれる本作りです。

 最後に、こむぎ子さんは、はたと気付いてしまいます。モッツァレラチーズを洗って練って、小さく成形する手作りさけるチーズは、コストも手間暇もかけた高級食材であることを……。でも楽しんで作ること、そして自分好みを追求した味は何よりプライスレス。作り上げたら、優雅につまむ時間を楽しみたいですね。

サークル情報

サークル名:食レポするよ

Twitter:@comgico3

次回参加予定:コミティア120(2017年5月)

今週のシャッツキステ


明けましておめでとうございます。明けましたねー。酉年ですねー。当館きっての美声の持ち主、ゴルゼスも誇らしげです。さてさて冬コミでは、2016年にレビューさせていただいたサークルさんから「同人誌レビューを見たと言う方がサークルに来てくれましたよ」というお話を聞きました。なんといううれしさ! そうなんです。すてきなご本ばかりなので、機会がありましたら、ぜひお手にとって見てくださいませ。そして感想をお聞きできたりすると、とてもとてもうれしいです。本年もどうぞよろしくお願いいたします

著者紹介


司書メイド ミソノ:秋葉原カルチャーカフェ「シャッツキステ」でメイドとしてお給仕する傍ら、とある大きな図書館で司書としても働く“司書メイド”。その一方で、こよなく同人誌を愛し、シャッツキステでも「はじめての同人誌づくり」「こだわりの特殊装丁」の展示イベントを開く。自身でも同人誌を作り、サークル活動歴は「人生の半分を越えた辺りで数えるのをやめました」と語る

関連キーワード

チーズ | 同人誌 | 手作り | ペンギン | 手袋 | 作り方

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. 「飼いきれなくなったからタダで持ってきなよ」と言われ飼育放棄された超大型犬を保護→ 1年後の今は…… 飼い主に聞いた
  2. 大谷翔平、インスタ最新投稿で活躍シーンのハイライト公開 一瞬映る“妻・真美子さんと母・加代子さんの笑顔満開ハイタッチ”に注目
  3. 「ディズニーのそういう所だよ」 1歳息子、初ディズニーで言われた“まさかの一言”は…… キャストの愛ある“神対応”が656万表示
  4. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  5. まるで星空……!! ダイソーの糸を組み合わせ、ひたすら編む→完成したウットリするほど美しい模様に「キュンキュンきます」「夜雪にも見える」
  6. 「ちょっと怖い!!」 ミニトマト“1粒”を土に埋めて1カ月育てたら…… → “予想外の光景”に驚がく 「そうなるとは」
  7. 「とんだ裏切りwww」 整骨院が休業→店舗の張り紙を見たら…… “まさかの理由”にツッコミ殺到 「これは仕方ない」
  8. 「2度とライブ来るな」とファン激怒 星街すいせい、“コンサート演出の紙吹雪”が「3万円で売買されてる」 高値転売が物議
  9. 元プリプリのリーダー、還暦祝いに“高級外車”をドカンと購入! “同車種4代目の機能”をべた褒め「本当にありがたい限り」
  10. 大量のハギレを正方形にカット→つなげていくと…… “ちょっとした工夫”で便利アイテムに大変身! 「どんな小さな布も生き返る」