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うそのない悪役、それが寺島進にしかできない悪役じゃないの 「バイプレイヤーズ」第7話ねとらぼレビュー

「そんなアニキのことわたし、だいだい大好きだ、バカヤロー!」

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 テレビ東京のドラマ24「バイプレイヤーズ ~もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら~」。第7話は「バイプレイヤーと悪役」。なんせ集まっているメンバー、悪役経験者多い。中でも悪役のトップランナー、寺島進さんの話です。

今までのおさらい

 名脇役俳優6人。デフォルメされた個性を元に、本人が本人を演じる形式のドラマです。「七人の侍」撮影のため、3カ月のシェアハウス生活をすることになった、遠藤憲一さん、大杉漣さん、田口トモロヲさん、寺島進さん、松重豊さん、光石研さん。

 だいぶ仲良くなったものの、10年前の自主制作映画「バイプレイヤーズ」の「裏切り疑惑」でみなを嗅ぎ回っていた大杉漣さん。実は彼の酔った時の勘違いだと判明。結果嘘をついてしまった彼は凹みまくり。残り5人との空気はどんどん悪くなっていきます。

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 いつもの楽しい6人の朝食も、険悪ムード。つらい……。そんな中、寺島進さんは別のことで悩んでいました。

悪役を演じるということ

 寺島さんには、保育園児の兄妹のファンがいた。「アニキ」と慕って手紙をいつも送ってくれる。ところが保育園に実際に見に行くと、「悪者と友達」だといじめられ、泣いている。寺島さんは見かねて「おじちゃんもう悪い役やらないから」と、嘘をつきました。

幼いファンのために、悪役をやめようと決意した寺島さん

 今回描かれる寺島さん、心の芯まで「正直」であろうとしています。ファンの子どもたちに対しても、自分の気持ちに対しても、全部本音。だからちょっとでも嘘、心の食い違いがあると、途端に動けない。

 心境はモロに役に出ます。悪役を演じるということは、誰かしらを傷つける可能性を作ることになりかねない。

 大人なら「そういう役だから」って分かるんですけどね。いや、大人でも役のイメージに引っ張られて、色眼鏡をかけてしまうかも。

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うそのない悪役

 悪役をやるやらないでウジウジしている寺島さん。今回ばかりは周囲の人間ほぼ全員が、畳み掛けるように激励します。「アウトレイジ」風に。

松村邦洋(北野武の真似で)「何がうるせえだ、さっさと悪役やれよ、お前の悪役、最高だからよ。だから桔平も口説いてんだろ」
椎名桔平「ガタガタ言ってねえでやれよバカヤロー、その子たちだって見てえに決まってんだろバカヤロウ」
山口祥行「やりゃあいいんだよバカヤロウ!」
本宮泰風「憧れてんだよコノヤロウ」

松村邦洋さんのモノマネもあってコミカルなシーンではあるけれども、こんなに励まされたら泣きそうになる

 このシーンでの、椎名桔平さんの励ましのセリフが本当にグッとくる。悪役・寺島進に惚れ込んでいるのがよくわかる。

椎名「『ソナチネ』なんてさ、たけしさん追っかけて、アメリカまでいって、ヤクザの役やらせてもらったんでしょ? あの人がいなかったら今のオレはいないっていつも言ってるじゃない。だいたいさ、映画デビューも悪役でしょ?「ア・ホーマンス」、松田優作さんの。あれだってさ、チンピラ役でしょ寺さん。だからさ、あんたには悪役の血がドクドクと流れてんだよ」

 北野武作品の常連で、いかついヤクザや極道役が多い寺島さん。やさしい役もやっていますが、きっと日本人の大部分は「悪役・寺島進」のイメージが強いはず。これを「悪役の血」と椎名さんは命名しました。最高の褒め言葉だと思う。むりにやらなくても、悪役になれる天才、ということです。

悪役の仕事が多い椎名さんの激励は、愛に満ちていました

寺島「悪役は、俺の原点だからなー」
椎名「だったらさ、やんなよ自分に正直にさ。いい人やってる寺さんも好きだけど、あんたしかいないでしょ、うそのない悪役ってさ」

 7話の主役が寺島さんだとしたら、椎名さんは彼を全力で引き立てる、今回のバイプレイヤーMVPだと思う。俳優の心からの信頼関係、しびれます。

引き金を引いた日

色々考えてしまって、引き金がひけない

 いざ腹をくくって現場に行ったはいいけれど、役に対してブレーキを踏んでしまって、どうにもうまく演じきれない。悩む寺島さんに、椎名さんは言います。

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椎名桔平「何言ってんのよ寺さん。色々くっつけると芝居が嘘になる。だから裸で役に徹するってのが寺さんの信念じゃなかったの。うそのない悪役。それが寺島進にしかできない悪役じゃないの。見たいんすよオレは。みんなもね」

 ゴテゴテとした装飾をつけるほど、うそくさくなってしまう。シンプルに、感性でどこまで役に近づけるか。寺島さんは悪役にシンクロする才能があるのだと、悪役歴の長い椎名さんは言いたいのでしょう(この寺島スタイルは、特撮回の時に理論だてて自分を役に追い込んでいくトモロヲさんの考え方と逆なので、比較すると面白いです)。

 いざ撮影に挑んだ時の演技が、すごい。銃を撃つとは、人を殺すとはどういうことかを噛み締める。悪役の気持ちに一瞬でなりきった。

 撃ち尽くしたあとも、何度も引き金を引き続ける。この表現こそが寺島さんの「うそのない悪役」だ。

悪役の感情は、繊細な表情と引き金にかけられた指を見れば分かる

かえで「やっぱアニキってすごいんだなー。だって、アニキってすんごい優しいんだよ? なのにお芝居がすんごい上手だから、みーんなだまされてアニキのこと本当に悪い人だと思っちゃうんだよねー。そんなアニキのことわたし、だいだい大好きだ、バカヤロー!」

 幼稚園児が、いじめっ子に叫んだセリフ。演じる人のすごさは、子どもにもちゃんと伝わる。もちろんこれは、寺島さんが誰に対しても、芝居に対しても、正直だから。いじめていた子たちも、いつか寺島さんのすごさを知って、ファンになってくれたらいいな。

子どもたちの目線の高さにあわせてくれるこのシーンだけで、優しさが伝わります

 顔が父親に似ていたからといって寺島さんが出ている「BROTHER」とか「ソナチネ」を見ている幼稚園児って、大分すごいですね。「ファッキンジャップぐらい分かるよコノヤロウ(BROTHERのセリフ)」って言う3歳児。英才教育だ。

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 にしても、ラストどうよ、どうなのよ!

 まあ「七人の侍」の存在についてはうっすら勘付いていた部分ありますが、ジャスミンがパーフェクト悪役だったとは。「胡散臭い」を完璧に演じた彼女、ある意味天才。来週から出ないのかなジャスミン……。

 みんなに信用されなくなった、次の大杉さん回のこと考えると胃が痛い。予告ラストの、松重さんサッカーのほのぼの感に期待します。

(C)「バイプレイヤーズ」製作委員会

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