テレビ東京のドラマ24「バイプレイヤーズ 〜もしも6人の名脇役がシェアハウスで暮らしたら〜」。第3話は「バイプレイヤーとスキャンダル」。
不倫がテーマ。昨年の芸能界は不倫騒動でえらいことになっていただけに、最初から最後までヒヤヒヤしっぱなし。
今までのおさらい
出て来る俳優さんたちのキャラクターをデフォルメしながら、本人を本人が演じるというちょっと変わったドラマ。基本フィクションです。
3カ月のシェアハウス生活をすることになった、遠藤憲一さん、大杉漣さん、田口トモロヲさん、寺島進さん、松重豊さん、光石研さんの6人。全員が50代以上の大御所バイプレイヤー(名脇役俳優)。大杉さんをリーダーに、少しずつ仲良く、でも踏み込みすぎずに共同生活を始めます。
ただ1つ、みんな同じ傷を抱えている。10年前の自主制作映画「バイプレイヤーズ」。みんな熱すぎて大喧嘩。いい思い出とは言い難い。でも大事な記憶でした。
ところがそのフィルムが盗まれた。大杉さんは、家中にカメラを仕掛けて、みんなを監視。裏切り者は誰だ。
誰にだって性欲はある
寺島「やんちゃしたいねー53になっても」
大杉「大丈夫だよ、俺たちもう、たたないもんな」
朝ごはんの時からこの会話。おじさんたちと来たらもう。責任感が強くなり、やんちゃしなくなった(あと身体が……)中年だからこそこんな話で笑えます。
でも当然、50代であろうと性欲はある。女の子は好きだし、エロい動画だって見たい。
光石さんと山口紗弥加さんは、架空のドラマ「W不倫の悲劇」で共演。山口さんは光石さんを、仕事仲間として自宅の夕食に招待しました。ところが山口さんは光石さんに熱視線。お酒の勢いでキス、光石さんにも口移しでワインを飲ませて、そのままベッドへ。
愛妻家の光石さん、不倫の道に転落。
翌朝シェアハウスで週刊文春を読むと、知り合いの滝藤賢一さん不倫現場の写真が。テレビ局で出会った滝藤さん、光石さんの前で号泣。もう他人事ではない。不倫をきっぱりやめようと山口さんに言おうとするも、また流され……。
人間の不倫
いかに不倫が悲劇を起こすか、生々しく描いています。不倫ですっぱ抜かれた役の滝藤さんのシーンがきつい。連ドラに映画2本にCMまでとんでしまう。子ども4人いるのに。
酸いも甘いも見てきた50代バイプレイヤーズ。やっぱり過ちで、今まで積み重ねてきた仕事と信頼全部失うのは、怖いもの。
ただ、人生経験が長いと、視野は広くなっています。
遠藤「昔の俳優ってさ、もっと豪快なエピソードばんばんあったよね」
松重「そうですね、勝新さんとかね」
大杉「昔はさ、女遊びも芸の肥やしって言われたけど、今はそうじゃないからさあ」
「不倫=芸能人は非難を浴びる」のが常ではなかった。
現代の「芸能人の不倫」の重さに、さらに切り込んでいきます。
謝る相手
大杉さんは、劇中で光石さんの悩みを、うっすらわかっていました。核心である山口さんとの不倫までは気づかなかったようですが、女の人がらみで苦しんでいるであろうことまでは勘付いています。
温厚な光石さんが一瞬怒鳴った時に全部悟ったのかもしれません。光石さんと2人きりで話す大杉さんのセリフが、芸能人と不倫の問題についてすごく繊細に考えておられて、本当にステキなので、書き出しておきます。
大杉「三十何年とかやってこれたってのはさ、自分のアレもあるんだろうけど、やっぱり支えっていうかさ、家族だったりさ、かみさんだったり、あとはスタッフだったり共演者だったり、いろんな方の支えがあってさ。まあそれはすごい感謝の気持ちがないといけないなと。まあ、不倫じゃないけどさ。愛人だったり不倫だったりって、割と快楽に走り始めてね、男として面白いなと思うんだけど。まあ、リスクもあるしね」
大杉さんの、責めるでもなく、たしなめるでもなく、あくまでも持論として光石さんに不倫問題を話すシーン。ベテラン俳優ならではの、重みのあるセリフでした。
不倫をしてしまう心理は、分からないわけじゃない。けれども、目を合わせられなくなるような罪悪感を抱く相手、頭にすぐ浮かぶはず。
家族、妻や子ども。一緒に働くスタッフや共演者。信頼してくれていた人たちに、嘘をついてしまった。「誠実じゃない人」として信用を失う。それが一番怖い。
裏切られた時の気持ち
光石さんは文春砲をくらわなかった。シェアハウスのみんなにも最後までバレていない。
けれども不倫相手だった山口さんからは二股かけられる側に。だまされたことを知り、心底痛い目にあいました。この瞬間に、はじめて本当の意味で、自分が家族と仲間を傷つけた、という事態を理解したのでしょう。
清算すべく家族の元にすぐに向かい、全部話した様子。テコンドーでボコボコにされていましたが、奥さんは外に言わなかったし、離婚もしていない。家族の問題として、全部飲み込んで終了。これってものすごくありがたい、感謝してもしきれない役者を「支える」家族。もう二度と裏切れないよ。
光石さんが嗚咽しながら泣くシーンは、理由までは言わない。みんなも無理して言わせようとはしない。でも仲間には十分すぎるほど伝わりました。
傷つきつつもまずまっさきにみんなに「ごめん」。感情のダムが決壊して、罪悪感の涙がだだ漏れ。俳優・光石研さんの演技のすごみに圧倒される場面です。
大杉「女だったんだろうね、頻繁に連絡取り合ってたの」「みんなのためにあんなに一生懸命泣けるんだもんな」
信用は一度失ってしまうと取り戻すのが大変。でも、今まで積み重ねてきた努力は絶対無駄じゃない。本気の感情をあらわにしたときにはちゃんと伝わる。大杉さんと松重さんは、今までの彼の歩みを知っているからこそ、仲間として信じることにしました。
もしこれで、のほほんと不倫を続けて、文春砲くらって、映画がおじゃんになったら。みんなにめちゃくちゃ怒られ、絶縁状態だったかもしれない。でもちゃんと真実の気持ちを見せてくれたのなら、信じたい。これが中年の男たちの信頼関係。
ウミガメの貴重な産卵シーン
今回なにげにいいキャラを出していたのが、遠藤憲一さん。
食い入るようにテレビのウミガメの産卵シーンを見ていました。涙していました。
朝食の時、大杉さんがふざけてジャスミンに「この6人の中で誰がいい?」と言い出した時。遠藤さんは「やめようよそういうこと」とすぐ止めに入りました。
滝藤さんがスクープされた時も、山口さんが載った時も、まっさきに週刊文春を読んでいたのが遠藤さんでした。
公式HPのキャラ紹介には、こうあります。
男っぽくコワモテだが、繊細で細やかな感性を持ち、心配性である。日常生活でも仕事の上でも、実は意外と右往左往する。
とっても繊細。いろんなことを気にする。今回の「女遊び」の件も、1話で女の子に手を出すなと光石さんを叱っていたのが、遠藤さんでした。
今回は遠藤さんと大杉さんが目立ちましたが、それぞれ全員の性格がシェアハウスでの日常の中で、細かく表現されているのがこのドラマの楽しいところ。別々な行動を取っている時、ひとりひとり見ると性格を生かした演技をこまめに入れているので、繰り返し見てチェックするのをオススメします。
にしても、今回のラストで突然寺島さんが、大杉さんの監視部屋に木刀を持って乱入。正直怖かった……Vシネのワンシーンみたいだった。
次週は田口トモロヲさんと寺島進さんの話になりそう。どんどんバレていくとなると、監視の話はどうなっていくんだろう。大杉さん誰かに怒られて仲間割れしちゃったりしないのかしら。
(たまごまご)
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