謎の役職「会長」はいつも何をしてるの? 留年した東大生が聞いてきた
東京大学2年生・高野りょーすけがライフネット生命保険の出口会長に会ってきました。
はじめまして。東京大学2年生の、高野りょーすけと申します。
すごく個人的なことですが、
大学で留年しました。
将来の目標や人生設計が皆無なぼくですが、まさか留年するとは思っておらず、まわりが就活で知り合った女子大生とパンパンパンパンパンパンパンパンしている中(手拍子でしょうか)、ぼくは家でひとりさみしくYouTubeを見て暮らしています。YouTuberになりたい。
冗談はさておき……(留年はホントですが)。
このまま就活し、会社に入った先に待ち受けるのは、大きなピラミッド社会……。そのピラミッドの頂点に君臨する人物、つまり会長さんは、どんな暮らしをしているのでしょう……。
留年して死ぬほど時間が余っているので、気になる会長さんの実態を確かめにいこうと思います。
もしかしたら内定のひとつやふたつ、ついでに5万円ぐらいならくれるかもしれません。
おジャマしたのはライフネット生命保険さん。
難しいことはよくわかりませんが、保険会社の会長さんなら笑っちゃうぐらいお金をもってるんじゃないでしょうか。たぶん。
ライフネット生命保険株式会社
出口治明会長(68歳)
1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業。1972年、日本生命保険相互会社入社。
2006年、ネットライフ企画株式会社を設立。2008年、現社名に変更。
著書:『世界一子どもを育てやすい国にしよう』出口治明・駒崎弘樹 著(ウェッジ) など
というわけでですね、今回はなにかと気になる会長さんに、日々の暮らしぶりをお聞きしに参りました。よろしくお願い致します。
なんでも聞いてください。
早速ですが、会長さんの1日はどのような感じでしょうか?
朝起きるのは6時ぐらいですね。それから新聞を3つ読んで、朝ごはん食べて、シャワーを浴びます。
やっぱり、お手伝いさんが朝食をつくるんですか?
お手伝いさんはいないんです。朝はだいたい、パン1枚とコーヒーですね。
会長さんなのに普通ですね……。通勤は、やっぱりタクシーで?
いえ、地下鉄です。電車の方が時間も正確で、本も読みやすいですから。
会社に着いてからは、今日の例でいうと役員との打ち合わせでした。顔合わせて朝礼をやって、みんなでこうやっていこうや、と。
昼食はどうですか? やっぱり、1食5000円ぐらいするランチを……。
いえ、立ち食いそばが好きですね。
会社の近くのワンコイン弁当もよく食べます。おいしいし机で仕事しながら食べられますから。
イメージしていた会長さんとちがうような……。もっとこう、社内ピラミッドの頂点としてですね、お金にガツガツしてるといいますか……。
あくまで僕はベンチャー企業の会長ですし、貧乏ですから。ムダなことにお金は使えませんし、住んでるマンションも築50年以上のところですよ。
そうだったんですね。本気でお願いすれば、5万円ぐらいくれるんじゃないかなと思ったので……。
そんなお金ないです。
そのほかにはどんなお仕事があるんですか。
午後はこのように取材を受けたり、相談に来た社員と話したり。
夜は講演に行くことが多いです。10人以上集めていただければ、どこでもお話させていただいてるんです。地方へ行くことも多いですよ。
なんと……気軽に会長さんを呼べるんですか。
はい。ライフネットの宣伝にもなりますから。
会長といっても僕は小さい八百屋の店主みたいなものですよ。ベンチャー企業ですから会長でも自分の足を動かすのは当然です。銀行の頭取やホテル会社の社長さんなら、専用の運転手さんがいたり取引先の人とご飯を食べたりと、みなさんがイメージされる生活なんでしょうね。
会長さん、時計はつけていないんですね。
時計はね、30歳ぐらいの時に捨てました。
えっ、どうしてです?
待ち合わせに相手が遅れたら、イライラするじゃないですか。これって深く考えたら、時計があるからなんですよ。
時計を捨てると、街や歩いている人に目がいくのですごく楽しくなって。時間感覚も優れていきます。
確かに、視野が広くなるような気がしますね。
ええ。捨てたらいいですよ、あなたの時計も。
はい。あとで捨てます。
話が脱線しますが、そもそも、なぜ会社を作ろうと?
日本生命のあと、その子会社に勤めていたんですけど、ある日、友人が電話をかけてきたんです。「保険について知りたがってる若い人がいるから教えたってくれや」と。誘いはだいたい断らない人間なので、その人に会って保険の話を10分ぐらいしまして。そしたら、「出口さん、保険にめっちゃ詳しいですね」と。「保険の会社つくりませんか」って言われたんです。
出会って10分なのにですか?
はい。初対面でしたけど感じの良い人だったので、直感で「いいですよ」と返してしまったんです。
直感で会社つくるって、カッコイイですね。
正直なところ、保険に入る意味ってあるんですか?
めっちゃ簡単な話ですよ。ご自身に、めっちゃステキなガールフレンドがいると考えましょう。
はい。いたことありませんが。
めっちゃステキで、君のことがものすごい好きやと。結婚することに決めたら、彼女が「ひとつだけ聞いてほしいことがある。わたしは一人っ子や。お父さんもお母さんも保険・年金に入ってへんので、病気になったら面倒みてや」と。どうします?
そうですね……。
ちょっとビビりません? お父さんもお母さんも、国民保険にもなんにも入ってないんですよ。仕事がなくなって病気になったら、全部払わないといけないんです。
……怖いですね。
10割全部を負担するんです。
不安ですね。
別れたくないですよね、彼女と。
絶対に。
保険、入りますか?
はい。
会長に悩みをぶつけよう
せっかく会長さんにお会いできたので、いろいろ悩みを相談してもいいでしょうか?
はい。どんな悩みでも。
じつはぼく、大学で留年してまして……。
そうでしたか。僕もしましたよ、留年。
本当ですか?
当時の大学の学費は月1000円ですし、図書館には本が山のようにあるじゃないですか。「こんなに楽しい所はない、8年ぐらいは大学生でいたいなあ」と思いまして。そのことを両親に伝えたら、えらい怒られましたけど。
えっと、でしょうね。
留年ぐらい大丈夫ですよ。まだまだ若いですし、大したことじゃないですから。
そうですか……。おお…………。なんか、希望が出てきました。
はい。あと3回ぐらい、留年したらいいんですよ。
就活についても悩んでいます。
めっちゃ簡単です。ガールフレンドと同じなんで、まずはなにかしらご縁があった会社に行ってみてください。
はい。
それで、受付のお姉さんたちがニコニコしてたらいいところです。あとは数字。10年前と比べて、伸びてたらええやと。
そんなに大まかに決めていいんですか?
例えばね、ガールフレンドを選ぶときにですよ、「身長はこの範囲で、体重はこのぐらい、髪形はこうで」みたいに細かくチェックします? 感じがよさそうだからメアド交換しようやとか、そんなもんですよね。
でも……やっぱりみんな、ベストな選択がしたいというか……。
例えばですよ、ガールフレンドが欲しいと思ったときに、東京にある女子大を全部チェックして、「皇后陛下が出られた聖心女子大がいいな」と決めたとして、ガールフレンドができるまで聖心の校門前でずっと待つのって、どうですか?
……適切ではない気がします。
人生は出会いなんで、声をかけられたらその企業にいってみて、数字と相性が良かったら仕事してみると。2、3年働いて、やっぱりいいところだなってなったらそこでいいし、なんかちゃうなとなったら、次を探せばいいだけの話ですよ。そのころには力もついているでしょうから。
パワハラや残業の問題はどうでしょうか?
確かに、日本の大企業は家庭ではできないことを平気でやっています。この前も東京駅を歩いてたら、「名刺をください」と言ってきたサラリーマンがいまして。「なんで?」と聞いたら、上司に「名刺を100枚もらうまで帰ってくるな」と言われたんだそうです。
そういうのって本当にあったんだ……。
これなんてもう、ガールフレンドに同じこと言ったらどうなるかって話ですよね。「君は根性ないから名刺もらってくるまで家に来るな」ってことです。ガールフレンドにできないことを会社で平気でやる、これは基本的に間違ってるんじゃないですかね。
……そう思いますが、あの、さっきからガールフレンドで例えすぎじゃないです?
ぼくがそうなんですけど、大学生の多くの人が持っている悩みとして、やりたいことが見つからなくて、将来が不安というのがあると思うんです。最近思うのが、周りの方たちを見渡すとすごい方たちばかりで、ぼくみたいな虫ケラはどうすればいいんだろうという。
なにも心配ないじゃないですか。
でもやっぱり……。
だって、この国って、若い人からみたらラッキーなんです。例えば、僕ら団塊世代は一学年200万人以上いますよね。ということは、この国はほっといても、2030年には800万から900万人分の労働力が足りなくなるわけですから、若い人が食いっぱぐれて死ぬということはまったくないんです。どんどん労働力が足りなくなるというのは、数字で明らかですから。
……。
やりたいことが明確な人は、やればいいと思います。錦織選手は小さい頃からテニスがうまかった。本田選手はサッカー選手になるためにずっと努力してきた。でも、彼らみたいにやりたいことが明確に分かっている人なんて、めちゃめちゃ少ないはずなんです。
昔話をしましょうか。
昔話?
ある村役場に、男気あるお兄ちゃんがいました。いわゆる「任侠」というやつですね。お金持ちには高い料金をふっかけ、困っている人にはお金を分けてあげていた。
それを見て気に入った町の大親分が、自分の家につれてきて、たくさん酒を飲ませて食わせたんですよ。で、自分のお嬢さんをつれてきて「かわいいだろう」と。「かわいいです」と答えたら、「じゃあ結婚せい」というわけです。「もし断ったらどうなりますか」と聞いたら、「お前は酒飲んで、うちのかわいい娘の顔も見た。それで断るようやったら、この町で五体満足のまま仕事できるとは思われへんやろな」と。
こう言われたらしょうがない。流れのまま結婚したら、大親分が死んでしまい、後を継ぐしかなくなった。しばらくしたら皇帝も亡くなり、国が乱れた。あちこち喧嘩をしているうちに、とうとう、新しい王朝をこのお兄ちゃんが作ってしまった。
……前漢の初代皇帝になった劉邦の有名な話です。ほとんどが偶然でできています。だから若い人も最初から「王朝を作ろう」と構える必要はないんですよ。
そういう考え方があったんですね……。
若い人にはこれから先、いろんな出会いがあるはずなんです。出会って10分の人と仕事のパートナーになったり、王朝を開いたり。僕だって自分が会社をおこすなんて思ってもいませんでしたが、今こうして140人の社員で100億円の小さい会社で生きていられるのは、そこそこ適応できたからなんだと思ってます。
賢いものや強いものが生き残るんじゃないよと。世の中はなにが起こるか分からないから、変化に対応したものが生き残るんやでと。不安がることは、ないですよ。
……ありがとうございます。
出口会長のお悩み相談サイトがオープンしました
4月に69歳のお誕生日を迎える、出口会長。
大学で留年して迷走中のぼくだったけれど、会長さんとお話して、これから進むべき方向……出口が見つかったかもしれない。
さて……。
……そんな、経験豊富な会長さんに相談できる、夢のようなサイトができました。
「歴史・教養」「仕事の悩み」「お金の話」「生きる上での悩みなんでも」「出口さんに、ちょっと聞いてみたいこと」の5つのテーマで質問を募集しています。恋でも仕事でも、なにかお悩みがある方は、気軽に出口会長に相談されてみてはいかがでしょうか。ガールフレンドなどで例えた親しみやすい出口会長の言葉が解決の糸口となり、皆さんにとっての出口が見つかるかもしれません。
そういえば僕は若い人たちと飲み会でお話するのが好きなんですが、今度高野さんも来ますか? 女性も来ますよ。
お願いします。
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