やしろあずきの調査―― 中二病って本当に中学2年生で発症するの? 現役中学教師に聞いてみた!(後編)(3/4 ページ)
ついに火を噴くやしろあずきの中二病時代の遺物。
先生が見てきた「真性」の方々
「いやぁ、僕と同じレベルの中二病の方々は普通にいる、というお話が聞けて本当に良かったです。というか前にTwitterで質問したときもいたもんね! 眼帯して学校行ってる人!! よかったぁ……」
「意味もなく眼帯をして学校にくる子、私も見たことがありますね」
「うーん、眼帯は真性にとっては避けて通れない道なのかな……そうだ先生、僕と同じレベルの子たちって具体的にどんな感じだったんですか? めちゃくちゃ気になるので個人を特定できない範囲で教えてほしいんですけど……」
「あ、いいですよ……まず記憶に残ってるのが『全身ボタン君』かな。彼も眼帯ユーザーでした」
「眼帯ユーザー。その時点で仲間ですね。で、その全身ボタンっていうのはどういう……」
「はい、学ランのありとあらゆる所に他の中学のボタンを付けてるんですよ。普通に呉服店とかで買ったやつだと思うんですけど、本人は俺が倒した相手から取った戦利品だって言い張ってました。パソコン研究会に入ってた全然ケンカとかするタイプじゃない子なんですが……」
「痛い」
「最終的にはヤンキーに集めたボタンを全て奪われていました」
「ぜ、全身ボタン君――――――――ッ!!!!」
「あとは突然ロン毛君とか。ある日突然母親のウィッグをかぶってサングラスをかけてギターケースをしょって登校してきたんですよね。本人はロン毛がキマってると思ってたんでしょうけど、母親のウィッグなんで全然キマってませんでした」
「一晩で髪の毛をバッサリ切って学校来る奴はいたけど、一晩でめちゃくちゃ伸ばして来る奴は見たことがない」
「あとギターケースの中には鍵盤ハーモニカが入ってました」
「何でだよ」
「結局、この突然ロン毛君もヤンキーに鍵盤ハーモニカを折られて泣いてしまいましたね」
「先生の学校普通に治安悪くないですか?」
もし自分の子ども・友達が中二病になったら?
「僕と同じレベルの中二病罹患者も結構いるということが分かったわけですが……その本人はとても幸せな気持ちでしょうから良いですが、その周りの友達や家族は結構苦労しますよね?」
「やしろさんの家族はどうだったんですか? 眼帯をして学校に行って眼帯をして家に帰ってたりしたんですよね?」
「母親はなんか……最終的には顔を見て大きなため息をつくだけになってましたね……思い出して辛くなってきた……」
「友達は?」
「何も思い出せません」
「語りたくないぐらい嫌な思い出があったことはよく分かりました」
「いや……まあその通りなんですが……真性に限らず、中二病って正常な人たちからみるとちょっと奇抜というか、変に見えちゃうじゃないですか。もし自分の家族や、親しい友達が突然中二病になっちゃったらどう対処するのが正しんですか? 治す方法とかあるんですか?」
「うーん、最初に言っておくと、別に無理やり治す必要はないと思います。もちろん、あまりに妄信的な状態に陥っていない限り自分が考えてること、していることの恥ずかしさや矛盾点を説明してあげればすぐ治すことだって可能ですが……前に言った通り、中二病は思春期に誰もが通る道であり、立派な人生経験の一つであるため、あまりに酷くない場合はもう好きにやらせてやれば良いんじゃないかと」
「なるほど……立派な人生経験か……じゃあ基本、放置が良いってことですか?」
「家族の場合、良くない方向にヒートアップしていったら止めてあげるのが一番良いと思います。中二病もこじらせすぎると他人を不用意に傷つけたり、人間関係を悪化させてしまうこともありえるので……ヤンキー型もそうだし、大人しめな孤立型もあまりに人との間に壁を作りすぎるとイジメにつながって、不登校になってしまう事例などもあるので」
「子どもの中二病をちゃんと分析、観察してあげることが重要なんですね」
「はい。中二病をちゃんと制御できているか、中二病に完全に心が飲み込まていないかをしっかりと観察してあげることが重要です。心のどこか奥底で『これは恥ずかしいことだ』って分かってさえいれば、面倒なタイプにはならなくて済みます」
「中学生男子は皆、鎖とか眼帯が好きなハズなのに実際にそれを付けて街に出ないのは心のどこか奥底で『これは恥ずかしいことだ』って分かっていたからなのか……」
「そうですね。やしろさんは思ってなかったから真性になってしまったんです。あのころ、自分のことを格好良いと思ってましたよね?」
「世界一格好良いと思ってました…………」
「……あ、友達の場合はどうすればいいんでしょうか? 例えば自分がめちゃくちゃ仲良かったクラスメイトが突然マントに眼帯姿で学校に来て『俺は堕天使だ』とか言い始めたら……」
「いや、もうノってあげればいいんじゃないでしょうか。だって面白いじゃないですか」
「そういえば俺が眼帯で学校来たときノってくれた友達もいました。そっか……あれは面白がられてたのか…………」
「昨日まで普通だった友達が眼帯つけて堕天使になって登校してくるの、どう考えても面白いでしょ」
「悔しいけど超面白いです」
「まあ、その真性の友達を見ながら『フッ……おこちゃまだな……』とか言っちゃってる友達も立派な中二病かもしれませんが」
「それを見てからかってるヤンキーも中二病ですしね……」
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