コラム

なぜ人は支払ってしまうのか? アダルトサイトの請求トラブル、その巧妙な手口と対処法(1/2 ページ)

「自分は大丈夫」という人ほど危ない。

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 ――無料だと思ってアダルトサイトを見ていたら、突然、請求画面が表示された。

 このような「アダルトサイト」のトラブルは、国民生活センターによれば5年連続で相談件数1位となっています。今、消費生活相談全体の約10%がアダルトサイトに関するトラブルなのです。まさに国民的トラブルといえるでしょう。

 筆者の周囲には「絶対大丈夫なアダルトサイトの見分け方を知ってる」なんて言ってる人がいますが、そんな人ほど大丈夫じゃないことが多いのです。なんとなく「無視すればいいんだろー」ぐらいに思っているかもしれませんが、実際にそのトラブルを目の前にしたときに冷静に対応できるでしょうか。実は、冷静に対処できないように巧妙に仕組まれているのです。

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5年連続1位です(国民生活センターより)

若い男性だけじゃない……女性・高齢者にも多い相談

 アダルトサイトの相談がどれほど多いのかは年代別統計でそのすごさが分かります。全国の消費生活センター等に寄せられる相談の2015年度の統計を見ると、「アダルト情報サイト」のトラブルは20歳未満男性で1位、20歳代男性で1位、30歳代男性で1位、40歳代男性でも1位、っていうか、50歳代、60歳以上の男性でも1位で、つまり全世代で1位です。

男性・年代別の相談が多い商品・サービス
男性 1位 2位 3位
20歳未満 アダルト情報サイト オンラインゲーム デジタルコンテンツ(全般)
20歳代 アダルト情報サイト 賃貸アパート フリーローン・サラ金
30歳代 アダルト情報サイト 賃貸アパート フリーローン・サラ金
40歳代 アダルト情報サイト デジタルコンテンツ(全般) フリーローン・サラ金
50歳代 アダルト情報サイト デジタルコンテンツ(全般) フリーローン・サラ金
60歳以上 アダルト情報サイト デジタルコンテンツ(全般) 光ファイバー
国民生活センター公表資料より

 男ってのはアダルトサイト好きだなーなんて思ってると、20歳未満女性でも1位で、さらに20歳代、30歳代、40歳代女性でも1位です。

女性・年代別の相談が多い商品・サービス
女性 1位 2位 3位
20歳未満 アダルト情報サイト 他の健康食品 デジタルコンテンツ(全般)
20歳代 アダルト情報サイト 賃貸アパート デジタルコンテンツ(全般)
30歳代 アダルト情報サイト デジタルコンテンツ(全般) 賃貸アパート
40歳代 アダルト情報サイト デジタルコンテンツ(全般) 賃貸アパート
50歳代 デジタルコンテンツ(全般) アダルト情報サイト 商品一般
60歳以上 商品一般 デジタルコンテンツ(全般) 相談その他
国民生活センター公表資料より

 これはもうスケベな一部の人のトラブルではありません。だから、トラブルにあったからといって、そんなに恥ずかしいものでもありません。

大事なのは「連絡しない」「払わない」「188に相談する」

 アダルトサイトのトラブルで、とにかく、覚えておいて欲しい対処法はこの3つです。

  • 相手に連絡しない
  • お金を払わない
  • 消費生活センターに相談する(電話番号188(いやや!))

 請求画面が表示されたけれど、相手に連絡も取ってないし、お金も払っていないという状態で相談してもらえると、消費生活センターの相談員も安心します。相手に連絡もしていない段階で相談してくれれば、おおむね被害ゼロで解決できるのです(パソコンのリカバリー対応が必要などはあるかもしれませんが)。

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 もちろん、連絡を取っちゃったあと、お金を支払ったあとでも、188に相談しましょう。

電話番号は188(いやや!)(国民生活センターより)

実際に実行するのは難しい……だから、訓練をしよう

 「連絡しない」「払わない」「188に相談」とお願いすれば、よい子のみんなは勢いよく「分かりましたー!」と返事をしてくれるでしょう。

 けれども、この3つはとても簡単なように見えて、実際にトラブルに遭遇したときにできるかというと意外と難しいのです。なぜなら「連絡したくなる」「急いで払いたくなる」「消費生活センター以外に相談したくなる」ように巧妙に仕組まれているからです。

 いざというときにトラブルを回避するためには、避難訓練ならぬ回避訓練があるとよいのです。これから「アイテー・メデア君」にトラブルにあってもらいますので、一緒に脳内シミュレーションで訓練をしましょう。

アイテー君です よろしく

不安になっても「業者に連絡しないで!」

 ある日、アイテー君は、スマートフォンでネットニュースを見ていました。リンクをたどっていった記事の中に、気になる動画が埋め込んでありました。ちょっといかがわしいタイトルに興味津々なアイテー君。動画の「再生ボタン」を押しました。

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夫とのほにゃほにゃな動画を再生(IPAより)

 すると、年齢を確認するボタンが表示されました。アイテー君は特に考えずに「次へ」を押しました。すると、シャッター音がして登録完了というメッセージが表示され、請求料金が9万9800円と表示されました。アイテー君はびっくりです。心臓の高鳴りが止まりません。

 「ぼく、なんか、やっちゃいましたかああああああああああああああ」

9万9800円払えだと?!

 どうしたら良いのか、分からないアイテー君。他に押すボタンもないので、OKボタンを押しました。すると画面が切り替わり「登録完了」のページが表示されました。「お客さまの端末情報は安全に保存されました」と書いてあります。大変、お金を払わないと怖い人が取り立てに来るんじゃないかという妄想がアイテー君の脳内を駆けめぐります。

誤作動登録の方、退会希望の方と書いてある……

 画面には「誤作動登録の方」「退会希望の方」という文字があります。「そうだよ。僕は誤操作だ。この請求は何かの間違いなんだ」と考えたアイテー君。業者に説明して、請求をなかったことにしてもらおうと思います。「誤作動登録の方」を押して、表示された電話番号へ電話をしました。

 「きっと間違いだと説明すれば、払わなくて大丈夫なはず……」

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不安ながらも電話をするアイテー君

 ――気が動転したアイテー君は業者に電話をしてしまいました。

 このように、まずは不安をあおり、おもわず業者に連絡を取ってしまうように仕組まれているのです。

 サイトデザインそのものも何となく不安をあおる雰囲気ですが、スマートフォンの個体識別番号が表示されたり、シャッター音がしたり、「個人情報取得中」という画面が表示されたりなど、あたかも業者がスマートフォン内から個人情報を取得したように見せかけてきます。

 しかし、実はこの時点では個人情報は相手に伝わっていません。電話やメールで業者と連絡を取ることで相手に電話番号などを知らせてしまっているのです。シャッター音は鳴っているだけで写真を撮られているわけでもなく、「個人情報取得中」というのもそういう画面を表示させているだけだったりします。

 アイテー君が業者に電話をしたために、相手に電話番号がばれてしまいました。

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早く終わらせたい……お金を払おうとするアイテー君

 さて、業者に電話をしたアイテー君。電話に出た担当者に「誤操作なので解約したい」と伝えます。すると「申し込んでしまったのでキャンセルはできない。明日の14時までにコンビニで支払わないと25万円になる。払わなければ法的措置に出ます。職場にも知らせますよ」と言われてしまいました。アイテー君、もう泣きたくて仕方ありません。

 ちゃんと確認しなかった僕が悪いんだ。これ以上この業者とも関わりたくなくし、勉強代と思って払ってしまおうか……と、アイテー君は悩みます。

払えば、楽になるのかな

 ――相手に連絡を取っても、「払わなくていいよ」と言ってはくれません。

 相談事例をみると、結局、解約等が認められることもなく、あらためて支払いを迫られています。さらにこの電話で詳細な個人情報を聞き出されてしまうこともあります。そのため、電話をすることで余計に不安にさせられてしまいます。

 支払ったとしても、またさらに追加で請求されるというケースもあります。支払ったからといって恐怖から解放されることはありません。

 アダルトサイトのトラブルは「とにかく支払わない」が大事です。

ネットで調べた相談窓口が、公的機関ではないことも

 怖くて仕方なくなっている、アイテー君。友人のアンサーちゃんに相談をしました。アンサーちゃんはいつも何でも教えてくれる頼りになるお友達です。

 「アンサーちゃん! どうしよう! 僕、もう終わりだよ……」

 なんとも弱気なアイテー君です。

 「相手は、僕の顔写真も持っているし、電話番号も知ってる。住所も名前もきっと、簡単に調べられるんだ。職場にも連絡するって言ってたから、もう職場もばれてるんだ。99800円で、僕の人生が終わらないで済むなら、安いと思う。だから払ってしまいたい」

完全にどん底気分のアイテー君

 話を聞いていたアンサーちゃん。少し考えると、

 「消費生活センターに相談しようか」

 と言います。アイテー君はぼうぜんとしています。まったく思い付いていなかったようです。

 「話を聞いていると、それって本当に払わなくちゃいけないお金か微妙じゃない? それに、そんな簡単にスマートフォンから情報って漏れるもんじゃないと思うんだよね。払ったら、カモリストに入れられちゃうかもよ。とりあえず、お金を払う前に、本当に払うべき請求か消費生活センターというプロに見極めてもらおうよ

 「なるほど!」と思ったアイテー君。早速インターネットで「消費者センター」と検索して、表示されたページの「無料相談」に電話をします。「スピード解決」なんて書いてあって、頼もしい限りです。

アイテー君、消費生活センターを検索したが……

 「ちょっと待って! そのページ、本物の消費生活センターじゃない!」

 アンサーちゃんが大きな声を張り上げました。

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