伝統を守りつつ変化する――ディズニー観が変わるイベント「D23 Expo 2017」を見てきた(3/4 ページ)
「スター・ウォーズ」の新エリアに波紋を呼んだ「カリブの海賊」の変更、変化を続けるディズニーをイベント「D23 Expo 2017」で見てきました。
マニアがこの変更に怒っていたのは、いくつかの理由があります。まず1つは、このアトラクションがウォルト・ディズニー氏本人が手掛けた作品であること。もう1つも同様に、このアトラクションを手掛けたマーク・デイビス氏というイマジニアが作ったシーンであること。本家カリブの海賊はオープンから50周年を迎えたばかりで、そのような「伝統」を変えることに大きな反発がありました。似たような反応は東京ディズニーシーでも、アトラクション「ストームライダー」終了時に発生していたりもします。
この件に関して、大変興味深いコメントがありました。D23 Expo 2017ではやや小さめの部屋で、クリエイターや関係者を集めてのパネルディスカッションも開催されていて、初日に「Pirates of the Caribbean: 50 Years of Swashbuckling Adventures in Disney Parks」という講演が開催されていました。その中には、ウォルト・ディズニー氏と一緒に働いていた、イマジニアの生ける伝説ともいえる重鎮、マーティ・スクラー氏が登壇していました。モデレーターが「50年の間には変化が付きもので……」と発したところ、会場の半分がブーイング、半分が小さめの拍手という、まさに上記のオークションシーン変更に対する、マニアな来場者の率直な反応が現れていました。
この変化について、マーティ・スクラー氏が著書『ディズニー 夢の王国をつくる: 夢は実現する』の中でも触れていた、ディズニーランドオープン当日の様子をメディアがたたいたことに対するウォルトの反応を引用します。ウォルトはディズニーランドが変化し続けるものだと考えていて、「オーケー分かった。では修正しよう」と前向きに捉えていたとスクラー氏はいいます。ディズニーランドのアトラクションは時代とともに変わるべきであり、多くのイマジニアが今もそのウォルトの考え方に沿って動いているとコメントしました。「ウォルトもこの変化をポジティブに捉えるだろう――」。このひと言には、会場内も大拍手で応えます。
日本に限らず、ディズニーのアトラクションがクローズする、制度が変わる、なにかが変わると、マニアは「ウォルトの意志に反する!」的な反応をすることがあります。しかし、ウォルトとともに生きた伝説のイマジニアがこうコメントすると、もうそんなことは言えないなあと思いました。ウォルト・ディズニーの言葉とされているものの多くはこのマーティ・スクラー氏によるスクリプトとされています。それだけに、今回の騒動をまとめるかのようなひと言には脱帽です。
マーティ・スクラー氏は「伝統を大切に――ただし、変化はすばらしい力学を生む」という言葉を残しました。残念ながら、D23 Expo 2017が終了した直後、2017年7月27日に83歳でこの世を去りました。ディズニーマニアとして、もっとお話を聞いていたかった方の1人です。
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