チート系や「俺TUEEEE」系は食傷気味? 「日本でも読まれてほしい」台湾ライトノベル事情を聞いた(1/2 ページ)
意外と知らない台湾のオタク事情。
台湾のライトノベルを日本にも広めるべく、翻訳版を小説投稿サイト「小説家になろう」に投稿するなど、布教活動を続けている原子アトムさんという人がいます。
原子さんは8月、署名サイト「Change.org」を活用し、台湾のオリジナルラノベ『在坐寫輕小説的各位全都有病』(ラノベを書くやつは全員イカれてる)の出版を日本の出版社に求める署名活動を呼びかけていました。しかし、700人以上の署名を集めることに成功したものの、その努力もむなしく、出版社からは「海外作品の翻訳出版をする予定はない」と、取り合ってもらえませんでした。
日本で台湾のラノベを普及させるにはどうすれば良いのか? そもそも台湾で流行ってるラノベってどんな作品なの? 原子さんと台湾の「尖端出版」編集者に取材しました。
※編集部注:一部固有名詞の簡体字を常用漢字に置き換えて表記しています。
署名活動発起人・原子アトム&台湾ラノベ編集者インタビュー
――Change.orgでの署名活動の結果、残念でしたね……。今回はなぜ「GA文庫」に絞って出版を持ちかけたんですか。
原子 今回の運動はGA文庫と尖端出版との間に作家間の交流がみられたことがきっかけでした。今後はそういった関係性がなくとも、何らかの形で台湾のサブカルチャーに関心を示すレーベル/出版社があれば、同様の働きかけを試みていきたいです。
あらすじ:至高のラノベを追及する宇宙人女帝の命令により、「より面白い作品を書かなければ死」という極限状態に突き落とされた高校生、柳天雲(リュウ・ティエンユン)。学内で最高のラノベを書き上げ、他の6つのライバル校を蹴散らし生き残ることはできるのか!?
――原子さんは「小説家になろう」で台湾のライトノベルを日本語に翻訳する活動をされていますが、こちらのきっかけは?
原子 もともと中国語学習の一環として台湾の電子掲示板をのぞいていたんですが、その中で話題になっていた唖鳴先生の『有五個姉姉的我就註定要單身了阿』(5人の姉をもつ僕は独り身が運命づけられているんだ)という作品の1巻を翻訳してみたんです。それをファンレターのつもりで出版元の尖端出版に郵送したところ、同作品の担当編集者である陳善清さんと知り合いました。その後、陳さんとやりとりをする中で、実験的に「小説家になろう」で原稿を公開してみよう、という話になった次第です。
あらすじ:台湾で暮らす普通の高校生・李狂龍には2つの悩みがあった。ひとつは父親からつけられた狂龍というDQNネーム、そしてもうひとつは“病的なまでのブラコン”を発症している5人の姉の存在……。主人公と女子の接触を防ぐため、学校中を巻き込んだ姉たちによる「妨害工作」が幕を開ける。
――なるほど。ちなみに、そもそも日本のライトノベルはいつごろから台湾で読まれているのでしょうか?
原子 その辺は現地で見てきている陳さんに聞いたほうが正確かもしれません。
陳 台湾では2000年ごろから(日本の)ライトノベルの知名度が高まっていきました。日本と異なり、台湾のオリジナルライトノベル作品の読者は大部分が女性で、作風も女性向けに偏っていました。ただ近年になって、男性向けのオリジナルライトノベル作品の出版も増え、男性向け市場も徐々に成長しています。
――台湾で人気のある要素や題材はどのようなものですか?
陳 台湾の作品は例え人気が出ても、日本のようにアニメ化、ドラマCD化といった展開をするのは非常に難しいです。表紙と挿絵以外のイラストや映像がありませんので、読者は直接小説から物語に触れることになります。ですので、より素早く世界観に没入できる内容が歓迎されやすく、恋愛要素やカップリング要素など、シリアスよりもコメディー寄りの作風が受け入れられやすい傾向があります。設定が濃い、空想すべき要素が強いジャンルはハードルが高いとされていますね。
主人公は真面目か、頭脳派系が好まれる印象があります。異世界系、転生系作品は台湾と中国大陸でも10年以上量産されてきたので、チート系や「俺TUEEEEE」系の主人公は食傷気味とされています。女性キャラクターの好まれる傾向は、日本の読者とあまり差はない印象です。
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