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手塚治虫展に長蛇の列、楳図かずおら日本人作家も受賞 「第45回アングレーム国際映画祭」に行ってきた

2018年は日仏友好160周年に当たる年。

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 フランス南西部のアングレーム市で毎年開催され、同国で最も古いコミックの祭典「アングレーム国際漫画祭」。2018年で45回目となる同イベントは多くの参加者でにぎわい、日本の漫画や漫画家も多数取り上げられました。


アングレームの中心にある市庁舎前

 1月25日から28日まで行われた同イベントでは、展示会や講演、ファンとの交流などさまざまなプログラムが用意された他、作家が作品を直接販売する場が設けられたり、教会でも展示/販売があるなど期間中は街が一体となってイベントを盛り上げました。


教会内でバンド・デシネを販売

作家も直接売ることができる

 27日に開催されたセレモニーでは、この1年間にフランス語で刊行された作品を対象とした主要9賞を発表。なお、セレモニー会場前では、アーティストや作家たちの収入の低さを訴えるデモが行われ、「53%のバンド・デシネ作家は最低賃金以下しか稼いでいない(※記事執筆時では時間給9.88ユーロ、月間給1498.47ユーロ)」「私たちのうち55%は月3回かそれ以上、週末も働いている」などと書かれたプラカードを掲げる人たちの姿も。これを受けてか、セレモニーの冒頭、デモの代表者によるスピーチの機会が与えられていました。

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セレモニー会場前のデモの様子

多くの作家・アーティストがこのデモに署名

 また、主要9賞発表の前には、今回多くのイベントで参加者を楽しませた漫画家の浦沢直樹さんに特別賞が贈られる場面も。セレモニーの司会を務めたステファン・ボージャンは“国際的なキャリアを持ち、作品が世界各地で多くの人を感動させた”浦沢さんに「アングレーム国際漫画祭への参加を承諾してくれ、展示のために500以上の原版を貸していただいて、個人的にも感謝を述べたい」と謝意を述べました。


会場の大きな拍手に包まれる浦沢直樹さん。「こんな素晴らしいものを作る人に出会えた人生ってとても喜ばしい」と『火の鳥』に出会った当時を振り返る場面も

 壇上で浦沢さんは、「13歳のときに手塚先生の『火の鳥』を読んだあの日から人生が変わって、45年後こういうところにいますからね、何が起きるか分からないですね、人生は」とコメント。「その星を目指し、目印にして歩いていたら今日こういうところに立っていた」とこれまでの道のりに思いをはせ、「とっても楽しい旅なので当分やめられそうもありません。皆さん素晴らしい賞をありがとうございました」と謝辞を述べて締めくくりました。


「とっても楽しい旅なので当分やめられそうもありません」と浦沢さん

浦沢さんの展示会も大盛況

 主要9賞では、楳図かずおさんの『わたしは真悟』が、永遠に残すべき作品に贈られる「遺産賞」を受賞。楳図さんは、「賞をいただくのは小学館漫画賞が最初で、今回が2度目の出来事です。それも、漫画を芸術として愛するフランスからです。『トレ ゾホ!!(TRES HEUREUX)』『とても嬉しいです!!』これです!! これをきっかけとして、このあと楽しい企画がぞくぞく続く予感がして、とても幸せな気分です。見守ってくださった皆様!! ありがとうございました」と後日コメントを寄せています。


セレモニーでは楳図さんの代理人がスピーチ

「わたしは真悟」フランス語版の装丁 (c)楳図かずお/小学館

 最優秀作品賞はジェレミー・モローの『LA SAGA DE GRIMR』が受賞。既に発表されていたグランプリには米コミックアーティストのリチャード・コーベンが選ばれています。


ジェレミ・モロー「生涯の女性である妻ともアングレーム国際漫画祭で出会った」

フランソワーズ・ニセン文化相と真島さん

 また、同イベントから公式招待を受けた『FAIRY TAIL』の真島ヒロさんも特別栄誉賞を受賞。授賞式では「このような賞(日本の少年漫画をフランスはじめ世界で普及させ、より幅広い層にまで浸透させることに貢献した)をいただき、大変光栄です。いま、この瞬間がとても素晴らしく、とても楽しんでいます」とコメント。真島さんの展示会では多くの子どもたちが興味深く展示を眺める様子が見られ、受賞後には真島さんと子どもたちが直接交流する機会も設けられました。

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真島さんの展示会には親子連れが多かった

エルザの鎧も人気

真島さんのデッサン動画を見ながらハッピーを描く子供たち

 さらにアングレーム博物館で催された「手塚治虫展」には、入場制限が設けられるほど多くの人が押し寄せました。来場者は大人が目立ち、展示物をじっくりと読み眺める人が多く、1人1人の滞在時間が長い印象でした。


入場までしばらく待たなければいけなかった

タイトルは「漫画の神様」

アトムにライトを照らす展示が人気

子どもも大人も楽しんでいました

 来場していた20代男性に話を聞くと、「とても面白い。彼が医師免許も持っている漫画家で、人体に詳しく、そういった作品にもつながるというところがすごく興味深かった」と印象を述べ、別の20代女性は「とても素晴らしい展示。特に彼独自のカラーがすごいと思った」と話しました。前者の男性は手塚治虫のことは全く知らず、後者の女性は子どものころ「鉄腕アトム」を少し知っていたそうです。


見ごたえのある展示会でした

メトロポリス

カラー作品が好きという人が多かった

 来場者には手塚治虫を初めて知ったという人も多数。会場にいたフランス人ジャーナリストは「手塚は確かにフランスではあまり知られておらず、バンド・デシネの作家でさえ知らないことがある。日本では“みんな知ってるすごく有名な漫画家だよ”といわれ、そうなのかと思ったことがある。でもこれは彼のスタイルがフランス人に好まれないとか、そういうことじゃない。単純に、フランス人は彼について知識を養う機会がなかっただけで、これまで展示会が開催されるにしてもとても規模の小さいものが多かった。だからこの展示後、フランスで彼はもっと知られていくかもしれない。個人的には手塚は本当にすごいストーリーテラーだと思う」と自らの分析を話してくれました。


多様な作品が展示されてました

「あの時代にこのような色彩感覚がすごい」との声も

 総代表のフランク・ボンドゥーは同イベントの終わりに、「今回は全ての展示に本当にたくさんの入場者があった」「手塚治虫展などは日本から出たことのない作品がたくさん展示されたのではないかと思う」「(アングレーム国際漫画祭の)これからの新しい活動としては若い才能を見つけること。優れた才能が発見されないことはしばしばある」などとコメントしました。


中央が総代表のフランス・ボンドゥー

 なお、2019年開催予定の「第46回アングレーム国際漫画祭」では、松本大洋展の開催予定が発表されました。

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