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ゴボウとご飯がてんこ盛り! 300年以上続く福井の奇祭「ごぼう講」に行ってきた

超大盛りのゴボウ料理とご飯をみんなでパクリ。

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 近年まれに見る記録的豪雪に見舞われた北陸・福井県越前市国中町では、「惣田正月十七日講(そうでんしょうがつじゅうしちにちこう)」(通称:ごぼう講)と呼ばれる奇祭が毎年2月17日に催されています。


福井で300年以上続く奇祭「ごぼう講」

 その始まりは江戸中期の宝永2年(1705年)。領主の年貢が厳しくなり、地域の神社裏にある隠田で収穫した米を藩主に隠れて食べたとも、村の結束を強める目的だとも言われています(諸説あり)。今回、300年以上に渡ってこの地域で脈々と続いている奇祭を前日の準備から取材してきました。


ごぼう講の舞台、福井県越前市国中町

 ごぼう講」の舞台となる福井県越前市国中町は、JR福井駅から車で南下すること約35分のところにあります。

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地域の氏神様「国中神社」

 隠田があったとされる町名の由来となった地域の氏神様「国中神社」の境内は、立ち入ることができないほど深い雪に覆われていました。戦時中は社務所でごぼう講が行われたこともあったのだとか。


前日から下準備がはじまっていた

 ごぼう講に参加できるのは国中町に住むおよそ45戸の“講人”と呼ばれる男性たち。祭りを取り仕切る宿主は講人の持ち回り制で、当番になるのはおよそ45年に一度。祭りの費用は毎回、その年の宿主が全て負担する決まりで、宿主が回ってくるのを機に(舞台となる)家をリフォームする人も少なくないそうです。

 祭りの前日となる2月16日。今回ごぼう講が開かれる宿主の見延さん宅の隣のガレージには講人が集まり、祭りで供されるゴボウ料理の下準備をしていました。


青森産のゴボウが300キロ

 プラスティック製のケースに入っているのは300キロものゴボウ。長さが整えられたゴボウは縄で束ねられ、糠に入った水にさらしてアク抜きをします。昔は国中町でもゴボウが採れたといいますが、今は青森産のゴボウを使っているそうです。


束ねたゴボウを大きな釜で20分ほどゆで上げます

ガレージ内に作られた仮設調理場

 ゆで上がったゴボウは冷めないうちにガレージ内に運ばれます。ガレージ内は前が見えなくなるほどの湯気が立ちこもり、ゴボウの香りが充満していました。

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ゆでたてアツアツのゴボウ

すりこぎでたたくと簡単にほぐれる

 ゆでたてのゴボウをすりこぎでバンバンとたたいて繊維をほぐし、さらに食べやすいように手でほぐしていきます。


みんなで語りながら作業します

 作業に当たっていたのはおよそ25人。参加していた70代の方にお話を聞いたところ、その昔はこの地域で田畑や山を所有していないとごぼう講に参加することができなかったそうです。終戦後、一時は中止を考えたこともあったといいますが、凶作だった寛永元年(1748年)と宝暦5年(1755年)を除いて食糧難だった戦時中も欠かすことなく、現在まで続いてきたとのことです。ここまで続けてこられた理由を聞いてみると「国中町に生まれた男の意地があるから」と話していました。熱い。


味噌は市内にある味噌専門店で1年前からこの日のために仕込まれた味噌を使用

 ほぐしたゴボウは砂糖を合わせた味噌であえ、樽の中で一晩寝かせます。別の鍋ではゆでたゴボウを丸切りにして醤油、味噌、砂糖、酒で味付け、唐辛子を入れた油で炒めた「丸揚げゴボウ」を作っていました。


丸揚げゴボウは甘辛に炒め煮

別鍋では下駄割大根を調理

 ガレージのお隣では大根を鶏がらスープや醤油、酒でじっくり煮た「下駄割(げたわり)大根」を調理。試食させてもらったところ、じっくり煮込まれた下駄割大根は味がしみてホクホクと柔らかかったです。


味がしみこんだ下駄割大根

今回のごぼう講の宿主、見延勝彦さん

 今回の宿主となる見延勝彦さんは、下準備にめどがついたところで羽織袴に着替え、講人の家にあいさつ回りに向かいます。前述の通り、祭りの費用は毎回、その年の宿主が全て負担。まさに一世一代の大行事ですね!

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羽織袴姿の正装で全員集合

 一夜明け、ごぼう講の当日。前日までの和やかな雰囲気とは打って変わり、羽織袴姿の正装に身を包んだ講人が集まり、厳かな空気の中神事が始まります。神座では神主のおはらいと祝詞があげられ、玉串をささげて1年の豊作と繁栄を祈ります。


御膳に用意されたゴボウ料理と物相飯

 ここでごぼう講で供される料理をあらためてご紹介。前日に準備した味噌あえのゴボウ(大量)、5合分のボリュームが圧巻の「物相飯(もっそうめし)」と呼ばれる超大盛りのご飯。丸揚げゴボウと半切りのたくあん、下駄割大根の上には焼き豆腐が1丁、味変え用に唐辛子が1袋つきます。


調理器具が重要文化財並みに古い

 物相飯は物相型(もっそうがた)と呼ばれる木製の型に、超てんこ盛りのご飯が盛られます。物相型の側面には“天保十年”(1839年)と墨で書かれたものもあり、およそ180年前からこの形でご飯が作られていたことが分かります。ちなみに「天保十年」がどれくらい古いかというと、その2年前に起こった主な出来事が「大塩平八郎の乱」(1837年)。マジか……!


神事が終わると次第に和やかな雰囲気に

いよいよ大盛りゴボウ食うぞ!

早速、ひとくち

手でゴボウをつまんでパクリ!

次々お酒が注がれます

 お酒は宿主の親戚が一人一人に注いで回り、お互いの近況を語らいます。


だんだんお酒が回ってきました

みんなでゴボウを豪快にパクリ

飲んで食べてにぎやかな「ごぼう講」

 講人たちが大いに飲んで、食べ、語らった宴はその後もにぎやかな雰囲気で続きました。ちなみに食べきれなかった料理はパックに詰めて家に持ち帰るのだそうです。

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 男性しか参加できないごぼう講ですが、それを支える講人の奥様方の協力なしには開くことができません。直会が終わり、講人が帰宅した後、協力いただいた皆さんに感謝とねぎらいの食事会が開かれるそうです。

 深い雪がまだまだ残る福井県で300年以上続く「ごぼう講」は国中町で生まれ育った男子が一世一代の大盤振る舞いをして地域の人々の健康と豊作を祈るお祭りでした。

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