ミステリ好きが早口で語る! ドラマ「アンナチュラル」の面白さ(5~7話)(2/3 ページ)
ここからがクライマックス。
6話「友達じゃない」
ミステリ的には映像の伏線があからさまで、「まあ多分耳の機械でなんかやったんでしょ」と早々にたどり着く。横隔膜の話は医学的には面白くて僕の中では大ヒットなんですが、そこに驚く視聴者は少ないと思います。終盤の展開はコナンファンなら劇場版の「14番目の標的」や「銀翼の奇術師」を思い浮かべて盛り上がったことでしょう。
事件の背景には、伊藤詩織さんの『Black Box』を思い浮かべるようなデートドラッグ事件や、アルトコインにまつわる詐欺事件など、現代を先取りしているなーというテーマが並んでいますね。ただ、それぞれの要素はあくまでスパイスであって、本質は集団強姦の話でも、デートレイプの話でも、アルトコインの話でもありません。
6話は、シリーズキャラの描き方が際立ってうまい! 葬儀会社の木林さんの爆走や、刑事たちのデレはもちろんのこと、何よりも東海林がすばらしい。タイトルにもなっている「友達じゃない」を、中盤で出しておいて、ラスト全く同じ言葉で回収する。でも意味が完全に変わっている。ラストのミコトと東海林のやりとりには完敗ですよ。あんなの嫌いな人いるの? いません!!!(絶叫)
2人の関係性と、あの言葉にできないけど感情にあふれたカットを撮れたというだけで、「アンナチュラル」というドラマは歴史に残りました。一瞬の動きに本当の関係性が描かれている、奇跡のようなシーン。もう拍手ですよ……ここで完結してもいい……。
さらにもう一段階うまさがあるのは、視聴者が期待していた「私たち友達だよね」という言葉が、六郎くんとフリーライター宍戸とのやりとりで使われているところ。野木さんは繰り返し、全く同じ言葉や道具の意味が反転するというシーンを描いています。1話の「寝顔を見せられない」、2話の検査キット、3話の「予想外の証人」。細かいところならまだまだあります。何も情報を足さずに、見方や使い方で意味を反転させることができるのは、野木さんが本当に言葉を丁寧に使っているからですね。
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