常識を覆す「投げ」の排除、徹底再現されたドラゴンボールの世界観―― 「ドラゴンボール ファイターズ」はいかにして最高の格闘ゲームになったのか(3/4 ページ)
これは究極のドラゴンボールゲーだ。
完璧に表現された「ドラゴンボール」の世界
「eスポーツ」という言葉も浸透し始め、その競技性に大きな注目が集まりつつある格闘ゲームだが、一部のトッププレイヤーにとって競技性や高額賞金が重要なものであっても、普通のプレイヤーにとっては関係がない。結局、大多数のプレイヤーが求めているのはプレイしたときの「純粋な面白さ」だろう。もちろん競技性も高くスタープレイヤーにも注目してほしいが、実は競技性に興味がないライト層にこそ「ドラゴンボール ファイターズ」をお勧めしたい。このゲームは、その競技性を無視しても面白いからだ。
少しでもこのゲームの映像を見た人は周知だろうが、「ドラゴンボール ファイターズ」の最大の魅力はそのグラフィックだ。冒頭でもふれたように、このゲームでは「2.5D」と銘打ったセルアニメ調のグラフィックによって、3Dの自由なカメラワークはそのままに、ほぼアニメそのままの戦闘シーンが繰り広げられる。サウンドエフェクトも聞きなじんだ原作アニメ同様のものが使われているため、対戦しているとドラゴンボールのアニメを自分で操作しているような感覚すら覚える。ゲーム中の演出は日本国外でも大人気で、海外大会では“対戦前の演出をスキップしてはいけない”という暗黙の了解すらできているようだ。そのぐらい、「ドラゴンボール ファイターズ」のゲーム画面は見ていて楽しいのだ。
グラフィックはもちろん、各キャラクターの個性も原作のままだ。例えば、避けるのが困難なヤムチャの繰気弾、特戦隊全員で敵と戦おうとするギニュー、多彩な技で相手を翻弄するクリリンなど、バトルバランスの面でも各キャラクターの持ち味をしっかり生かした調整がされており、全く使い道がない“死に技”や極端な弱キャラもいない。フリーザの放つ「デスソーサー」(気円斬に似た技)の画面内を往復し、きっちりフリーザ自身にもヒットする仕様には、開発者の「絶対に原作ファンが納得するゲームを作る」という気概を感じた。“ヤムチャがセルを倒せるはずがない”のような身も蓋もない指摘(一応、その理由もストーリーモードで説明される)さえしなければ、各キャラクターは原作ファンでも納得の動きをするはずだ。
対戦しなくても面白い
開発を手掛けたアークシステムワークスの看板タイトル「ギルティギアXrd」シリーズは「アニメの円盤を買ったら格闘ゲームが付属してきたってレベル」などといわれるほどストーリーモードが充実していたが、「ドラゴンボール ファイターズ」もその姿勢を踏襲している。圧倒的なグラフィックはそのままで、しかもフルボイス。やりこみ要素も非常に多く、恐らく100%クリアを目指すなら数十時間は必要になるだろう。
正直言って肝心のストーリー展開は多少強引だが、まぁそれも含めて“ドラゴンボールらしさ”と言えなくはない。キャラクターの魅力はしっかり掘り下げてくれるので、ストーリーモードはドラゴンボールのアニメを見る感覚で気軽に楽しめる。
もちろん、単純に観戦しているだけでも面白いというのも、eスポーツとしての発展をも見据えたこれからの格闘ゲームには大切な要素だ。大技を当てたときの「ガキーン!!」という効果音や、一瞬アップでキャラクターが映る演出は、プレイヤーに爽快感を与えるだけでなく、格闘ゲームに詳しくない層にも勝負の分かれ目を分かりやすくさせている。もちろん、トッププレイヤー同士の駆け引きはより複雑ではあるが、細かな画面上の演出で重要な場面を示してくれるのは、“見る専”にとっても助かる配慮だろう。
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