連載

あの子は憂いげに、もうちょっと隣の席がよかったなぁと言ってきた 「からかい上手の高木さん」第12話の“からかいポイント”(1/2 ページ)

【ネタバレあり】初めて会った日もこれからも、西片君は変わらない。

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(C)Soichiro Yamamoto / Shogakukan 2014-2018.

 アニメ「からかい上手の高木さん」最終回。今回は西片君との出会いが描かれました。「ファーストからかい」はどんなものだったのか。アニメ12話で繰り出された高木さんのからかいポイントを振り返ってみましょう。

その1:わざわざ書いて送る意味はあるよ「手紙」

 西片君が教科書を開いた時、一通の手紙が。しかも封はハート印のシール。

そりゃ、思わず閉じるわ(2巻P57)

 絵に描いたようなラブレター。ここで西片君の頭で解答シミュレーションが行われます。「誰からの手紙なのか」「高木さんのいたずらではないか」「高木さんのラブレターの可能性が存在するのではないか」。

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 電子の文字も効き目があるとはいえ、やはり手で触れることのできる手紙は、思いがずっしり伝わるもの。「そういえば教科書にはさんでる手紙、私からだから」という高木さんの暴露で、西片君の心の中に、激しく嵐が吹き荒れます。

割と鈍感な西片君も、これにはドギマギ(2巻P69)

 手紙の重みを思い知った西片君でした。中には「西片へ 今日一緒に帰ろー 高木より」と描かれていて、ホッと一息。からかいの一環でしたとさチャンチャン。

 とはいえ、ただのジョークだけではないようです。高木さんは「手紙書くの流行ってるんだよ」と西片君に言っています。物語序盤を見ると、ミナ・サナエ・ユカリのすちゃらか3人組も手紙交換をしています。

 確かに「流行に乗っただけ」「めんどくさいこと」だといわれたらその通りです。けれどもミナから手紙をもらったサナエは、手紙ブームをちゃかす男子にキレて、蹴りを入れました。

 女子の間での手紙のやりとりは、親愛の表現でもある。サナエは、ミナが自分のことを大好きだから、手紙を送ってきたと知っている。だからあざ笑うのは許せない。

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 普段ぶれない高木さんがこの流行に乗ったのだとしたら、西片君のことを大切に思っている証として送っているんじゃないか。ラブレターじゃなくて少し残念かもしれないけど、うれしかったでしょ、西片君。

その2:はじめてのからかい「入学式」

 話はとんで、中学1年生の入学式。はじめて高木さんと西片君が出会った時の話です。

 入学式初っぱなから遅刻した西片君。男子の友達がほしかったのに、自分の席は隅っこで、隣りにいたのは女子。なんて日だ。

高木さんと西片君、はじめての会話(7巻P14)

 最初に話しかけたのは高木さんの方でした。この時彼がポロッと言った「高木さんて人のせいだ……」の発言が、二人の未来を変えました。

 西片君は登校中にハンカチを拾って届けたことで遅刻。クラスメイトの自己紹介に間に合わなかったため、隣りにいる少女が高木さんだと気付いていません。それを落としたのがまさに、高木さんでした、というオチ。ここから高木さんの「からかい」生活がスタートします。

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最初のからかいから手のひらの上(7巻P19)

 落としものを拾ってもらったことをないしょにしつつ、「遅刻した理由当ててみよっか」「一回で当たったら私の勝ちね」と高木さん。ここで「いいよ」と勝負に乗ってくる西片君。

 「高木さんて人のせいだ」は、見事に西片君という人間を表現した言葉です。落とし物を拾って届けるくらい、誠実で真面目。それでいて愚痴る程度に、気取らない自然体。お人よしで、誰かのために動ける人。ここに高木さんは、話しやすさを感じ取ったようです。

本質を見抜いた顔をする高木さん(7巻P22)

 「なんか、顔赤いよ?」の表情ときたら。高木さんはもうこの時点で、西片君の本質を見抜きました。だからそういう冗談もいえる。

 「これからよろしく」というあいさつは、次の話につながっていきます。

その3:君が私のために動いてくれた日「席替え」

 時間を戻して、席替えの日。高木さんに勝つため策を練る西片君に対し、高木さんは憂い顔です。

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普段見たことのない表情(3巻P58)

 高木さんは原作でもアニメでも、西片君の前ではあまり暗い顔をしません。一度だけ、落ち込んでいた時ですら、学校では平静を保っていました。

 しかし、「私はもうちょっと西片の隣の席がよかったなぁ」という彼女の顔は、初めて見る悩んだ顔でした。西片君も心穏やかではいられない。

 高木さんは西片にはウソはつかないという鉄則を守り続けています。からかいはするけれども、だますことは絶対にしない。だからこそ、彼女の発言を真っ向から受け止めました。

とうとう、彼は動いた(3巻P64)

 結局くじでは離れ離れになってしまった西片君と高木さん。ここで西片君、決意をします。席を変わって高木さんの隣りに行く。

 ここ数回、高木さんは西片君に自分から動いてほしいという思いをさりげなくアピールしていました。恐る恐るながら西片君は、一緒に帰るよう誘うなど、高木さんに対しての姿勢が能動的になりました。

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 それでもまだ、高木さんのフォローあってこその動き。今回は初めて、高木さんが何も言っていないのに、自分の意思で動きました。

 一応言い訳として「勝ちたいから」と自分を納得させてはいますが、頭に浮かんでいたのは哀しそうな高木さんの顔。

これからもよろしくね。(3巻P68)

 結果としては高木さんの機転で、2人はまた隣の席になりました。この空振り感が西片君らしい。

 もっとも、結果が重要ではない。西片君が、自分のために、動いてくれた。高木さんにとって、こんなにうれしいことはない。

 入学式の時「これからよろしく」と言っていた高木さん。こちらでは「これからよろしくね」。ハンカチを届けたけれども遅刻した抜けっぷりの彼が、席替えで近づこうとしてくれて失敗した。これには高木さんもほっこり笑顔。

 原作でもまだまだ2人の物語は続いています。ニヤニヤ燃料がもっと欲しい! という方には、スピンオフ「からかい上手の(元)高木さん」と「恋に恋するユカリちゃん」もオススメ。まだまだ高木さんワールドは、田舎の中学校を舞台に広がっていきます。

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