レビュー

「安室透」とは結局何者なのか? 劇場版コナン最新作「ゼロの執行人」について語らせて!【ネタバレあり】赤いシャムネコ・将来の終わりが語る(2/3 ページ)

バーボン片手にマジトーク。

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シャムネコ: アクションシーンも大変よかったです。「高いところから飛距離を稼いで飛ぶ」という「天国へのカウントダウン」のバリエーションが前作の「から紅の恋歌(ラブレター)」に続いて今作でもメインとなっていました。頭を使うコナンくん、力づくの平次、そしてドラテクの安室さん――と個性が出ていたのがよかった。

終わり: 珍しく素手でのバトルがあまりなかった。風見を押し倒すシーンくらいで、あとはカーアクション中心。RX-7を乗りこなす安室さんは「純黒」の冒頭ぶりでしたが、非常に派手でしたね。ちなみにRX-7はマツダのスポーツカー。警察学校の同期であり、観覧車の爆破事件で殉職した松田刑事にちなんでいるのでしょうかね。

シャムネコ: 松田、クライマックスでボロボロになったけど、いいのか?

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終わり: 普通だったら廃車まったなしだけど、76巻収録「立体交差の思惑」では犯人の車を自分の車に衝突させ強引に止める、ということもやっています。なので今回も平気かなと思いますが……次作以降、安室さんの車には注目ですね。ちなみに本作には出てこない赤井秀一の車はフォード社のマスタングですが、その日本撤退時にアフターサポートを担当していたのもマツダだったり。それにしてもかわいそうなのがFBIのキャメルくん。ドラテク自慢だったのに、完全に安室さんにキャラを取られてしまった。

シャムネコ: いましたね、そんなキャラも……。本作はクライマックスが二段構えなのが素晴らしい。犯人をワナにハメつつ衛星を止めてみせる安室さんと、そのあとに軌道がズレてカジノタワーに直撃することになるのを止める安室さん。それぞれ安室さんの“冷静”と“暴走”の二面性を表しているクライマックスで、非常に盛り上がりました。

終わり: 俺はメチャクチャ「機動戦士ガンダム 逆襲のシャア」のアクシズ・ショックを連想してました。シャアが落としてくる隕石をアムロが気合で押し返す話です。

シャムネコ: 秀逸なのが、赤井をメインに据えた18作目「異次元の狙撃手」と本作は、最終的な解決策が近いんですよね。「異次元」では、コナンくんが花火を上げることで赤井の狙撃を助ける。一方本作は、安室の協力によりコナンくんが花火を上げて人々を助ける。そもそも18作目に赤井、22作目に安室がメインになるのがいいですよね。2人が共演した20作目「純黒」が交差点になって、対照的な位置にそれぞれのメイン回があるような印象を受けています。

「エンディング映像」について語らせて!

シャムネコ: それにしても……エンディングの映像、どう思いました?(怒) 僕は「ナシ」派です。劇場版コナンは舞台やモチーフを実写で流す伝統があって、「コナンのキャラクターを映さずにコナンの世界観を伝える」ことにおいて評価されています。ところが今回、毛利家の顛末を描くアニメーションが入っていて……。アニメーションが入るのは「絶海」ぶりですが、これが伝統にならないでほしい。

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終わり: 素材がなさすぎてヒマワリを映し続けていた「向日葵」よりマシでは? エンディングの毛利家の一幕は、ノベライズではセリフもちゃんとあるんですよ。シーンとして入れる尺がなかったけど、入れないと説明が足りないので、苦肉の策としてエンディングに入り込んだと考えてます。

シャムネコ: 分かってます! 分かってるけど複雑なんです! だって「向日葵」と比べて、今回はいっぱい実写にする素材があったじゃないですか……。

終わり: エンディングテーマの「零 -ZERO-」はよかったですけどね。あれは福山雅治が考えた安室のキャラクターソング。曲中の「君」とは恋人のことで、つまり「国」ですね。そこにいくと「君の笑顔を守りたい」ってなんだよとなるけど……まあ国民の笑顔ってことか。

――壮大なラブソングだ……。

「安室透という男」について語らせて!

終わり: これまで安室さんは、「一体何者なのか?」という謎めいたキャラでした。“トリプルフェイス”という呼び名の通り、所属は分かってはいるけれど、本当は敵なのか味方なのかが分からない、内心が描かれていないキャラ。赤井秀一との因縁以外は、いまいち本心が謎なんですよ。

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 本作でも小五郎を陥れ、コナンに揺さぶりをかけてくるという異常な行動を見せる一方で、梓さんにチャラいところを見せたりして、本当に何を考えているのか謎。シリアスなシーンでも、風見に「それでも公安か!」とブチ切れたりして、感情の揺れ幅がでかくて人間性がつかめない。

シャムネコ: 「もしかして安室さんは敵なのかもしれない」と思わせる描き方がうまいですよね。視聴者としては安室さんが大好きだから、「言うてもコナン側に付くでしょ」と思って観に来る。それが開始早々に、毛利小五郎をはめた犯人が安室であることが判明し「こいつ……分からねえ!」と揺さぶってくる。評価が定まっていないキャラクターだからこそ、できる手法ですね。これ、かつて灰原哀もたどったルートなんですよ。いまとなっては味方側で安定してしまった哀ちゃんですが、5作目の「天国へのカウントダウン」では「灰原は敵か味方か!?」というドラマが売りだったんですよね。

終わり: その複雑な立ち位置に今は安室さんがいる。けれど本作を最後まで見ると、「安室の恋人はこの国」ということが分かる。しかもこのシーンは青山先生原画。「コナン」という作品において、青山絵は“真実”なんです。「うみねこのなく頃に」で言う「赤文字(赤き真実)」。

シャムネコ: 分かる。青山絵は「真実」。

終わり: 彼は彼なりの正義と信念をもって、“恋人”を守ろうとしている。この信念がどこから来たかは原作でこの先描かれるのではないかと思っていますが、安室を理解する上で本作は非常に重要でした。

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――安室さんはもともと人気でしたが、本作によってファン文化は変化するんでしょうか?

終わり: まず、安室とコナンの関係性がこれだけ描かれたのは初めてなので、キャラの関係性の理解は変わりそうですね。違う正義を抱きながら、「協力者」になれる2人の関係は、とてもうまく描かれていたのでは。

シャムネコ: ラストカットの、背を向き合って違う方向に歩き出す2人、メッチャ泣けました。

終わり: それから重要なのが風見。「純黒」で初登場した風見ですが、安室以上によく分からないキャラでした。実は彼も赤井と安室と同じく「ガンダム」ネタ。「機動戦士Ζガンダム」のカミーユから名前をとって、「か」ざ「み」「ゆ」うや、なんですよね。声優も同じ飛田展男さんです。

シャムネコ: でも彼は「純黒」では観覧車でぶっ倒れただけで、なんなのかよく分からなかった(笑)。今回、安室との距離や安室に対しての考えが示されたのは面白かったです。風見も安室を怖がっているし、安室も風見を全面的に信頼しているわけではない。

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終わり: 風見の「安室という男は人殺しだ」も、ずっと抱いていた本音だったわけです。ただ、本作に関してはそれは覆った。2人の関係はこれから変化していくことでしょう……。ちなみに絶対に見逃さないでほしいのが、安室さんの腹チラですね。「純黒」でもヘソチラがあった安室さんですが、今回は腹筋が見られる。見逃した人は2回目を見に行ってください。

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