東大学食に40年あった宇佐美圭司の絵画、改装時に生協が廃棄 「取り返しつかない結果を招いた」と謝罪
内装の全面改修に伴い、新食堂で飾ることができないと判断して廃棄処分してしまった。
東京大学中央食堂で約40年にわたって展示されていた宇佐美圭司氏の絵画作品を、東京大学消費生活協同組合が内装の全面改修に伴い廃棄処分していたことが明らかになりました。東京大学と所有者である東大生協は5月8日、「取り返しのつかない結果を招いてしまった」と謝罪文を発表しました。
宇佐美圭司氏(1940-2012)は、1972年「第36回ヴェネツィア・ビエンナーレ」で日本代表に選出、1970年「日本万国博覧会」鉄鋼館で美術監督を務めるなどした日本を代表する画家の1人。1977年に東大中央食堂が竣工した際に東大生協へ絵画「きずな」を寄贈、以来食堂内の壁面に展示されていました。
しかし4月末にネットで、食堂を改修するにあたって東大生協が絵画を処分していたことが発覚し話題に。
生協では2017年8月から、老朽化が著しかった食堂を内装の全面改修工事および厨房機器一式の取替を行い、2018年3月末にオープンしました。その中で生協の質疑応答コーナー「ひとことカード」に「宇佐美氏の絵画の行方はどうなったのか」という質問が寄せられ、3月15日に生協側は「新中央食堂へ飾ることができず(全体にわたって吸音の壁になることや意匠の面から)、また別の施設に移設するということもできない」ことから処分することにしたと回答(現在、「ひとことカード」の内容は変更済み)。
しばらくたった4月末、Twitterでこの「ひとことカード」の内容が取り沙汰され、重要な絵画作品を廃棄していたことに「あり得ない」「恥ずかしいを通り越している」「教員の怠慢が招いた悲劇」と批判が集まりました。
これを受け東京大学と東大生協は、絵画を処分していたのは事実として謝罪。もともと東大側では工事の監修にあたった教授が打ち合わせ段階で、絵画を保存するべきとして改修工事後の新たな設置場所を具体的に指定していました。しかしその指示が関連会議で適切に共有されず、所有権者である東大生協が廃棄処分の判断を下してしまったと経緯を説明しています。処分は2017年9月14日に行われましたが東大側には伝えられておらず、今回の件で初めて把握したそうです。
東大側は「作品が東京大学内の公共空間に設置されていた貴重な芸術作品である以上、所有権の如何に関わらず、大学側としてもその文化的価値についての認識を全教職員が共有し、情報の伝達に万全を期して細心の注意を払うべきでした。かかる事態に至ってしまったことは痛恨の極みで有り、慙愧に耐えません」と反省の意を表明。「ご遺族・関係者の皆様を初め、お問い合わせをいただいた多くの皆様、そしてこの貴重な作品に触れる機会を失ったすべての方々に、心よりお詫び申し上げます」と謝罪しました。
東大生協も「私ども生協職員の軽率な判断により(中略)絵画『きずな』が永遠に鑑賞のできない状態となりました。このような取り返しのつかない事態を防げなかったことに対して、生協の理事長として責任を痛感し、深く反省し、心よりお詫び申し上げます」と謝意を示しています。
(黒木貴啓)
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