「透けちゃダメなものを、あえて透けさせた」 BANDAI SPIRITSがたどり着いた「常識外れのプラモデル」開発秘話(前編)(3/4 ページ)
「『プラモデルにできること』を広げたい」。
開発期間は1年8カ月、大変すぎる肌表現への道
――では、このフミナ先輩フィギュアの新しい点というか、ここが新しいトライアルだよというのはどのあたりになるんでしょうか?
山上:これまでのFigure-riseBustに関しては、色分けをかっちり出すのが前提だったんです。色をぱきっと割って、いちいち塗装する手間を省こうというのが目的でした。今回は、色分けだけではなくて色を透けさせることで自然な陰影を生み出している点が明確に違います。
構造自体は既にいろいろと情報が出ている通りなんですが、本来であれば肌色と茶色とかでバキッと別れるところを、ポイントで裏側に敷いているピンクやオレンジを透けさせることで肌色の質感を表現しているところがこれまでになかった点ですね。
西村:今までって、樹脂は色が透けちゃいけなかったんですよ。黄色は黄色、赤は赤とはっきり樹脂の色が分かれてないといけなかったというのがほとんどだったんですけど、今回はあえて透けさせているわけです。
――基本的にはプラモデルの部品って透けちゃダメなものですもんね。
山上:今まで「どうやって透けないようにしようか」というようなトライアルを何度もやっていたんですけど、逆に透けさせちゃえばいいじゃんっていう話なんですよ。じゃあその技術ってどこに応用したら面白いかなって考えた時に、今までのFigure-riseBustでうまくいかないかなと思っていたのが肌の質感の表現だったので、求めているものが重なったわけです。
――Figure-riseBustの、試作の際のまつげのにじみが開発のきっかけになったとお聞きしましたが……。
山上:この部品がそうですね。本来は肌色と黒がカチッと分かれてないといけないんで、これはエラー品なんですよ。左目の目尻に泣いてるようなラインが出ちゃってます。
西村:これも結局、黒が透けてるけど真っ黒ではなくて、肌色を透かして黒が見えているので、これをうまく使えないかなと。
――透けを制御するのは大変だったと思いますが。
山上:そもそも透けさせるとはいっても、どの透け方が求めているものに近いのかというのが誰も分からなかったんです。このエラーのパーツは透けちゃってるけど、例えばこれをほっぺたに生かそうと思った時にどういう設計数値であれば理想的になるのか、金型や成形技術という部分でどこまで追いつけるかというのは一切やったことがない部分だったので、ノウハウがないんです。
そこに関しては「ラボ」というブランド名の通り、ひとつづつ研究していきながらどのくらいの厚みで、どういう形なら成形できるのかをその都度研究しながら進めていきました。
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