「透けちゃダメなものを、あえて透けさせた」 BANDAI SPIRITSがたどり着いた「常識外れのプラモデル」開発秘話(前編)(4/4 ページ)
「『プラモデルにできること』を広げたい」。
――開発期間ってどれくらいかかってるんですか?
西村:最初に考えだしたのが一昨年(2016年)の10月で、発売が今度の6月なんで、1年と8カ月くらいですね。最初は「こういうことできないかな〜」という話はしてたんですけど、途方もないプランなんで、予算も時間もないしどうするかなって感じだったんですよ。
その時にたまたまチャレンジコンテストっていうバンダイ全社でやる企画コンペがあって、その中で採択された案には会社が技術支援金を出してくれるんです。それに出したら無事通って、会社から支援をもらって進められたんです。
――まずは予算がつくことが大事だったんですね。
西村:それで約1年くらい研究していって、ようやく去年の夏すぎくらいから本商品の開発に入れたという感じです。1年8カ月のうちの半分くらいは企画立てて支援金もらって試験する期間で、後ろ半分が実商品の開発、くらいの感じです。
――今回、原型は社外の方がやってるんですよね?
西村:そうです。田中冬志さんというプロの原型師さんにお願いしています。
――原型はアナログだったんですか?
山上:そうですね。現物をもらって、それをデータ化して。もし仮に原型がデータだったとしても、金型で抜けるようにするためには調整が必要なんですよ。今回の特殊な設計のためだけの調整もあるので、それをやってデータの形に落とし込むんですけど。
――企画開始から完成まで1年と8カ月ほどというお話でしたが、その間のどの段階で原型製作をしたんですか?
西村:試験研究の中間ころから原型も並行して進めていました。
山上:原型が完成するまでの間に試験用の型を使っていろいろ試しました。試験型に関しては製品と同じ形である必要はなかったんで、過去商品のデータを流用してます。顔の形だけ作ってみたりとか。
西村:顔だけとか手だけとか、そういうデータを使って今回の積層構造を試していたので、必ずしもこのフミナ先輩の原型で試験していたわけではないんです。試験研究の期間の裏で原型を作ってもらって、完成した原型と試験の結果を組み合わせて本番の設計に入る感じですね。1年8カ月の間に、実商品の開発と試験の期間が入れ子になりながらやってます。
山上:通常の設計より時間のかかる仕事でしたね。単純に顔だけでも、本来なら1パーツで設計が完了する部分に4色入っていて、それをひとつひとつ設計するわけです。部品が4つ組み合わさってるのと同じなんで、設計の負荷はそれなりにありました。原型師さんが作った顔をもとにして、眉毛の形や瞳の形を一個ずつ抜きながら裏側の構造を作っていったわけです。
――その試験用の型に樹脂を打ち込んでは直す……ということを繰り返したわけですか?
西村:感覚としてはそれに近いです。樹脂を打って「あ、ちょっと違った」ってまた金型を調整したり、別の樹脂を打ったりという……。試験型自体は2種作ったんですけど、この2つの型を原型とどめてないくらいまでいじってます。ちょっと削ったり、逆にちょっと溶接で戻したりとか。
――金型って削った後に元に戻せるんですね。
山上:型は金属でできてるものなんで、溶接で同じ金属を盛った後でまた削る感じですね。あと、脚やお腹で下に流している色と、ほっぺたで使っている色って違うんですよ。ほっぺたの色はかなりピンクに近いんですけど、脚やお腹の部分はもっとオレンジに近いんです。
意図しているのがチーク的な赤みなのか、それとも体の血色なのかでどういう違いが必要でどういう色がベストなのか全く分からなかったんです。でも、どっちも同じ色で抜いてしまうと気持ち悪くなる。この色味も、何回試したか覚えてないくらい、いろんな色で試してます。
西村:顔の部分はお化粧というか、アニメの顔の表現としてチークっぽい色になるんですけど、体の部分はシャドー表現みたいな感じを出したくて色味を変えてるんです。
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