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「カニミソ」はカニの何なのか?

カニミソって何だ? 脳ミソか? 僕は何を食べようとしているのだ?

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 「カニミソ」をご存じでしょうか。

 ご承知の通りと思います。質問を変えましょう。

 「カニミソが何であるか」をご存じでしょうか。

 あの濃厚なおいしさを思い出せても、その正体は知らない、という方が多いのでは。

 臨時収入をカニミソ缶に変換し、いそいそとスプーンを用意したところで僕は、ふと先の疑問を思い付きました。カニミソって何だ? 脳ミソか? 僕は何を食べようとしているのだ?

 早速缶の原材料表示を見ると、「ずわいがにかにみそ」と書いてあり、つまりカニミソはカニミソでした。深夜1人ぼっちで味わうには、カニミソは難しすぎました。

 カニミソはカニの何なのか――。早速調べて発表になだれ込んでもいいのですが、僕には脳ミソがあるので、調査結果を楽しむべく、まず仮説を立てることにしました。

 思うに、カニミソが脳ミソである可能性は低い。カニがあれほどの量の脳を持っているなら、カニはもっと知能が高いと考えられるからです。カニの知能が特段高いという話は聞きません。

 すると次の疑問が生まれます。カニの脳はどこにあるんでしょうか? そもそもカニに脳はあるんでしょうか? 謎は深まる……。

 そこで1冊、本を仕入れました。

 それでは早速ですが、以下にカニミソの正解を引用します。

 カニ類では栄養物質のもっとも重要な貯蔵器官は中腸腺である.中腸腺はヒトの場合の肝臓に相当する器官で,栄養物質の貯蔵や食物の消化に関係している.カニのミソと呼ばれ,食用のカニ類ではおいしい部分とされている.(山口 2003、170)

 つまり「カニミソはカニの肝臓的部分」です。アンコウのアンキモに相当すると考えられるでしょうか。カニミソがうま味の権化なのは、栄養がたっぷり詰まっているからでした。

 1つスッキリしたところで、もう片方の疑問も解決していきましょう。カニの脳ミソはどこに?

 先の本には答えが載っていなかった(マクロ的な視点の話が多い書籍でした)ので、<カニ 脳>で検索……しようとしたとき、思い出す。

【はしご形神経系】節足動物(カニなど)や環形動物(ミミズなど)が持つ神経系。メイン神経が名の通りの「はしご形」になっている。端は小さな脳になっていることが多い。

 筆者は今の今まで忘れていたが、高校生物で習う(センター試験レベル)。

 カニは節足動物なので、はしご形神経系を持っているはず。ならば、この神経の端は脳なのでは?

 「カニに脳はあるの?」という無邪気な疑問は、高校レベルの知識により一転、「カニには小さな脳が存在するはずであり、またそこから伸びる神経系ははしご形であるはず」という仮説に置き換わりました。

 となれば、あとはこれを検証するだけです。

 ――実際に調べてみますと、果たしてカニには小さな脳があることが分かりました。予想通り、知は力なりといったところでしょうか。

 実際の画像は以下のサイトを参照してください。カニの脳の写真が載っています(1つ予想が外れたのは、神経が二次的に融合して、もはや「はしご」の形になっていないことでした)。

 知識は思考を補助します。ある程度の知識があれば、カニミソが脳でないことや、カニに脳があることは「自力で考えられる」のです。

 ここでは教育論は語りませんが、勉強は、知識は、確かに役に立ちます。今回の一件は、僕にこの事実をあらためて教えてくれました。

 食べ始めるのに1日かかったカニミソは、格別においしかったです。

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