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EVO2015の歴史的珍事「早すぎたガッツポーズ」の裏側にあったもの “勝負を分けたカウンターヒット”を生んだ「0.1秒の駆け引き」(2/3 ページ)

席を立ったことは紛れもないミスだが、その時点で勝敗が決まったとは言い切れない。

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小川「昇龍拳を出すのに2カ月かかった」

 EVO2015の王者となった小川だが、“プレイヤーとしての才能”という面での評価は決して高くない。本人いわく、「初めて格闘ゲームをプレイしたころは、昇龍拳がだせるようになるまで2カ月以上かかった」というほど不器用で、突出した反射神経を持っているわけでもない。過去には「鉄拳」や「CAPCOM VS. SNK 2」などいろいろなゲームをプレイしたがトッププレイヤーにはなれず、いわゆる“エンジョイ勢”として格闘ゲームをプレイしていた。そんな小川について語る上で、欠かすことができないキャラクターがギルティギアシリーズの「ザトー=ONE」だ。

「ザトー=ONE」 ※過去作では正式名称が「エディ」だった時期もある(画像はGUILTY GEAR Xrd -SIGN-公式サイトより)

 ザトーの特徴は、召喚できる獣「エディ」の存在と、エディと本体の同時操作に伴う操作難易度の高さ。ザトーとエディの連携攻撃は非常に強力で回避も難しく、ポテンシャルは極めて高い。しかし、完璧に使いこなすためにはボタンを押すだけでなく離すタイミングも考慮して操作しなければならず、格闘ゲームの熟練者であっても簡単に使いこなすことはできない。ギルティギアシリーズの複雑なゲーム性も相まって、数ある格闘ゲームの中でも極めて操作が難しいキャラクターだ。

ザトーの操作難易度は、公式攻略サイトで「かなりの熟練が求められる」「それなりの覚悟を持って望むべき」と書かれるほど(画像はGUILTY GEAR Xrd 公式攻略サイトより)

 不器用な小川が難度の高いザトーを使うというのは無謀な挑戦だった。しかし、「練習すればするほど、強くなっているという実感が得られる」と感じた小川は、そのザトーの難しさにこそ夢中になり、異様なほどザトーに執着しはじめた。毎日ゲームセンターに通い、家ではキャラクター別のコンボを1日100セット練習した。負けた相手には「お金を払うからもう一度対戦してほしい」と頼み込み、ゲームのために食費を削りすぎたときには栄養失調で倒れて救急車で運ばれたこともある。ゲームセンターではプレイヤーと常に情報交換し、最新の攻略を学んだ。そしてギルティギアを始めてから数年後、昇龍拳すら出せなかった小川はトッププレイヤーの一人になっていた。

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 そして、小川はギルティギアシリーズの「GUILTY GEAR XX #Reload」(2003年稼働)で圧倒的な強さを発揮しはじめる。そのときの強さは、全国レベルのプレイヤーが多数出場する5on5の大会にたった1人で出場し、一度も負けることなく対戦相手を全員倒して優勝したという記録さえ残っているほど。そのころには、多くのトッププレイヤーが“打倒小川”を目標とするようになった。

小川は2004年12月11日の5on5大会に「芙蓉楓」の名前で出場し、並み居る強豪を押しのけて優勝している(画像は新宿スポーツランド本館のサイトより)

 「ギルティギアに人生の8~9割は費やした」「ギルティギアがなければ死んでいたかもしれない」後にそう語るほどギルティギアに傾倒した小川はその後も活躍を続け、EVOのメインタイトルに選ばれた「GUILTY GEAR Xrd」でも結果を出し続けていた。ヲシゲは、そんな圧倒的な小川の強さを10年以上前から見続け、小川を大舞台で倒すことを目標にしていたプレイヤーの一人。対戦の前日「大会の壇上で小川と戦うのは10年越しの夢だった」とツイートするほど、小川との対戦を切望していた。

「ギルティギアに人生の8~9割は費やした」「ギルティギアがなければ死んでいたかもしれない」の発言は1分30秒ごろから

勝敗を分けたカウンターヒット

 EVOのウィナーズセミファイナルは2ラウンド先取を1セットとし、2セット先取で勝利となるルール。問題の最終セットまでは1セット目を小川が2ラウンド連取で勝利、2セット目をヲシゲが2ラウンド連取で勝利しており、互角の展開となっていた。最終セットでは1ラウンド目を小川が勝利、2ラウンド目でヲシゲが勝利し、問題のシーンが訪れる。

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