映画「青夏 きみに恋した30日」で映画初主演 今勢いのある若手俳優・佐野勇斗とは何者なのか
初の映画主演に何を思うのか、本人を直撃してみました。
南波あつこさんの人気漫画を実写化した映画「青夏 きみに恋した30日」が8月1日に公開されました。
同作で描かれるのは、都会の女子高校生と田舎の男子高校生が織りなすひと夏の淡い恋。都会のイマドキ女子高生・理緒を演じるのは、NHKの連続テレビ小説「わろてんか」の好演が光った葵わかなさん。今作でも、運命の恋を待ちわび、夏休みの間だけ祖母が住む田舎で過ごすヒロインの恋模様に強い説得力を持たせる演技をみせています。
爽やかで澄み渡った空気に満たされた田舎を舞台に、見るだけで浄化されるような理緒に思いを寄せられる田舎の男子高校生・吟蔵を演じるのが、佐野勇斗(さのはやと)さん。2016年のテレビドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」(TBS系)に出演して以降、俳優としてのキャリアを重ねる中、今作が映画初主演。しかも、今作を含め、2018年は「ちはやふる -結び-」「3D彼女 リアルガール」(9月14日公開)など発表されているだけで5作品に出演するなど、俳優としてこれまで積み上げてきたものが一気に輝きはじめた印象があります。
運命の恋を待ちわびる理緒に比べると、吟蔵は至って現実的。原石のようなデザインの才能はあっても、夏休みでも家業の酒屋を手伝って、田舎道を原チャリで配達に回るなど田舎で暮らしていくことを当然のように受け入れつつある。そんな吟蔵だからこそ、理緒とのギャップが浮き彫りとなり、両者の思いが重なり合っていく様は見るものに爽やかな憧憬(しょうけい)を与えています。
以下では、若手の注目俳優、佐野さんの素顔に迫ってみました。
「ナチュラルにカッコいい」吟蔵の存在はプレッシャーだった
―― 2018年では「ちはやふる 結び」をはじめ、「羊と鋼の森」や「走れ!T校バスケット部」「3D彼女 リアルガール」、そして映画初主演となる「青夏 きみに恋した30日」(以下、青夏)。目覚ましい活躍で作品をリードする力を示していますね。
佐野 ありがたいことにいろいろな作品に出させていただいているんですけど、自分の目指すところはすごく高いところにあるので、うれしい気持ちはありつつも、全然まだまだだと思うことが多い日々です。
「青夏」で主演させていただくのは正直すごく不安がありました。映画初主演というのもそうですし、原作を読ませていただいたとき、やらせていただく吟蔵がすごくかっこいい存在だったので。
―― かっこいい役を演じるのが不安ですか? テレビドラマ「砂の塔~知りすぎた隣人」で演じた和樹もイケメン役でした。
佐野 和樹はクールな役でしたけど、かっこよくいる必要はなかったんです。僕、癖の強い役を演じることが多かったので、ナチュラルにカッコいいってどういうことなのかとすごくプレッシャーだったんです。しかも、こんなにガッツリ“胸キュン”シーンがある作品は初めてなので。だから、同じ事務所で尊敬している先輩の山崎賢人(崎はたつさき)さんが出演している作品をたくさん見たり、YouTubeで「胸キュン シーン」とかで検索してかっこいいハグの仕方を研究したりしましたね。恥ずかしながら(笑)。
―― 吟蔵と素の佐野さんは何が似ていて何が違いますか?
佐野 こんな例えは初めてですけど洋食と和食くらい違うかも(笑)。吟蔵は仲間といても一歩引いて「何やってんだよ」と冷静にツッコむタイプだと思いますが、僕は率先して「楽しみましょ~!」と言う人なので。ただ、いろいろな経験をへて今でこそ素の自分をさらけ出せるようになりましたけど、僕の友だちからは「(吟蔵は)昔のお前に似てるよ」と言われたので、小学校のときとかの“ちょっとカッコつけたい時期”の僕とは似ているかもしれないです。
―― 劇中で理緒を演じる葵わかなさんとは2015年の映画「くちびるに歌を」以来の共演ですね。
佐野 はい。共演といっても、「くちびるに歌を」のときは二人でガッツリお芝居することはなかったので、「青夏」が初めてみたいなものですけど。「くちびるに歌を」の合唱部メンバーとはずっと仲良くしていてプライベートでも頻繁に会ったりしているので、葵さんのことはよく知っているんですけど、お仕事している葵さんを久しぶりに間近で見て、同世代として純粋にすごいと思いました。
僕はどちらかといえばその場で相手に合わせて臨機応変にお芝居していくタイプだと思っているんですけど、葵さんは台本を読み解く力もすごいし、お芝居に関してもいろいろな引き出しを持っていて監督に提案したりもしていて。自分も頑張らなきゃと刺激を受けました。
―― 青夏の撮影で印象的だったことはありますか?
佐野 体力的なところでは、岐洲匠くんが演じる祐真と川に飛び込んで競い合って泳ぐシーンですね。夏の涼しげなシーンですけど、撮影は4月だったのでめちゃくちゃ寒くて(笑)。周りがみんなダウンジャケット着ているような中、裸になったときは「これで川に飛び込んだらどうなっちゃうんだろう」って思ったし、大事なシーンでカット割りもたくさんあるので何回もやって、僕の役者人生の中で1、2を争うほどキツい思い出になりました。
―― では、お気に入りの胸キュンシーンは?
佐野 予告でも流れてるんですけど、理緒から告白されて、吟蔵が一度断った後、「夏休み終わるまでとかもうなんでもいいから一緒にいよう」と理緒を抱きしめるシーンはいいなと。すごくこだわったシーンです。
―― 今作で描かれる「夏限定の恋」みたいなシチュエーションってどうですか?
佐野 夏が終わったら別れないといけない? めっちゃ嫌です(笑)。嫌ですけど、そういうシチュエーションはいいですよね。制約があるからこそ一緒にいたいという気持ちが強くなると思いますし。
―― ちなみに、佐野さんは夏といえば何を連想しますか?
佐野 “家族と行くキャンプ”ですね。親戚なども含めて結構な人数で毎年キャンプに行って、スイカ割りだったり魚のつかみ取りだったりサッカーだったり“THE 夏”を堪能するのが恒例なので。
―― 佐野さんは今年が二十歳の夏となりますが、今年の夏はしたいことはありますか?
佐野 もし休みがあれば、海外に行きたいです。異国の文化や空気が昔から好きなので。お仕事で行かせていただく機会も増えましたが、大人になったので友人と一緒に旅行してみたいです。行ってみたいのはイタリアとアメリカ。イタリア料理、特にピザがすごく好きで、アメリカもハンバーガー食べたいなと。
最近お仕事でフランスに行く機会があったんですけど、あちらの人はジーンズに白Tでスニーカー、サングラスというシンプルな姿でも様になっていて素直にかっこいいなと思いました。高校時代はファッションに全然興味なかったんですけど、東京に上京してきてから、いろいろな人を見て、ファッションについて考えることが多くなりました。少し前は色を使ってガチャガチャとしたファッションが好きでしたが、最近はシンプルになりました。二十歳になったからというのもあります。
―― ファッションですか。アイテムとしては何に興味がありますか?
佐野 スニーカーにハマってますね。パリでBALENCIAGAの「トリプルS」スニーカーがとても安くて興奮しましたし、最近だとアディダスとカニエ・ウエストのコラボレーションモデル新作の「YEEZY 500」がめっちゃカッコイイ。
―― なるほど。ところで、佐野さんの青春はどんなものでしたか? もし昔のそのころに戻れるとしたら?
佐野 僕はあまり過去に戻りたいと思わないですね。大変なこともあるけど常に今が一番楽しいので。でも、もし過去に戻れるのなら恋愛をしたいです。本当に、レンアイ、シテ、コナカッタノデ……。
―― 急にロボットのようになってしまった。
佐野 小学校時代、両思いだと分かっていても恥ずかしくて全然自分からいかなかったし、夏に女の子と過ごしたことなんてこと本当にないんです。それはもったいないことだったなと。昔の自分にはもっと積極的になりなさいと言いたいです。
―― イケメンの意外な悩みでした。先ほどYouTubeで「胸キュン シーン」とかで検索していると話されたのも意外でしたけど。
佐野 いや、僕それこそ中学生のころからYouTube見続けていて、(YouTubeを)見なきゃ寝られないくらい習慣化してますからね。YouTubeが大好きで、HIKAKINさんにいつかお会いしたいと思っていたら実現したりしたので、一緒にYouTuberさんとお仕事したいと思っています(笑)。
―― 何だろう、すごく親近感がわきました。先ほど目標ははるか高みにあるということでしたが、佐野さんの今の目標は?
佐野 朝の連続テレビ小説に出てみたいですね。自分が興味があるから、というのももちろんありますけど、自分のおばあちゃんやおじいちゃんに見てもらいたいです。二人ともテレビはあまり見ないんですけが朝ドラは見るので、恩返しという意味でもそこで自分の姿を見せたいです。
ただ、先ほどもお話ししましたけど、山崎賢人さんのようなとんでもなくすごい方が身近にいて、自分は全然まだまだだと感じます。例えば、山崎さんが映画に出演されていると、僕だったらその名前がクレジットされているだけで見てみたいと思うんです。同じように「佐野勇斗が出ているなら見てみようかな」と皆さんに思っていただけるようになるのが目標です。
“高校の夏休み”に巻き起こる期間限定の恋を描いた同作にちなみ、7月24日には佐野さんと葵さんが、夏休みに入る淑徳巣鴨中学高等学校の終業式にサプライズ登場。劇中の胸キュンシーンを再現するなどの“終業式特別授業”で生徒のテンションを爆上げさせていました (C)2018映画「青夏」製作委員会
―― ありがとうございます。最後に、映画について一言いただけますか。
佐野 学生時代の夏って誰にとっても特別なものだと思います。僕は恋愛しておけばよかったと後悔しているので、今もし気になる方がいるのなら、僕みたいに思わないよう、この作品のように真っすぐに思いを伝えて、皆さんにとってもステキな青夏となってほしいなと思います。
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