連載

「乱入するか?」「うしろで見てる方が好き」 2人めの少女参戦 「ハイスコアガール」4話 (1/2 ページ)

ハルオ、モテ期のはじまり。

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(C)Rensuke Oshikiri/SQUARE ENIX

 ゲーセンで燃やした青春があった。ゲーセンで育った恋があった。格ゲーが盛り上がっていた90年代を舞台に、少年少女の成長を描くジュブナイル「ハイスコアガール」(原作アニメは、当時を経験していた人も、そうではないゲーム好きも、そしてかつて子どもだった全ての大人が、共感できる悩みをたくさん練り込んだ作品です。

 今回から中学生編。新たな恋が始まります。

ゲームやるのに忙しい時代

 アニメ3話(原作1巻)で大野晶がロスに引っ越してしまい、離れ離れになってしまった矢口春雄(ハルオ)。それからしばらくたち、93年末。ハルオ、中学2年生。

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 91年の「ストII」ショックからしばらく経ち、93年から94年は新たな格ゲーが爆発的に生まれたカンブリア紀でした。

 「ストII」は「スーパーストリートファイターII」になり、キャラが追加されグラフィックも一新。同じカプコンからは「ヴァンパイア」が登場、滑らかな動きがファンを魅了しました。SNKは「餓狼伝説スペシャル」「龍虎の拳2」「サムライスピリッツ」「KOF'94」を発売し、超快進撃。多くのお店にMVS筐体(ゲームが複数本入っていて、選んで遊べる)が並びました。

 一方でセガは3DCGの格闘ゲーム「バーチャファイター」を稼働させます。ゲームでポリゴンの人間キャラを動かす発想がほぼなかった時代なだけに、ゲーマーの間に衝撃が走りました。最初期はワンプレイ200円のところもありました。

 そんな時代の中に生きていたら、ゲームバカのハルオが夢中になるのも無理はない。小遣いはたいてのめりこんでも、損だと思ってはいないはず。時代の転換点に立ち会っているのだもの、興奮しかない。

大丈夫なの? という気持ちと、うらやましい気持ちと(2巻P7)

 そんなハルオを見つめる1人の少女。同じクラスの日高小春。さほど目立つ方ではない、真面目な商店の娘。黙々と勉強を続ける日々を送る、無趣味な子です。

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 ハルオの自由奔放さを見て、ぼんやり考える。「気ままでいいなぁ…」「受験なのに焦りはないのかな…」

 生真面目すぎた小春は、本人いわく「遊びの才能が無い」。親は優しいし、店の外に設置したゲームで遊ばないかと声をかけるくらいおおらか。でも彼女には、あらゆることに対して興味や関心が湧きません。

なにが「いいなぁ」か、この時点では本人も理解できてない「いいなぁ」(2巻P10)

 小春がハルオを気にしだしたのは、最初は自分と真逆の、全力で楽しそうにしている姿を見たからです。自分は心が動かない、羽ばたけない、全力で遊べない。誰にも縛られていないのに。なのにハルオは、勉強はからっきしだけども、人生を心の底から楽しんでいる。何が違うんだろう?

 周りの人と「楽しい」を合わせられない彼女は、1人で過ごす時間を好み続けていたはずでした。

初めての体験

 93年くらいになると、ゲーセンにはゲーマーが押し寄せてきており、いわゆる「不良のたまり場」ではなくなってきていました。けどそんなことは当然一般的には知られていないわけで、「行ってはいけない盛り場」感覚の人も多かったと思います。小春はそっち側の人間でした。

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 雨の日に、駄菓子屋にたまたま来たハルオと小春。小春にとってはじめての駄菓子屋です。ハルオは負けず嫌いですが、ゲームの布教については非常に熱心。ここでは駄菓子屋のゲーム機に自分のお金を入れて、小春にプレイさせます。当然小春は初プレイ。

よりによってザンギを選ぶ初心者(2巻P21)

 小春だって、やりたかったわけではない。しかしこれが、小春のゲーム初体験です。実は小春は、類まれなるゲームセンスの持ち主。よくわかっていなくても、感覚的にも動かせる天才型の少女。彼女の才能は今後大きな影響を及ぼしていきます。

 とはいえ現時点の初ゲーム体験では、小春からしたらやっぱり「遊び」です。なのになぜハルオは、ゲームのために全てを投げ出す勢いで夢中になれるんだろう。自分は彼のように、心から何かに打ち込んできたものはあるんだろうか……?

芽生えたね…!(2巻P26)

 自分の家である商店の軒に、ゲーム機が置かれていることを伝えた所、自分がしないような笑顔でハルオは喜びました。毎日通うと大ハッスルです。

 小春「…あれ? なんで私…ちょっと浮かれてんだろ…」

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 小学校時代、大野がつらい現実から必死に逃れようとしていたところに、逃げていいんだ、とハルオが手を差し伸べてくれました。

 小春も今、似たような状況にあります。大野ほどきつい世界には住んでいないけれども、凝り固まった自分の心の中に、全力で楽しそうにしているハルオが潜り込んできて、解放してくれた。

 彼のまっすぐで正直な楽しむ姿勢に、いろいろなキャラが惹かれていきます。どんなことにせよ、熱中している人間って魅力的なものだ。

あるクリスマスの夜

 友達とのクリスマス会の日。小春は今まで行こうとしなかったようです。本当にこの子は、長い間ワクワクに出会ったことがなかったんだ、と考えるとちょっと寂しい。

 そんな彼女、ハルオがクリスマス会に行くのを聞いて、参加を決意。めちゃくちゃ意識しています。

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 小春はハルオと違い、自分や相手の気持ちにはかなり敏感な方です。彼といると楽しくなる自分がいること、わかっているのでしょう。ハルオは結局、自分の欲望のままに、クリスマス会に行かず小春の家の前のゲームをやることにしました。

 みんなとワイワイやるクリスマスに楽しさを感じなかった小春。ハルオが楽しそうに遊んでいるのを後ろから見守ることを即決。全力で楽しむハルオといることで、心に何かが芽生えそうで、ワクワクしている自分に気づいている。

見てるだけで、楽しい。あいつが楽しそうだから(2巻P47)

 寒空の下、立ってゲームしている2人。変な雰囲気だけれども、小春の口には笑顔が浮かんでいます。あまり笑わず感情をほとんど出さなかった、小春が。

 まだこの段階では、小春も「恋」には至っていない様子。そもそもハルオが何者か、よくわかっていない(原作通りなら、彼女がハルオを理解する様子は次回描かれるはず)。ゲーム自体も彼女はまだ、一回しかプレイしておらず、魅力を知りません。

 小春が探し求めているのは、まずは自分の心の解放です。ハルオといたらそれができるかもしれない、趣味で楽しむ生活が手に入るかもしれない。

 楽しそうなハルオといるのが、楽しい。ゲームありきでハルオに近づいた大野の逆で、ハルオありきで彼女はゲーム世界に引き込まれていきます。

 すごくときめく展開ですが、今後の大野VS小春がこの時点でもう見えてしまうつらさたるや。まずは小春の恋の目覚めを見届けよう。

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