ニュース

「電子書籍より紙の本を買ってもらえるとうれしい」――漫画編集者の意見に賛否 「出版のシステム自体に問題があるのでは」

「紙の本が売れないと、次巻も売れないと見込まれて部数が減る」という理由に対し、「電子書籍の売り上げも評価に含めればいいだけでは」との指摘が寄せられています。

advertisement

 「電子書籍より紙の本を買ってもらえるとうれしい」と主張する、編集者による漫画がTwitterで議論を呼んでいます。作者は『終末のワルキューレ』や『北斗の拳 拳王軍ザコたちの挽歌』を担当している山中(@ComicYamanaka)さん。個人的見解として、出版社の事情を伝えています。

「紙の本が売れないと、次巻を多く刷るのが難しくなる」という切実な問題が主な理由。ただ、「電子書籍版の売り上げは評価対象にならないのか?」といった疑問も

 ほとんどの漫画が紙と電子の両方で出版される昨今、山中さんはたまに読者から「紙と電子、どちらを買うほうが作家さんへの応援になりますか?」と聞かれることがあるそうです。山中さんの答えは「紙」で、理由は「紙が売れないと次巻の部数が減るから」というシンプルなものでした。

 その背景には、「単行本の刷り部数の決め方」がありました。当然ながら紙の本は売れないと赤字になるので、部数は売れ行きの予測から判断されます。2巻以降については前巻の販売数をみて決めるため、紙の売れ行きが悪いと部数を減らすことになるのだそうです。最悪、出しても採算がとれないと判断された場合は、連載が打ち切りになることも。

advertisement

 一方、電子書籍はというと、在庫を持たなくて済むメリットがあるので、もし売れなくとも、紙のほうが売れていれば出し続けられるわけです。こうした事情から、山中さんは「買っていただけたら紙でも電子でもうれしい」としつつも、「特に3巻くらいまでは紙のほうが売れるとありがたい」と述べています。

 この漫画には、「紙の本を買って応援したい」「推しの作品は紙も電子も両方買う」と好意的な声が上がる一方、「電子書籍を軽視してはいないか」といった批判も多く寄せられました。「紙が売れないと次につながらないのは業界のシステムに問題があるのでは」という、厳しい指摘も。ほかにも、「紙の売上だけを見て売れてないと判断されて打ち切られてしまったら、作者、出版社、読者、誰も得しない」「電子書籍の売り上げも勘案するよう評価システムを変えればいいだけ」など、さまざまな意見が寄せられています。

 批判を受けて、山中さんは「電子書籍の売上を軽視しているわけではない。『時代に逆行して紙の本を買おう』といった意図はない」「あくまでも『どちらを買ったほうが作家さんへの応援になりますか?』という質問への個人的な回答」と説明。また、「紙のほうが売れないからといって、電子版が売れていても作品が打ち切りになることはない」と、漫画の内容を補足しています。

 物議を醸した漫画は先輩の目にも留まり、山中さんは「あの言い方はよくない。あと勉強不足」と注意されたそうです。そして、その出来事を後日談として漫画化し公開しています。

 電子書籍部門にいる先輩は、「漫画が紙しかなかった時代には連載が終わっていたかもしれない作品が、電子版があるおかげで続けられる場合もある」「電子版から火が点いてヒットする作品もよくある」と、山中さんの漫画の問題点を次々と指摘。そして、「連載を続けるかどうかの指標は売上だけでなく、作品の将来性や社会的意義など、いろいろな要素がからんでくる」と説いています。

advertisement

 最後に「俺たちが扱っているのはただの商品じゃない、『作品』なんだ。相手にしているのはただのお客さんじゃない、『読者』なんだよ。それを忘れるな」と説き、先輩は去っていきました。山中さんは一連の出来事を省みて、件の漫画に不適切な内容があったと、あらためて謝罪しています。

作品提供:山中(@ComicYamanaka)さん

(沓澤真二)

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

記事ランキング

  1. 互いの「素顔を知ったのは交際1ケ月後」 “聖飢魔IIの熱狂的ファン夫婦”の妻の悩み→「総額396万円分の……」
  2. ドクダミを手で抜かず、ハサミで切ると…… 目からウロコの検証結果が435万再生「凄い事が起こった」「逆効果だったとは」
  3. 人生初の彼女は58歳で「両親より年上」 “33歳差カップル”が強烈なインパクトで話題 “古風を極めた”新居も公開
  4. 妻が“13歳下&身長137センチ”で「警察から職質」 年齢差&身長差がすごい夫婦、苦悩を明かす
  5. 「明らかに……」 大谷翔平の妻・真美子さんの“手腕”を米メディアが称賛 「大谷は野球に専念すべき」
  6. 高2のとき、留学先のクラスで出会った2人が結婚し…… 米国人夫から日本人妻への「最高すぎる」サプライズが70万再生 「いいね100回くらい押したい」
  7. 「腹筋捩じ切れましたwww」 夫が塗った“ピカチュウの絵”が……? 大爆笑の違和感に「うちの子も同じ事してたw」
  8. “膝まで伸びた草ボーボーの庭”をプロが手入れしたら…… 現れた“まさかの光景”に「誰が想像しただろう」「草刈機の魔法使いだ」と称賛の声
  9. 「ごめん母さん。塩20キロ届く」LINEで謝罪 → お母さんからの返信が「最高」「まじで好きw」と話題に
  10. これ自宅なの!? 浜崎あゆみ、玄関に飾られたクリスマスツリーのサイズが桁違い 豪邸すぎてパーティー会場と間違われたことも