連載

先輩、どれだけわたしのこと好きなんですか アニメ「やがて君になる」2・3話(1/2 ページ)

後輩が好きすぎてヘニャヘニャになる先輩かわいすぎ問題。

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(C)2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

 人を好きになるって、なんだかとっても難しい。「やがて君になる」(原作アニメは、思春期に体験する「止められない恋」と「恋がわからない」気持ちを繊細に描いた作品。しっかり者なのに好きな人に甘えてしまう先輩と、人を好きになれない後輩の、ちょっぴり厄介なガールズラブストーリー。

今までのあらすじ

 高校一年生の小糸侑(ゆう)と、二年生の七海燈子。クールで優等生っぽい感じだった燈子は、侑のことがすっかり大好きになり、デレデレ。登校中に唐突に突然キスをするくらい。一方で侑は、人を好きになって夢中になる感覚がわからない子。強烈な「好き」を向けられたものの、取りあえずそんなに嫌ではない、かといって大好きというほどでもない、くらいの感じで燈子と接することに。

 燈子は生徒会の会長選挙に立候補した時、唐突に侑を推薦責任者に指名。燈子の「好き」の暴走は止まらない。「私のことも好きにならない それでいいの 好きでいさせて」。彼女の思いを取りあえず受けとめることにした侑は、応援演説の壇上に上がることになる。

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先輩わたしのこと好きすぎ問題

 燈子先輩の「好き」の思いが、3話ではもりもり強くなっていきます。正直、全部がニヤニヤポイント。例えばこのちょっとした下校のシーン。

こういうところで意識の差は出ますね!(1巻P115)

 先輩後輩関係、あるいは友人みたいなもの、という感覚の侑は、渡された飲み物を気にせず飲む。一方燈子先輩は、ふと後から、間接キスなのに気付いて、顔を赤らめながら飲む(無理やり唇奪っちゃうような人ですが!)。この時の2人の顔の対比が絶妙。侑は燈子先輩がドキドキしていることに気付いてすらおらず、平然としています。

 燈子先輩はそこに、もどかしさを全く感じていません。自分がどんなに好意を寄せても侑はそんなに気にしないからこそ、心地が良いと思っている。燈子先輩にとって初めての、人を好きになる感覚を、侑が否定も肯定もしない、というのが重要。

 侑の家は書店です。燈子先輩はそれを知った後、「普通に買い物に」とか言いながら、彼女のお店を訪れます。それを知った侑。「先輩ん家って二駅むこうでしょ?」第一ツッコミ。

 燈子「おみやげを 旅行の わたせたらいいかなと」侑「だったら先にメールでもくれたらよかったのに もしかしたら出かけてたかも」第二ツッコミ。

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 燈子「そしたらまぁ 明日学校ですぐ会えるし」と焦る先輩に侑「だったら明日学校でよくないですか?」第三ツッコミ。

すごい切り込み方するねえ君は(1巻P134)

 侑の「どれだけわたしのこと好きなんですか」と言うセリフは、この作品ならではのインパクトがあります。こういうフラットで、誰かを特別扱いしないところが、侑の魅力だと燈子先輩は感じています。

先輩、恋する顔ー!(1巻P135)

 侑にこんないわれ方をした直後に「大好きだよ」と言う先輩の顔ときたら! 相手からの返しが必要なんじゃない、「好き」な気持ちを体感できているのが、幸せでたまらない。

 恋する乙女というよりは、無邪気な子供のよう。ずっとこの時間が続けばいい、と言いたいところですが、お互いそうはいかないですよね。

すごく好きじゃなくて、どっちかというと好き

「どんだけだよ」っていう余裕(1巻P137)

 ここで象徴として出てくる星空。嫌いな人ってあまりいないと思います。大好きな人でない限りは「どっちかというと好き」という気持ちを抱きやすい景色の一つ。

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 燈子先輩がおみやげに買ってきた家庭用プラネタリウムを見ながら、侑は「普段要領いいくせにほんとどんだけだよ」と、これまた俯瞰気味の余裕な発言。

 今の時点では、侑にとって先輩は「わたしのことが大好きすぎるかわいい人」という捉え方になっています。2人きりだと自分の方が大人びている、という意識すらあります。

 本当に大好きになると、燈子先輩のように心の余裕はなくなる。星空のように「どっちかというと好き」と考えられるのは、余裕があって客観視できている状態です。

 燈子先輩は実は弱い人、というのを知っている侑は「誰かに頼ったらどうですか?」と言ったこともあります。

 侑「おもっきし私情でわたしを責任者にしたり そのくせ後から不安になったり あと結構顔に出ますよね すぐ赤くなるし だから弱いところ見せられたって今までと何も変わりませんよ 大丈夫です」

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ときめく絵柄ですが、相思相愛とかじゃないんだなあ(1巻P158)

 この状況は「恋をして甘えん坊な先輩」と「弱っている人に優しくしている侑」の関係。あまつさえ燈子先輩がここまで近づいている状態でも、侑は極めて冷静に「なぜ先輩は私のことがこんなに好きなのか」の分析をしています。

 侑「本当は弱いくせに たった一人で演じきろうなんて どこまで意地っ張りで不器用なんだ あの人が助けを求められるのがわたしだけだとしたら そんなの」

「特別」がわからない彼女の選択(1巻P172)

 侑は、燈子先輩のそばにいることを決意しました。と言ってもこれ、侑が燈子先輩を好きになったからではなく、「助けてあげよう」という感覚です。

 燈子先輩の「好き」は、今は「自分の満足」のため、というねじれがある。恋の壁打ち超楽しいー! みたいな感じ。侑の気持ちは「そんな困っている先輩のこといっちょ助けてあげますか」みたいな達観が強い。

 原作のアニメ3話該当部分は、頻繁に「普通」という単語が出てきます。非常に曖昧な言葉であると同時に、自分に向き合わない逃げの単語に見えます。

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 特に侑にとっての「普通」は、「特別」の対比の言葉のようです。生徒会役員にならないと言っていた侑が、燈子先輩のために「先輩の助けになりたいです」と演説の壇上で宣言した時、燈子先輩は言います。

 燈子先輩「やっぱり優しすぎない?」

 侑「……普通ですよ」

 それは全く普通じゃないぞ、侑よ。侑の「特別」な感情への動きは、既に始まっているようです。

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