「乳は血からできてる」って知ってた?(あれ、それじゃなんで色は全然違うの?)
青い血の生き物もいるらしい。
牛乳や、ヒトが出す母乳が、元は血液から作られていることはご存じでしょうか?
牛もヒトも、血液といえば赤いですよね。しかし、そこから作られる乳は白く見えます。一見全く別のものに思うかもしれませんが、乳は血液から作られているのです。
これは、一体どういうことなのでしょうか? なぜ元は同じなのに、違う色に見えるのでしょうか。
血液はなぜ赤い?
そもそも血液が赤いのは、ヘモグロビン色素を含む赤血球が赤いためです。
血液を構成する成分は、大きく「血球成分」と「血漿(けっしょう)成分」に分けられます。血漿成分とは、血球成分を沈殿させると分離する液状成分のことで、これだけだと黄色く見えます。
もう一方の血球成分は血液全体の体積の45%を占め、このうちの大半は赤血球です。赤血球は、赤いヘモグロビンを使って酸素を運搬しています。このため血液が赤く見えるのです。
ちなみに、タコやイカなどはヘモシアニンという青い色素を使って酸素を運ぶため、その血液は青く見えます。
乳はなぜ白い?
前段で「血液の赤は赤血球の色」という話をしましたが、これは裏を返せば「赤血球がなければ赤くない」ということになります。つまり、乳は赤血球を含まないから赤くないのです。同じく血液から作られる汗や尿も、通常は赤血球を含まないため透明に見えます。
ではなぜ乳は、汗や尿とも違って白く見えるのでしょうか?
牛乳などの乳は「コロイド溶液」に分類されます。「コロイド溶液」とは、粒子(乳では脂肪分やタンパク質)が溶液中に分散している状態を指します。食塩水など、真に「溶けている」状態とは異なる、ということです。
分散した粒子に当たった光は、散乱現象を起こしてランダムに進行方向を変えます。このとき、微粒子にはさまざまな色の光が当たるのですが、この散乱現象は粒子に当たるごとに繰り返されます(多重散乱)。
多重散乱が起こり、さまざまな色(=波長)の光が混ざった結果、われわれの目には白いものとして見えるようになります。波長のバラバラな色をほぼ均等に混ぜると、白い光になるためです。
つまり、乳が白く見えるのは白い色素が溶けているためではなく、たくさんの粒子が分散していることによる光学的現象であるといえます。
なお、ヒトの乳は牛乳に比べ、コロイド状態を作るのに関わる「カゼイン」というタンパク質の割合が小さいです。ヒトの乳に牛乳ほどはっきりとした白さはないのはこのためであると考えられます。
参考文献
第21回 青空・夕焼け・白い雲|CCS:シーシーエス株式会社
石井哲也(2005)「カゼインミセルの構造および性質に関する最近の研究動向」, 2005年54巻1号, p. 1-8, 日本酪農科学会(PDF)
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