人体切断や空中浮遊で「戦う」! “ヤバい人たち”が集うマジックの世界大会では何が起こっているのか?(3/4 ページ)
「ステージで蝶を出したマジシャンがいたんですよ。そしたら……」
加えて、もちろん「技術のレベル」。斬新な技法だけではなく、マジシャンの業界では有名な技法でも、とてつもなく難しいことをうまくやっていたら評価が高くなります。
あとは、マジックはもちろんお客さんが見るものですから、「ショーとしての完成度」も評価対象ですね。演技の構成や演出の上手さ、エンターテイメントとしての楽しさが評価項目になっています。
――技術点とありますが、マジックの場合「技術」と「ギミック(道具の仕掛け)」の区別はできるんですか?
審査員が技術と思えば技術として評価されますし、ギミックと思えばギミックとして評価されます。その想像すらつかない場合は、審査員の知識を超えた新しい現象ということになりますから、それは「純粋な不思議」と言ってよいのではないでしょうか。
もし純粋な技術を評価してもらいたい場合は、ギミックを使っていないことを審査員にアピールするのも重要です。
例えば、レナート・グリーンというスウェーデンのマジシャンがいます。彼は1988年のFISMで大変不思議なカードマジックを披露したのですが、仕掛けのあるトランプを使っているのではないかと思われて入賞できなかったんですね。
その雪辱を果たすため、3年後のFISMで彼は、トランプに仕掛けがないことを審査員に改めさせた上で同じマジックを披露したんです。結果は見事優勝でした。
このように、本当は技術だけでやっているのにギミックを使っていると勘違いされることを、仲間内では「審査員バグ」と呼んだりしています。
――どういう演技がオリジナリティが高いと評価されるのでしょう?
カップアンドボールというマジックを例にとりましょう。カップの中に入れた玉が消えたり移動したりする、昔からあるマジックです。
2003年のFISMでは、これを透明なカップでやる人が現れて業界騒然となりました。今まで誰も見たことのなかった「透明カップアンドボール」は、ビジュアルが強くクリーンで、世界中で話題になったのです。
最近では、このカップアンドボールはさらなる進化を遂げています。例えば、2人組でやる。途中で2人がケンカし、最後には仲直りするというストーリーに乗せて演技をします。
あるいは、水槽にカップを沈めて演技をする。ボールの代わりに水中の空気の泡を使うのですが、泡がカップを移動するんです。最後はレモンの代わりに水草や金魚が出たりする。普通にやっていることを単に水中で行うのではなく、水の中だからこそできる現象を見せているというのがポイントですね。
――競技マジックにはトレンドはあるんですか?
2012年に行われたFISMでは、ステージ部門の上位を「静かな演技」が占めていたんです。それから数年間はピアノ曲をBGMにした演技がはやりましたね。
現象でいうと、2014年あたりから「じわじわ系」が増えました。シルクの色が変わるという現象でも、ぱっとは変わらず、端っこからじわじわと色が変わる。そういうトレンドは出ては消えての繰り返しですね。
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