連載

恋人同士じゃないけれど、そっちからもキスをして 「やがて君になる」9話(1/2 ページ)

どこが一線なんでしょうね……。

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(C)2018 仲谷 鳰/KADOKAWA/やがて君になる製作委員会

 人を好きになるって、なんだかとっても難しい。「やがて君になる」(原作アニメは、思春期に体験する「止められない恋」と「恋がわからない」気持ちを繊細に描いた作品。しっかり者なのに好きな人に甘えてしまう先輩と、人を好きになれない後輩の、ちょっぴり厄介なガールズラブストーリー。

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今までのあらすじ

 高校一年生の小糸侑(ゆう)と、二年生の七海燈子。クールで優等生な燈子は、侑のことをすっかり大好きになり、デレデレに。

 超完璧優等生に見えて、実は頑張りすぎている部分がある燈子。侑は彼女の支えになろうと考えて、生徒会を手伝うことに。

 同じ生徒会にいる佐伯沙弥香は、燈子のことを助けようと一生懸命に働いていた。侑と沙弥香はお互いに、燈子を先輩として、友人として、いいところ悪い所を打ち明け合う仲に。

 生徒会はバタバタと忙しいまま、体育祭の開催準備を始める。

甘えたくて仕方ない、キス

 今回はキス回です。

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えっ、えっ(3巻P122)

 以前アニメ4話で、燈子が生徒会室でおもむろにキスを求めたことがありました。「侑がいつも許してくれるからもっと欲しくなっちゃう」。侑としては迷いつつも「興味がないって言ったら嘘だし」と言って、受けていました。

 それがまさか、続いていたとは思わなんだ。体育倉庫に侑を押し込んで、そのまま抱きしめて、アゴクイして唇を奪うっていうね。「いい?」「……もー」の会話で通じるあたりがもうね。慣れてきているんだろうか。

 今回は2人のキスのしぐさ自体に、心理の変化の大きなポイントが描きこまれています。

 最初の画像のように、2人のキスは唇を重ねる程度のものでした。基本的に侑は、したいのではなく「許してあげている」という状況です。

 ところが燈子先輩、暴走止まりません。

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2人の口の形に注目(3巻P123)

 侑が流されるのをいいことに、燈子は唇だけでなく、更に深く侵入しようと試みます。さすがにそれはNGだと跳ね返す侑。「いい加減にしてください! 甘えすぎです!」。嫌です、ではないのがミソ。

 もうここまできたら、客観的には恋人の行動と同じだろう、という気も。この段階では、どこまでが一線かは侑はいまいちよくわかっていません。まあキスに関しては、燈子側の最初の告白時からしてるからなあ。感覚は緩めかも。

ただキスをするのと、違うのだよなあ(3巻P124)

 甘えまくる燈子は、ぐいぐい一線を越えようとしますが、さすがに拒絶されます。そこで言った提案が「侑からしてほしい かも キス」

 最初は侑は「自分からするキス」も「燈子からするキス」も、同じようなもんじゃないの? と思っていたようです。燈子にとってはそこは大違い。そして2人の、相手への「好き」の感覚の違いがここであらわになります。

好きになってはいけない、キス

こんなに近いのに、ラブラブなキスじゃないんだよなあ(3巻P164)

 体育祭が終わった後、ほしがりさんの燈子はすぐさま侑を体育倉庫に連れ込んでキスをせがみます。以前までは、まあされるのもするのも変わらんでしょ、みたいに考えていた侑ですが、ここに来て気付きます。

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 「だめだ だめってなにが? わからない でも ここを超えたらいけないことだけわかる」

 「侑は燈子を好きにならない」という前提条件が彼女を縛ります。好意は向けたいけど、向けられるのはいやだ、という燈子に対して、侑はあくまでも受け止めるだけの姿勢を保っていました。燈子もそこはわかっているので、ようは侑に演技してほしいというわがまま。

 けれども侑は既に、燈子との接触が演技の領域からはみ出してきていることに、本能的に気付いています。

 「やっぱりわたしからするのは違う気がするんですけど」「だって好きでもないのにするとか ちょっとどうなんだろうって」

 「好きでもない」の言葉に、彼女自身のポジション修正が見られます。自分は「先輩のことが好きではないけれども、嫌いにならない後輩」のままでなければいけない。もし自分からキスをしたら、そこが崩れてしまう。

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これはOKらしい(3巻P167)

 燈子の興奮が止められず「私の好きにするからね」と舌を絡めた時は、意外にもOKだった様子。以前そうしようとした時、口を閉じて拒絶していたのと比べると、侑側に変化が見られます。

 「嫌ではないです というか……どっちかっていうと……きもちいいし」

 身体的な「きもちいい」という感覚よりも、侑は「心地いい」の感情が強いようです。燈子の好意を注がれ、ものすごく優しくされ、求められ、体温を感じることはやっぱりうれしい。でも既にそれだけじゃないんだよなあ。

 ブレーキを踏んで、自分側の感情は一切出さないようにし続けるのは、彼女が「先輩を好きではない」立場を貫くのに必死だから。

 「好きっていわれても好きって返せないわたしのことが好きだって そう言ってくれるから 今はもう寂しくないかな」

 人を好きになれないことがコンプレックスだった侑。それを好きだと言う燈子。だったらぴったりなんだろう、と本人は思い込もうとしていましたが、そんなことはない。自分の変化に気付きつつ押し込めるのは、とても寂しいことです。

先輩と親密な関係になっても、寂しさは募るばかり(3巻P161)

 周りから見て露骨におかしさを感じるくらいに、寂しい顔をする侑。燈子とキスを繰り返しても、心が満たされたわけじゃない。自分の思いをずっと封印したまま過ごす彼女の様子は、幸せとはいえません。

 今のままの関係を保ち続けるべきか否か。生徒会演劇に向かうにつれて、少しずつ2人の意識は変わっていきます。

 ……ドキドキする回だった……ほんと暴走するのはよくわかるけど、あなた立場的にバレたら大変なんですよ燈子先輩、ちょっとは気を付けて! いやまあ、好きな人を求める気持ちはわかるけどさ。優等生の仮面を脱いだ先輩は、情動に身を任せきっている感がありますね。セクシーではあるんだけど、どこか子供っぽいような。

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