「時計の針」はどうして右回りになったのか?
どっちでもいいからこそ、気になる由来。
「時計回り」と「反時計回り」、どちらがより自然だと感じますか?
あくまで傾向にすぎないようですが、人間は反時計回り・左回りのものを好むとされています。コンビニの商品の配置も、この感覚を利用しているんだとか。
陸上のトラックも左回りですよね。心臓を内側にして回転すると遠心力を感じにくい、という理屈のようです(ヒトの心臓は左寄りについているため)。
何となく左回りの方が収まりがいい気がするのに、どうして「時計回り」は右回りと決められているのでしょうか。
右回りに影が動く「日時計」
「時計回り」の謎を解く手掛かりは、原始的な時計にありました。
人類が初めて時計を生み出したのは紀元前3000~4000年頃、エジプトの地。更にその前の、古代バビロニアにまでさかのぼるという説もあります。
この「時計」とは、日時計のこと。地面に棒を立て、落ちる影の向きから時間を知る装置です。数千年前の人々は、影の角度や長さの移り変わりから時を判断し、生活を営んでいました。
ここで日時計の影の動きを考えてみましょう。観測者は北を向いているものとします。
太陽は東から昇るので、朝には影は西側(観測者から見て左側)にあります。昼になると太陽は南を通過し、影は正面方向にできます。西の空に沈む頃には影は東、すなわち右側。
日時計の影は、太陽の動きとともに左から右へ、右回りの動きをします。これが近代のアナログ時計にも受け継がれ、「時計回り=右回り」という形が広まったのです。
あれ? 南半球では逆に回るよね?
ここまでの話は、全て北半球で観測していることを前提にしています。南半球では太陽が北の空を通るので、日時計は逆に左回りの動きをするのです。
ではなぜ「北半球仕様」の時計が一般的になったのか?
オランダの物理学者・ホイヘンスが振り子時計の製作に成功したのが1656年頃。大航海時代を経て、世界の覇権を握っていたのはヨーロッパの国々でした。南米はスペインとポルトガルが分け合い、オーストラリアやニュージーランドに至ってはまだ西洋人が上陸していません。
時計が発明された当時、文明の多くが北半球にありました。なんだか乱暴な論理ですが、これが時計が右に回るようになった最大の要因のようです。
おわりに
時計が発明された頃、もしも文明の中心が南半球にあって、オーストラリア大帝国やブラジル帝国が北半球の国々を支配していたとすれば。「時計回り」が左回りで、「反時計回り」が右、なんて世界も存在し得たのかもしれません。
ほかの道具の例に漏れず、時計も年月を経て進化を遂げています。スマートウォッチの登場、信じられないほど精緻なデザインの腕時計、あるいは、「時計の針」という概念がなくなる可能性さえ考えてしまいます。
「アナログ時計? あんな日時計の名残みたいな代物なんて」そんな会話が交わされる日も来るのかもしれませんね。
参考文献
織田一朗(1994)『時計の針はなぜ右回りなのか』草思社
制作協力
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