レビュー

高橋一生×斎藤工×滝藤賢一「東京独身男子」にSNS賛否激烈 「結婚は女に自由を与え、男から自由を奪う」?

高橋一生はこじらせ男子、斎藤工はED気味? 滝藤賢一港区おじさんまさかのハマり役。

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 いろんな意味でヤバいドラマが始まったぜ。高橋一生、斎藤工、滝藤賢一が「あえて結婚しない男子」、略して「AK男子」を演じる「東京独身男子」(テレビ朝日系)が、4月13日(土)23時15分からスタートした。

 脚本は、映画「羊と鋼の森」、ドラマ「中学聖日記」「私 結婚できないんじゃなくて、しないんです」(ともにTBS系)の金子ありさ。第1話の演出は、ドラマ「奪い愛、冬」(テレビ朝日系)、「それを愛とまちがえるから」(WOWOW)の樹下直美だ。

高橋一生、斎藤工、滝藤賢一が「あえて結婚しない男子、略してAK男子」を演じる イラスト/たけだあや

 まずヤバいのは、AK男子たちの価値観だ。

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 メガバンクのアナリスト・石橋太郎(高橋一生)は、別れた恋人がいまだに自分を好きだと信じている。離婚して独身市場に舞い戻った審美歯科医院の院長・三好玲也(斎藤工)は、家事や育児を「手伝う」と言う。大手弁護士事務所のボス弁・岩倉和彦(滝藤賢一)は、父親の介護をさせるために女性と結婚しようとする。そして全員が、自分を格付けAランク以上の優良男子だと自負している。

 時代は平成から令和になろうというこの2019年春に、その価値観解き放っちゃいます!? SNSの反応を見ると、げんなりして見るのをやめたという人もいたようだ。しかし、ここは「中学聖日記」で愛と倫理の落としどころを描き切った脚本家・金子ありさを信じて見続けたいところ。

 女性との関係に自分勝手な思い込みを持つ彼らを、玲也の妹・かずな(仲里依紗)は冷ややかに見る。「結婚は、女に自由を与え、男から自由を奪う!」と言って乾杯する3人は、かずなによって「AK男子」と名付けられた。

港区おじさん・滝藤賢一に包丁と介護問題がドーン!

 もうひとつヤバいのが、このドラマの配役だ。特に、滝藤賢一が絶妙。

 出演者が発表されたとき、和彦を演じる滝藤賢一はおじさん好きのいわゆる「枯れ専」女子向けかと考えていた。世間的にイケメン扱いされている高橋一生や斎藤工とは、少し毛色が違うなと。だが、ドラマ本編を見て納得。うんちくを言いながらワインとフランス産チーズのマリアージュを楽しみ、ソファに寝転がる美女(松本若菜)の口に自分がかじったチーズのかけらをソッと入れる。プロポーズをするときにはレストランなどではなく、高級感ただようありふれた日常の中にダイヤがぎゅうぎゅうと並んだ指輪を忍ばせる。これ、雑誌『東京カレンダー』を妄信しているおじさんたちが憧れるシチュエーションだ!

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 仕事で成功し、年下の美人な恋人はいるが女性に不自由せず、男子には慕われ、まだまだかっこつけて遊びたいバイタリティーがある。港区おじさんじゃないか。枯れはじめつつも心なしか肌と髪にツヤのある本作の滝藤賢一は、『東京カレンダー』の登場人物のイメージにぴったりだ。

 そんな港区おじさん(風の)和彦が、ある日突然「父親の介護」という問題に直面する。いや、和彦が見て見ぬふりをしてきただけで、本当は突然ではないのだろう。介護は女性にやってもらおうと考えていたことが透けて見え、彼女は包丁をドーン! とまな板に刺して和彦の元を去っていった。そして、そんなオロオロとした和彦の様子は、彼を慕う太郎や玲也にも不安を与えていく。

 キラッキラの港区おじさんに「親の介護問題」という現実をぶつける容赦なさ。本作が何をえぐり出していくつもりなのか、ワクワクする。

ドリームアイランドのAK男子たちが、オシャレな部屋でワチャワチャ勝手なことをほざく イラスト/たけだあや

「いまのままで十分、独身生活幸せ」なのか?

 和彦の親の介護問題のほか、太郎は、斜に構えて一番好きだった人を逃がして、30代後半にしてこじらせ男子になってしまった問題を抱えている。仕事柄、何でも「メリット・デメリット」に分類して考えてしまい、しかもそれが的を射ていない感じなのも心配だ。

 そして、女性への興味を隠さない玲也は、性欲に反して性機能の衰えを実感して落ち込む。ナンパした弁護士・透子(桜井ユキ)と診察室で絡み合うものの、股間に違和感を覚える玲也。歯科診療ユニットのうがい用水道から雫が一滴垂れることでEDを表した、美しいんだか面白いんだかわからない演出。玲也の職業が歯科医師であることが、早速生かされている。

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 「男には、結婚適齢期ってないから」と上から目線だった3人は、自分たちにも適齢期があるのかもしれない……と考えるようになっていく。

 かずな「まあ、太郎ちゃんたちはドリームアイランドの住人だからなあ」

 太郎「はあ、何それ」

 かずな「この世で一番恋愛に夢持ってる。それは、AK男子。いつか俺にふさわしいプリンセスが現れる、最高の女がいるはずだーって夢見てる。ふふっ」

 ドリームアイランドのAK男子たちが、オシャレな部屋でワチャワチャと自分勝手に発言している様子に、ドラマ「東京タラレバ娘」(日本テレビ系)の倫子(吉高由里子)・小雪(大島優子)・香(榮倉奈々)を思い出す。

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 「東京タラレバ娘」は、倫子たちが「人にはそれぞれの幸せの形がある」と気づいて終わった。「東京独身男子」の場合、「いまのままで十分、独身生活幸せです!」と豪語して始まっている。

 3人全員が結婚するオチはつまらないが、全員がいまの自分たちを否定して“改心”していくのも都合が良すぎる感がある。この困った男子たちを、金子ありさや演出陣、俳優陣がどこに導いていくのか、見守っていきたい。

むらたえりか

宮城県出身のライター・編集者・ハロヲタ。 Twitter

たけだあや

イラスト、粘土。京都府出身。

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