レビュー

「東京独身男子」高橋一生が気付く2話 「何を考えているかわからない相手は、自分のことを好きじゃないだけ」

気持ちが見えない元恋人に悶々とする高橋一生「でも、そこが好き!」って、あんたアホ女子か。【訂正】

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 4月20日(土)23時15分から放送の「東京独身男子」(テレビ朝日系)2話。独身メガバンカー・石橋太郎を演じる高橋一生の、くるくる変わる表情や細かいしぐさに目を奪われていると、あっという間に1時間過ぎてしまうドラマだ。

滝藤賢一、高橋一生、斎藤工のかもし出すのは「いい意味で「トレンディドラマ感」(斎藤工談) イラスト/たけだあや

 愛する人の前で自分が死ぬシーンを演じる太郎。「ありがトゥー! カクッ……」とご臨終の擬音までせりふにする太郎に、非難ごうごう。

玲也「古っ!」

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和彦「昭和のコントか!」

玲也「平成も終わるよ!」

太郎「ヒューヒューだよ!」(語尾にハートがついていたように聞こえた)

 フー! フー! と息で前髪を揺らしながら、太郎はうれしそうに言う。トレンディしぐさだ。今回は白目をむくシーンも複数パターンあったし、高橋一生、さすが細かい演技や表情の引き出しが多い。

恋に夢見る乙女な高橋一生

 太郎は、元カノの舞衣(高橋メアリージュン)を忘れられない。一番好きな人を失って傷ついた経験から、もう同じように傷つきたくないと自己防衛している。自分に声をかけてくる女性が全員自分を狙い、値踏みしていて被害妄想気味だ。

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太郎「確かに舞衣は、何考えているのかわからない!」

かずな「でしょう!?」

太郎「でも、そこが良いのかなって」

かずな「……」

 「恋人が何を考えているかわからない。でも、そこが好き!」ってのろける女子か。かずな(仲里依紗)が1話で、太郎たちAK男子(あえて結婚しない男子)について「この世で一番恋愛に夢持ってる」と言っていたことを思い出す。確かに、太郎は恋に夢見る乙女だ。

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 今回の舞台は温泉だ。舞衣の婚約者・立樹(早乙女太一)の登場で、太郎は少しだけ夢から覚める。何を考えているかわからない舞衣について、立樹は「わかりやすいから、舞衣は。今何考えてるか、元気があるかないか、すぐわかる」と言う。

立樹「もし舞衣があんたを選んだら、ぶっとばす! なんて。身を引くよ、しっぽ巻いて退散」

太郎「適当言って」

立樹「いや、マジで。やー、なんつっても、舞衣の幸せが一番だから」

 がさつで年収低そうで幼稚なヤツだと思っていた立樹に、人間力の違いを見せつけられてしまった。その後、温泉の出口で会った舞衣は、赤い浴衣を着ていた。太郎が選んだ青い浴衣ではなく、立樹が選んだ赤い浴衣だった。

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高橋一生、完敗 イラスト/たけだあや

高橋一生、女も意思のある人間だと気づく

太郎「で、気づいてしまったわけよ。舞衣は、何を考えているのかわからないんじゃなくて、ただ俺のこと、そこまで好きじゃないってだけ。だって、普通好きならわかるよ。好きって、溢れちゃうもんだからさ。でも、それが伝わらないってことは、そこまで好きじゃないってこと」

玲也「太郎ちゃん、それ真理かも」

 女は怖い・気持ちがよくわからないと思っていた太郎。女を落とすゲームの景品か性の対象くらいにしか思っていなかった玲也(斎藤工)。女を介護要員としてあてにしている和彦(滝藤賢一)。3人が、女性にも個別の感情がある(自分には見せていないだけで)ということに気づいた瞬間だ。

 「東京独身男子」、こうしてAK男子たちの困難と女性をぶつけることによって、彼らが「女性も意思がある人間である」ということに何となく気づいていく物語なのかもしれない。

 玲也の困難は、モテて女と遊びまくってきた経験を持ちながら、男性更年期障害になってしまったこと。和彦の困難は、自宅介護の必要な父親と同居していること。さらに、2人は同じ女性・透子(桜井ユキ)を狙っていたことが発覚した。透子は2人にとって、何をもたらす女になるのか。

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リアルじゃない、だからAK男子を笑える

 1話放送後のSNSでは「リアリティがない」という批判的な感想も散見された。舞衣が太郎を忘れたふりをしたり、いきなり立樹との婚姻届を持ってきたりと無軌道な行動をしたせいか。それとも、メガバンカー、審美歯科医師、弁護士が「あえて結婚しない」とタワマン風の家でキャッキャしているせいか。

 4月25日発売の雑誌「UOMO」の表紙と特集ページに、高橋一生、斎藤工、滝藤賢一の3人が登場している。インタビューの中で、斎藤は本作のリアリティラインについてこう言及した。

斎藤 いい意味で「トレンディドラマ感」がありますよね。近年ドラマや映画がリアリティ追求型に進む中で、原点回帰じゃないですけど「台本あっての演者」というドラマ本来の仕立てを僕らも楽しめています。”(雑誌「UOMO」2019年6月号 P.46より)

「UOMO」2019年6月号表紙を飾るAK男子たち

 リアリティ、なくて正解なのだ。リアリティを追求していないからこそ、高橋一生は、ふり幅大きすぎる百面相を見せてくれる。斎藤工は、万年発情期のような感情の起伏を見せてくれる。滝藤賢一は、雑誌『東京カレンダー』から出てきたような港区おじさんでいてくれる。デフォルメというやつだ。

 彼らが自縄自縛で悩んでのたうち回る様子を笑えるのも、リアリティを求めていないからなのかもしれない。だって、AK男子をリアルに描かれたらもっとシリアスな作品になってしまう。

 AK男子たちが見せてくれる虚構から、今回の「相手のことがわからないのは、相手が自分を好きじゃないから」というリアルにつながる点を見いだす。それが、本作の楽しみ方のひとつなのだろう。第3話は、5月4日(土)23時15分から放送。

【4月28日追記】初出時、第3話放送を4月27日としておりましたが、5月4日の誤りでした。修正いたしました。

むらたえりか

宮城県出身のライター・編集者・ハロヲタ。 Twitter

たけだあや

イラスト、粘土。京都府出身。

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