レビュー

「ラジエーションハウス」3話 マンモグラフィだけでは見つからない乳がんがある――検査の大切さを訴えた神回

「現実がよくわかった」「検査の予約を入れた」の声。

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 これはいい。「ラジエーションハウス~放射線科の診断レポート~」(フジテレビ系)第3話が4月22日に放送された。苦戦続きの今季月9、ここからエンジンがかかるかもしれない。

原作は名作回、ドラマは期待を裏切らなかった イラスト/まつもとりえこ

第3話あらすじ「デンスブレスト」とは

 結婚を控えた女性誌編集者・葉山今日子(内山理名)がマンモグラフィ検査にやってきた。母と祖母がガンに罹患していることから、今日子は毎年検査を受けていた。不安そうな今日子を和ませようと検査中に話しかける広瀬裕乃(広瀬アリス)。やり取りを聞いていた黒羽たまき(山口紗弥加)は「ここはおしゃべりを楽しむ場所じゃない」と裕乃を叱った。

 今日子は日本人に多いデンスブレスト――乳腺密度が濃い女性だった。読影した甘春杏(本田翼)は鏑木安富(浅野和之)に相談したものの、病変が見つからないことから「異常なし」との診断結果を下した。

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 そんな中、五十嵐唯織(窪田正孝)は今日子のマンモ画像に目を止める。今日子がデンスブレストであること、さらに母親と祖母もがんを患っていたことから、唯織はなるべく早く超音波検査を受けてほしいと今日子に伝えた。

 超音波検査の結果、今日子には異常は見られず、さらにMRI検査をすることに。結果、彼女の右胸から腫瘍が見つかった。恋人の平田公太(松下洸平)にどう伝えればいいのか、もっと素敵な女性と出会えるのに申し訳ない、とこぼす今日子。しかし、手術のことを伝えられた公太は、今日子の命に別状はないと知って安堵し、2人は寄り添いながら帰っていった。

 後日、今日子はデンスブレストについて詳しく説明した特集記事を発表し、その記事は大きな反響を呼んだ。

2人の女性を対比する形で

 2話レビューで「主役が放射線技師なので、検査し、病気を見つけるところまでがピーク。盛り上がりに欠けるきらいがある」と指摘したが、今回で認識を新たにした。指摘した点は、逆に今作の長所でもある。これまでの医療ドラマが描いたのは「病気が見つかってからどうするか」ということ。今作は病気が見つかるまでの過程にフォーカス、病気をどのように発見し、どんな覚悟で治療に臨むのかを丁寧に描く内容だ。見ていて自分に置き換えやすいし、実生活に反映することもできる。

 「ラジエーションハウス」の実写化を知った際、真っ先に期待したのは今回の乳がんのエピソードだった。ドラマでは、この名作回を今日子とたまきという2人の女性を対比する形で描いた。

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 結婚間近で幸せのピークにありながら、乳がんで右胸を全摘することになった今日子。一方、独身でアラフォーのたまき。検査の結果、たまきは乳がんではないことがわかった。診察後にすれ違う2人。ついさっきまでは、両者共に乳がんの不安に苛まれていた。でも今は、がん患者とそうではない人。立ち位置が異なる2人だ。途方に暮れる今日子に、たまきはたまらず言葉を掛けた。

 「今や、乳がんは11人に1人がなる病気です。決して、珍しい病気じゃありません。でも、お互いに結婚したいと思えるほど好きになれる相手に出会える確率って奇跡に近いと思うんです。40年近く生きてきましたけど、私、そんな人1人も出会わなかったもん。だから、どうかその奇跡を大事にしてください。私、生きるために決断したあなたを心から尊敬しています

 相手のプライベートに立ち入って会話した裕乃を「技師の仕事じゃない」と責めたたまきが患者のプライベートに踏み込んだ。患者の苦しみを知って放っておけなくなり、今日子の気持ちに寄り添った。

 

マンモグラフィ検査の大切さをしっかりと伝えた イラスト/まつもとりえこ

「デンスブレスト」って知らなかった

 自分の立場に今日子を置き換えると、尋常じゃない恐怖心がわかると思う。当初はマンモグラフィ検査で「異常なし」と診断されていた。突如、そこからの乳がん発覚である。「異常なし」には「ただし、この画像でわかる範囲では」というエクスキューズが付くのだ。マンモグラフィ検査では見つからない乳がんがあるということ。誰よりも真剣に検査を受けてきた今日子の無念さは計り知れない。多くの人にとって「デンスブレスト」という言葉自体が初耳だったのではないだろうか。第3話は女性に対する啓発の役割も担っていた。医療の常識は患者の非常識とも言える。

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 杏の「1人の患者だけを特別扱いするわけにはいかない」と、唯織の「1人でも多くの患者の病気を見つけたい」、どちらの考えにも理があるだけに難しい。3話放送後、ネット上では「とても勉強になった」「現実がよくわかった」「検査の予約を入れた」という女性視聴者からの声が数多く見受けられた。

 今日子にとって救いだったのは、公太の存在である。この婚約者は自分より7歳年下。ただでさえ「自分には勿体ないのでは」と感じていた彼女が、今度は乳房の全摘出だ。そんな彼女に、公太は「俺だって年取ったらメタボになるかもしれない。髪だってなくなるかもしれない。見た目が変わるのはお互い様だ」と返した。

 「俺は内面を好きになったんだ」という励ましの言葉だって、もちろんうれしいはず。しかし、他の部分を褒めるのではなく「変わっていくのはお互いさま」と伝えた公太。ただ心配するのではなく、一緒に生きていくというメッセージである。自分の変化で相手が不幸になるかも……と負い目のある今日子にとって、最もうれしい反応だったのではないか? 「病気にかかった人をどのように支えるか」についても漏らさず描いた第3話は秀逸だったと思う。

 「ラジエーションハウス」は原作がすごくいい。それだけに、今回のドラマ化は苦戦している印象があった。そこに来て、この3話だ。はっきり、分岐点になり得る内容だったと思う。ようやくエンジンがかかってきた。今後が楽しみだ。

本田翼、窪田正孝のまわりの病院関係者たちの個性もだんだんわかってきた イラスト/まつもとりえこ

1話見どころ


【参考】1話見どころ

2話見どころ


【参考】2話みどころ

寺西ジャジューカ

ライター。本田翼が大好き。

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まつもとりえこ

イラストレーター&ライター。結婚式スタッフや結婚雑誌編集の経歴あり。

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