メディア芸術祭、展示作品を紛失して謝罪 ずさんな管理に作者から失望の声も
たんぽぽの綿毛を使ったインスタレーション作品。スタッフがスペアとの取り換え中に、作品を紛失。
6月1日から日本科学未来館(東京都江東区)などで開催中の「第22回文化庁メディア芸術祭」の受賞作品展において、展示作品の一部を開催側の不手際によって紛失してしまったとして、6月6日に作品展事務局は謝罪文を公開しました。
紛失に遭ったのはアート部門で新人賞を獲得した、インスタレーション作家・(euglena)さんによる「watage」。たんぽぽの綿毛をドーム状につなぎ合わせたり、水に浸けてしずく型に変形させたりしたものを展示し、鑑賞者の動きや呼吸に応じて揺らぐ様から大気の流れなどさまざまなものを認知する、というインスタレーション作品です。
作品の紛失は、(euglena)さんがTwitterで経緯を報告したことで話題に。5日の開場から約1時間後、作品の一部が潰れているのを展示スタッフが確認し、上司に報告。その後上司やプロデューサーが不在のまま、スタッフ2人が万が一のために用意してあったスペアの作品との交換作業を行ったところ、損傷があった作品を紛失してしまったそうです。
スタッフは電気を付けずに暗いままで交換作業を行った挙げく、作品を探して見つからなかった後も怒られるのを恐れて紛失を報告しなかったとのこと。作者が事態を知ったのは、作品がスペアに取り換えられているのに気付いて理由を尋ねた後だったといいます。
過去4回の展示で「watage」が壊れたことはなかったのに対し、今回の展示で壊れたのは2回目で、いずれも連絡はありませんでした。さらに展示のために加湿器の水を毎晩換えるよう頼んでも受け入れられなかったことを上げ、(euglena)さんは「一体全体どんなふうにこの事態の収集をつければ良いのか分かりません」「同じ形なんて二度と作れないのにね。私にとってメディア芸術祭は、1つの目標であり夢だったよ」と、作品展側のずさんな管理体制に失望の念をにじませていました。
作品展事務局は紛失について、本来は「作家ご本人に確認を取った上で作品の交換作業をすべきところ、これを怠り、さらに、交換した作品を紛失してしまった」として、(euglena)さんに謝意を表明。今後の同じようなことが発生しないように、「作品メンテナンス時のレギュレーションを徹底」「展示エリア内にスタッフ1名を増員」「作品を適切に管理できるよう、混雑時には入場規制」して対策していくとしています。
(euglena)さんはTwitterで、文化庁の担当者から直接連絡と謝罪を受け、希望通り作品は買い取りになったことを報告。「今回の紛失は大変残念に思っておりますが、私自身毎年メディア芸術祭を楽しみにしている1人です。運営方針が見直され今後のメディア芸術祭がより良くなることを願っております」とコメントしています。
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