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「転売容認?」と主張に批判集まるも「チケットストリート」は「取材拒否」 弁護士は「当事者の自覚がない」とあきれ顔

福井健策弁護士「処罰法の成立にまで至った主因を作ったという自覚がない発言」。

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 「特定興行入場券の不正転売の禁止等による興行入場券の適正な流通の確保に関する法律」、通称「チケット不正転売禁止法」が6月14日から施行され、チケット売買仲介サイトの「チケットストリート」が出した見解に批判の声が上がっています。

チケット不正転売禁止法とは

 チケットの不正転売と、不正転売を目的とした譲り受けを禁止する「チケット不正転売禁止法」は、「何人も、特定興行入場券の不正転売をしてはならないこと」「何人も、特定興行入場券の不正転売を目的として特定興行入場券を譲り受けてはならないこと」を定めた新法。

 対象となるのは、「特定興業入場券」(関連記事)で、不正転売については「興行主の事前の同意を得ない特定興行入場券の業として行う有償譲渡であって、興行主等の当該特定興行入場券の販売価格を超える価格をその販売価格とするもの」が禁じられています(違反者には1年以下の懲役、もしくは100万円以下の罰金または併科が科される)。

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チケット売買仲介サイトの主張

 この法律が施行される直前の6月10日、チケット売買仲介サイトの「チケットストリート」は次のような声明を発表しました。

 まず前提として「当社で売買仲介するチケットはすべて、売り手会員より『不正転売にあたらない』旨の誓約をうけて掲載しています」「買い手の方の注文にあたっては必ず『転売目的での購入でないことの確認』をお願いしています」「当社は不正転売を一切許容しません。上記の誓約にかかわらず不正転売のおそれがあると当社が判断した場合、注意喚起・出品の削除・利用制限等を実施しています」と3つの状況を説明。

 「未発券状態(例:コンビニの発券番号の譲渡)では、一般的には特定興行入場券には該当しない」とした他、「単に営利目的の転売が禁止されているだけのチケット」は、不正転売禁止法で転売が禁止されている「特定興行入場券にあたらない可能性がある」と解釈し、「特定興行入場券に該当しないチケットは、販売価格を超える価格での出品であっても、不正転売にはあたりません」と述べています。

 そのうえでチケットストリートは、「正当にチケットを入手したファンが、そのチケットのもつ真の価値に見合った価格でチケットを譲渡できること・入手できることは、不正転売にあたるものではなく、守られるべき消費者としての正当な権利です」「今後も安心してチケットストリートをご利用ください」と締めくくりました。

 これに反発したのがネットユーザーたち。Twitterでは「チケットストリートの見解に対して、「こりゃだめだわ」「チケットストリート、販売価格を超える転売についてオッケーしてるやん。業としてってなんだろう?でもこれじゃ法律の意味ないね?」と批判の声が上がっています。

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 またNHKが同社の西山圭代表取締役社長にインタビューした際「あくまで健全なファン同士の取引」「コンサートに行けなくなった人がやむなく転売した結果、価格が高くなっても否定するべきではない」と答えたことに関連し、「法律ができても、転売サイトは転売erの味方なのか。なんだかなぁ」「『はあ?』ってなった。高額で転売する奴が健全なファンだと?」「廃業して欲しい」「利益目的の転売推奨してるやん」「商売の正当性の主張ご苦労様です。そのチケットの真の価値をお客様が決める? 何言ってんの?真の価値は定価に決まってるだろ」と辛らつな意見が相次いで投稿されています。

チケットストリート、転売禁止が明記されているチケットを「特集」で販売促進

 ねとらぼ編集部でもチケットストリートを確認したところ、確かに定価以上、ときには倍以上の金額で転売されているチケットが複数見つかりました。

1枚5万円で不正転売されている三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEのチケット。不正転売で入手したチケットでは入場できない可能性が高い(「チケットストリート」公式サイトより/画像は一部加工しています)

 またここで注目したいのが、チケットストリートのサイト構成です。

 チケットストリートのサイトTOP画面には「注目」と書かれたリンクがあり、そこには興行主が転売を固く禁じている「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「サマーソニック」というったフェスイベントのほか、ライブチケットの高額転売に対してさまざまな取り組みを行っている「三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBE」などの人気チケットがずらりと並んでいます。

トップページで転売が固く禁じられている「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」「サマーソニック」などの転売を誘導するチケットストリート(「チケットストリート」公式サイトより/画像は一部加工しています)
不正に高額転売されている「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」のチケット(「チケットストリート」公式サイトより/画像は一部加工しています)

 このように明らかに転売が禁じられている公演チケットをチケットストリート側が特集し、転売促進する行為には問題はないのでしょうか。ねとらぼ編集部はチケットストリートに取材を申し入れました。

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ニシヤマ氏「取材は拒否します」

 ねとらぼ編集部ではまず、チケットストリートの運営会社へのコンタクトを試みました。しかし、オフィシャルには広報部の連絡先が記載されていなかったため、「特定商取引法に基づく表示」に記載のあった番号に電話をかけました。

 すると、電話に出たのは男性のA氏。取材である旨を伝え、広報部に連絡を取りたい旨を伝えましたが、「この電話番号はお客さま専用の番号」「カスタマーサポートだ」との主張を繰り返し、会話がかみ合いません。またA氏に回答を求めているわけではないとあらためて説明したうえで「広報の連絡先はどこから知ればいいのか」と質問したところ、「サイトを見て自分で調べれば分かる」とのことだったので、「どこのページなのか教えてほしい」と頼みましたが、「それは答えられないし、ここはカスタマーサポートなので……」との主張に終始。最後まで広報の連絡先は分かりませんでした。

 その後、「上職の方はいないか」についても聞いてみたところ「いない」「自分が担当」とのことでしたが、最終的にはねとらぼ編集部の電話番号を聞いたうえで「上に確認する」とのことでした。

 A氏との電話からしばらくして、固定番号から編集部に着信。電話をかけてきたのは、「ニシヤマ」を名乗る男性でした。同社の西山圭代表取締役社長と同一人物かどうかは不明ですが、取材である旨を伝えると「取材を受ける」とのこと。

 しかし取材の前段階の打ち合わせ時に「確認したいことがある」「うちの社員(A氏)を脅迫したと聞いている。まずそれについて説明すべき」とニシヤマ氏。あらためてA氏とのやりとりを説明しつつ、「カスタマーサポートであれば通話を録音していると思うので、確認していただけたら」とも伝えましたがニシヤマ氏は納得せず、一転して「取材は拒否する」との回答がありました。

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福井健策弁護士「処罰法の成立にまで至った主因を作ったという自覚がない発言」

 ねとらぼ編集部は骨董通り法律事務所の福井健策弁護士にも取材を申し込み、チケットストリートの主張には正当性があるのか、意見を求めました。

新法施行について

――今回定められた法律では、基準に触れる転売者本人には、罰則が設けられましたが、チケット転売サイトの運営で取引成立時の手数料や広告収入を得る「転売サイト」は処罰の対象外なのでしょうか。

福井弁護士処罰対象は「転売や転売のための譲り受けをおこなった者」です。ただし、不正転売であると知りながら、その取引の場を提供したり代金の受け渡しを行えば、ほう助犯(共犯)や共同正犯として処罰される可能性は十分あるでしょう。高額転売の中心に位置し不可欠の役割を果たす転売サイトの対応は、問われると思います。

チケットストリートの主張について

――「売り手会員より『不正転売にあたらない』旨の誓約を」受けていると主張していますが、その場合、チケット転売サイト側は新法においては責任を負わないのでしょうか。

福井弁護士当然ですが、形式的に誓約を受けても、状況から見て不正転売である蓋然性が高い取引に加担すれば、責任を問われ得ます。

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――「単に営利目的の転売が禁止されているだけのチケットについても、特定興行入場券にあたらない可能性がある」「特定興行入場券に該当しないチケットは、販売価格を超える価格での出品であっても、不正転売にはあたらない」とも主張していますが、これについてはいかがでしょうか。

福井弁護士前者は「可能性」ですし、後者は「特定興行入場券に該当しないチケット」ですから、それはそうでしょう。

 ただ、そもそも文章全体が、「不正転売を許容しない」と一応書きつつ、「不正転売」にあたらないケースを最大限強調して紹介するなど、「処罰対象でさえなければ高額転売でも推奨する」という姿勢が明確ですね。

 チケットの買占め・高額転売が社会問題化して、ついに処罰法の成立にまで至った主因を作ったという自覚がない発言だと感じます。仮に特定興行入場券でなくても、販売時の規約で営利転売・高額転売が明瞭に禁止されていれば、高額転売されたチケットは無効になる可能性が十分あり、会場での混乱もあり得ます。自ら高い手数料を得ながらそれを煽る転売サイトの姿勢が、今批判を受けているのではないでしょうか

――「正当にチケットを入手したファンが、そのチケットのもつ真の価値に見合った価格でチケットを譲渡できること・入手できることは、不正転売にあたるものではなく、守られるべき消費者としての正当な権利」としていますが、この主張に正当性はありますか。

福井弁護士「正当にチケットを入手した」という言葉が都合よく使われており、現実には複数名義やBOT(ボット)の使用によって買い占められたチケットも多いことを、ことさらに度外視した発言に思えます。規約に反し、供給量が固定されたチケットを買い占めれば、当然高額転売できるでしょうが、そういうケースも含めて「市場原理であり正当な行為だ」という印象操作にも見えます。

――トップページに転売が明確に禁止されている「ROCK IN JAPAN FESTIVAL」の特集ページを配置しています。このように明らかに転売禁止だと分かっているチケットの販売を促進するページ作りについては問題ないのでしょうか。

福井弁護士上記の通りです。まして、匿名性を売りにして、不正転売であること(反復継続性)や身元の確認を難しくしながら高額の手数料を得ている姿勢では、社会の理解を得るのは難しいでしょう。


 ねとらぼ編集部ではチケットストリート以外にも、チケット不正転売禁止法施行後も高額転売のチケットが取引されているチケット売買仲介サイト「チケット流通センター」にも取材を申し入れましたが、取材を受けるかどうかも含めて、返答はありませんでした。

(Kikka)

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