【直伝】流し撮りの成功率を上げる方法(2)「一脚を効果的に使う」:レースフォトグラファー奥川浩彦の「サーキットへ行こう」(7)(3/4 ページ)
後編は「一脚のメリットと撮り方のコツ」を具体的に説明します。
一脚を使った流し撮りの仕方
いよいよ流し撮り with 一脚です。これまで手持ちで流し撮りをしてきて、ある程度慣れた人には、野球選手に例えると選手生命を掛けたスイング改造が必要かもしれません。
少し実験をしてみましょう。顔をいっぱいまで左に向けて左手の指を鼻に当てます。左手はそのままの位置で顔を右に向け、右手の指を鼻に当てます。左右の指の距離はどれくらいでしょうか。筆者は約20センチでした。
同じ動きでカメラを振ると、カメラボディは左右に20センチくらい移動することになります。筆者は少し前傾姿勢で流し撮りをするクセがあるので、流し撮りをするとカメラボディは数十センチ移動します。スイングの姿勢や体格により個人差があるので、自身の撮影する姿勢で試してみてください。
このように水平に流し撮りをする場合の回転軸は、首、あるいは背中や腰にあり、カメラボディとレンズはそこを軸にしてスイングすることになります。
この動きのまま一脚を使うとどうなるでしょう。足元の支点が固定されるので、カメラとレンズは「縦方向」にも弧を描くように動いてしまいます。手持ち撮影と同じ方法ではうまく水平に振れません。
そのため、一脚を付けたカメラは「振り方を変える」必要が出てきます。具体的には、一脚を垂直に立てて、「一脚を軸に回転する」ようにします。それを実現するには、撮影者が「カメラの後方を回り込むように動く」ことになります。
一脚を軸にして完璧に回り込むのは簡単ではありません。特に大型の望遠レンズは一脚を取り付ける三脚座が撮影者から遠いので、さらに難易度が高くなります。一脚を回転軸にして完璧に回り込むことは無理でも、振るイメージではなく回り込むイメージで撮影しましょう。
「一脚を使った流し撮り」実践編
では実践的な話をしていきましょう。コースサイドに立って流し撮りをする景色を思い浮かべてください。
マシンは必ずしも視界を真横に横切るわけではなく、レコードラインが視界を斜めに横切ることは頻繁にあります。例えば鈴鹿サーキットの逆バンクは右上から左下、ヘアピン立ち上がりの常設スタンドであれば左上から右下へマシンは走り抜けていきます。多くのシーンではビシッと水平ではなく、マシンの動きを見計らって斜め方向にスイングします。
ではどうやって斜め方向に振る(回す)のか。「一脚を前に倒しこみながら、左右に回す」です。視界の中で斜めに移動するマシンの動きを上下方向と左右方向に分けます。上下方向は一脚の倒しこみで追従し、左右方向は回転で追従させます。
次の写真は鈴鹿サーキットのデグナーカーブです。右側がデグナー1つ目、左側がデグナー2つ目でその先が立体交差となっています。マシンは右上から左下へ駆け下って行きます。
ここでは筆者は「一脚を斜め」にしています。一脚をレコードラインの傾斜と直角になるように、やや左に傾けます。筆者はフレーミングが水平派なので、レンズの三脚座を回してカメラが水平になるようにします。こうすることで一脚を倒しこまなくても、回転させるだけでレンズを斜めに振ることができます。
もっとも、レコードラインの角度によって一脚を斜めにすることが不可能な撮影もあるので「一脚を倒しながら回す方法」と「斜めにして回す方法」を使い分けています。
実際に撮影を始めるとシックリこないこともあります。そのときは足元の一脚の支点を前後左右に数センチ移動したり、一脚の長さをちょっとだけ伸び縮みさせて、何度も素振りをして「いい位置」を探します。
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