インタビュー

“部活がやめられない教員”を作り出す職員室のヒエラルキー 現役中学教員に聞く「ブラック職場としての学校」(1/3 ページ)

「残念ながら、こういう人たちは『あなたから部活を取ったら、何が残るんですか』というタイプが少なくない」。

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 子どもの成長を支える場でありながら、ブラック労働環境が問題視されている学校現場。ニュースなどでも盛んに取り上げられているテーマではありますが、実際に働いている教員は、どのような思いを抱いているのでしょうか。

 本記事は、公立校の中学教員であるAさん(仮名)に「1人の一般教員として感じている“学校の労働環境の問題点”」を語ってもらう連載企画となります。

職員室のヒエラルキーが“部活しかできない教員”を作る?

 前回は「闇部活(※)」など、部活を長時間するためにガイドラインの抜け穴を突く教員たちの話をした。この問題の根底には“教員間の上下関係”があると思ってる。職員室内での立場を良くするために、部活を一生懸命やる先生がけっこういるんだよね。

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※闇部活:名目上は部活動ではないことにして、部活動同様の活動を行うこと。ガイドラインによる規制を逃れ、長時間活動する。

―― どうして?

 学校は「鍋蓋(なべぶた)組織」で、上に管理職の校長、教頭がいるんだけど、それ以外の教員は横並びだと言われることがある。でも、横並びになった人たちのあいだにも「職員室内での発言力が強い/弱い」「のけものにされる/されない」といった関係があってさ。

―― 「組織図などに現れにくいパワーバランス」はどの組織にもあるんだろうけど、学校は上下関係がはっきりしていない分、その影響が大きいのか

 職員室内で“上に立つ”条件はいろいろあるんだけど、例えば、キャリアが長い(年齢が上)、生徒指導担当、運動部で良い成績を残している顧問など。

 反対に、“下に見られる”のは若くてキャリアが浅かったり、部活が弱かったり。「教員としての実力がなくて、担任するクラスが持てない」というのもあるかな。こういう人たちは職員室内での発言力が弱く、のけものにされてしまう雰囲気がある。

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 あとは性別。男の方が上で、女の方が下に見られがち。

―― このご時世に聞きたくない話だな……

 明らかに男女差別だもんね。でも、俺がこの仕事で見てきたことを話すとこうなってしまう。価値観が古い世界なんだよ。

 さて、問題。「職員室内での立場が悪いと居心地が悪いから、自分の格を上げたい。何を頑張ったらいいでしょうか」。

 年齢や性別は変えられない。教員としての実力を身につけて、担任を持つのも一朝一夕にはいかない。いろいろと勉強する必要があって、簡単なことではないんだよね。

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 一番頑張りやすいのは「運動部の活動を頑張って、良い成績を出すこと」だと思う。

 何事もやればできるようになるものだから、生徒に長時間練習させれば、そりゃあ強くなる。体格や才能に恵まれたスター選手がいる学校なんてそうそうないから、それなりに勝てるようになる。そして、結果が出ると職員室での立場が良くなるし、部活に関わるのも面白くなってくる。

 こうして生まれるのが“部活が大好きな先生”なんだろうな、と思ってる。残念ながら、こういう人たちは「あなたから部活を取ったら、何が残るんですか」というタイプが少なくない。

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