インタビュー

LGBTが思う、よくある質問「彼女いるの?」の難しさ エッセイ漫画「あさな君はノンケじゃない!」インタビュー

「彼女はいません! ゲイなので!」と言っても言わなくてもいい環境ができたら。

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 アパレル企業で働きながら、ゲイである自身の体験を描いたエッセイ漫画「あさな君はノンケじゃない!(※)」(著者:あさなさくまさん)。ほっこりエピソードを通じてゲイの日常を描き、Twitterやピクシブ上でも反響を呼んでいる同作の誕生秘話や見どころについてあさなさんにインタビューしました。漫画本編もあわせて掲載します。(聞き手:佐藤星生

※ノンケ:異性愛者のこと。同性愛者、特にゲイの立場から用いられる語として知られる

漫画「あさな君はノンケじゃない!」とは?

 あさな君は、アパレル会社に勤めるごく普通のアラサー男子。ひとつだけ違うのは、ゲイであること――。2017年に開催された第2回ピクシブエッセイ新人賞受賞作品。あたたかく、少し切ない。今どきアラサーゲイの日常を描くコミックエッセイ。

 自分の性のあり方の、母へのカミングアウト、初恋の男の子の想い出、そして運命の人との出会い。ノンケ(異性愛者)では味わえない日常や過去の思い出を優しいタッチと言葉で描写しており、これまでセンセーショナルに描かれがちだったゲイ関連作品とは一線を画した内容に仕上げています。

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著者プロフィール:あさなさくま(Twitter:@sakuma_asanapixiv:あさな さくま

漫画家・イラストレーター。アパレル企業でデザイナーとして働く傍ら、Webメディアを中心に創作活動を行う。「あるある!」と共感を呼ぶ作風だけでなく、そのファッション描写にも注目が集まっている。

※2018年12月時点での作品です。また、全ての学術的情報を網羅した図解ではありませんので、あらかじめご了承ください

その他の一部エピソード、購入先などはWebマンガ誌「コミックエッセイ劇場」に掲載されています

―― 本職はアパレルのグラフィックデザイナーと伺いました。どんなきっかけで絵を描き始めたのですか?

 小さい頃から絵は大好きで、小学生の頃は自分の家族や友達が登場するギャグ漫画などを自由帳に描いていました(笑)。みんなに「こんなことあったあった!」と笑ってもらえて、すごく楽しかった記憶があります。

 以降イラストを描いたりすることはありましたが、本格的な漫画作品は今回が初です。3年くらい前からTwitter上でよく漫画が流れてくるのを目にするようになって、「自分も何かできないかな」という気持ちで始めました。

―― デビュー作はゲイをテーマにされました。どんな思いを込めたのですか?

 昔の自分がそうだったように、「ゲイであることを周囲に打ち明けたい気持ちがあるけど、カミングアウトできない人」は多くいるはずで、それはやっぱりまだ世の中の偏見が根強いから。セクシュアリティを公表する、しないはもちろん個人の自由ですが、「したい人ができない」という状況は事実としてあります。そこで、ゲイの存在について知るきっかけになる作品が描けたらいいな……と以前から思っていたんです。

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 どう見せていくかは本当に悩みましたが、何気ない日常や思い出をサラッと、かつリアルに描く内容にしようと思いました。

―― 友達やご家族などの人物が登場しますが、そこもリアルを追求した?

 メインの人物の顔立ちは似せています! 今までの出会いや体験をそのまま描いているので、作品の中で顔を変えてしまうと自分の中で違和感があって……。

 漫画を描いていることを知っている友人から「これ俺だよね?」とLINEで突っ込まれて、「かわいく描いてくれてありがとう!」と言われたこともあります(笑)。本格的に描くようになってからは、本人に許可をもらうようにしています。

―― 周囲の方々も理解されているんですね。「彼女いるの?」と聞かれた時の回答例は、これも実体験なんですか?

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 はい。新しいコミュニティーに入るとよく聞かれますよね。進学したときとか、バイト先が変わったときとか。そういうタイミングで、どう回答するべきかは毎回すごく悩んでいました。

 その時々でいろいろな答え方を試したんですが、結果的にはうまくかわせない。そんな実体験をパラレル的にまとめたんです。

―― ゲイの方ならではの悩みというわけなんですね

 でも、実はすごく普遍的な問題なんだなと分かったんです。Twitterでこのエピソードを公開したあと、さまざまなセクシュアリティの方から「こういう質問自体が苦手です」というリプライをかなりいただいて。性のあり方を問わず、パートナーの存在をいきなり聞かれることって、嫌な人にとっては嫌ですよね。いろいろな反響をいただいて、すごく勉強になりました。

―― なるほど。あさなさんの場合は答えたくても、答えられないというジレンマがあったというわけですか?

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 「彼女はいません! ゲイなので!」と言える環境ができたらいいなぁと僕個人としては思っていますね。ただ、そういったカミングアウトを推奨しているわけでもありません。「言わない自由」も守られるべきで、その「どちらの選択肢も奪われない世の中」になったら、もっと生きやすいだろうなと思うんです。そんな思いを、この回には込めています。

(続く)

本企画は全6本の連載記事となっています

  • (1)あるLGBTが思う、よくある質問「彼女いるの?」の難しさ
  • (2)ゲイだからこそ“飲み会の男同士のキスコール”で傷つくことも
  • (3)プールの授業が苦手なLGBTの生徒のために体育教師がついたウソ
  • (4)ゲイの息子と母親のカミングアウトの「リアル」
  • (5)「実際のゲイ」と「ゲイのイメージ」が合致しない理由
  • (6)【LGBTカップルのデート事情】周囲の目は気にする? 気にしない?

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