アイドルになりたい女の子、その理由は―― 父と2人で暮らす娘の漫画「もし何か伝えられるなら」が胸に響く(1/2 ページ)
少女の一途さに泣ける。
アイドルになりたい女の子とその父親を描いた漫画「もし何か伝えられるなら」が、心に響くと好評を博しています。作者は漫画家の小鳥游ミズキ(@takanasimizukib)さん。
主人公のはつみは、鮮魚店を営むお父さんと2人で暮らす高校生の女の子。委員長に立候補するとクラスが驚くようなおとなしそうな子ですが、彼女にはアイドルになるという夢がありました。オーディションは書類審査で落ちてばかりで、2次審査に行けるようになってもダンスや歌がなかなかうまくいきません。
オーディションに送る写真の現像代や交通費をお小遣いをやりくりし、歌やダンスは家で練習し、懸命にアイドルを目指すはつみ。学校では、「魚くさい」と嫌味を言ってくるクラスメイトにも委員長として世話を焼きます。
努力のかいあって歌もダンスも少しずつうまくなったはつみですが、審査員から「才能ないから諦めた方がいいわよ」と厳しい現実を突きつけられます。「他の可能性に時間を費やした方がいい」「諦める事も立派な勇気」――そう通告され、彼女はこれまでかけてきたお金のことを思います。
お父さんが一生懸命働いたお金を一体どれだけ無駄にしてきたんだろう、と。
次で最後にしようと臨んだオーディション。はつみの夢がかなうことはありませんでした。家に帰った彼女は、お父さんに買ってもらったカセットテープを見て思い出します。魚くさいとからかわれる彼女にすまなそうな顔をしていたこと、好きなアイドルをまねて歌って踊るのを上手だと笑顔で褒めてくれたこと。お店が年中無休であまり出かけられない暮らしの中で、テレビが好きなお父さんのためアイドルになりたいと思ったこと。
オーディションのことは内緒にしていましたが、お父さんはなにか感じるものがあったようです。テレビに出たアイドルを見て、おたま片手に歌う真似をしてはつみを笑わせようとするのでした。
アイドルにはなれなかったはつみでしたが「お父さんみたいに誰かのために一生懸命がんばれる人になりたかった」ことに気づきます。だから立候補した委員長の仕事を頑張って、今日も笑顔でお父さんの待つ家に帰るのです。
お父さんのためにアイドルになろうとするはつみの一途な気持ちが心に響きます。その夢はかないませんでしたが、悲しみから立ち直って前へ進む姿は「頑張れ」と応援したくなりますね。優しくて努力家な彼女なら、新しい夢をきっとかなえられるはず。彼女を見守るお父さんの優しさ、2人が互いに思い合う姿もジーンと来ます。
読者からは泣いたという声が多く見られ、「はつみちゃんがとっても優しくて素敵な女の子で、私もはつみちゃんみたいに何かを一生懸命頑張りたいなと思いました」「おこずかいを『どれだけ無駄にしてきたんだろう』って所で泣きそうになったけど親が子どもに渡すお金に無駄なんて親は1ミリも思わないんだよ」といったコメントも寄せられています。
この作品は以前に『ヤングガンガン』に掲載された読み切り。小鳥游さんはこの作品を描いたきっかけについて、祖父ががんだと知って、祖父に見せられる漫画を描きたいと思ったとTwitterで述べています。
小鳥游さんは現在、容姿にコンプレックスを持つ少女が自分を変えようとする漫画『死ぬときはまばゆく』を連載しており、9月に2巻が発売されています。
「もし何か伝えられるなら」
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